5年間やり続けていること
- 執筆者 佐々倉玲於
- 所 属一般社団法人いなかパイプ
2013/09/30
あらー、もう9月と思ったら、もう終わりです~
朝晩は寒くなり、パイプポロシャツもそろそろ終わりかー
と思うと、ネクタイを締めない働き方を貫いている僕にとっては、
フォーマルで着る服がなくなる季節になります。
もう、年を食っているので、そろそろ大人らしい服を構えないといけないのかなーと思ったりして。
さて、今月は、お仕事シリーズははずさないですが、
旬を逃さない記事を~ということで
今が旬!(もう終わりになり始めてますが。。。) 「栗」のお仕事のことを書こうと思います。
以前の記事 でも書きましたが、
僕が四万十に来た当初から携わった仕事に
「四万十の栗再生プロジェクト」というプロジェクトがあります。
四万十川中流域は栗の産地で、糖度が高くて、大粒で、うまい!
という栗が昔からたくさんとれていました。
しかし、輸入栗の影響で栗単価が下がったり、獣害や台風の被害に悩まされ
生産者も高齢になり・・・と衰退の一途をたどり、
昔は500tくらいのとれていた栗は。生産者が減り、50tくらいに落ち込み
ここ数年、気候変動もあって、去年は30tにまで落ち込んでいる状況です。
そんな四万十栗ですが、品質としてはいいモノだから
買いたい!という需要は多く、栗が足りないという状況が続いています。
作れば売れるこの栗を、なんとか増やして、栗のある四万十の風景を再生していこう!
というのが四万十の栗再生プロジェクトです。
僕が四万十に来たときに、丁度、農水省の補助を受けられるようになって
このプロジェクトが本格的に動き始めたところで
僕は、このプロジェクトの事務局として関わるようになったのでした。
栗のことなんて、まったくわからない。まったく興味すらないところに
仰せつかったお仕事で、わけがわからぬまま始めた仕事でしたが、
その当時は、四万十に来たばかっりで、何でも新しいことばかりだったから
やれと言われれば、なんでも興味を持って挑んでいっていたかな。
で、まず連れて行かれたところは、栗園の草刈でした。
四万十の栗再生プロジェクトに先駆けて、取り組まれていたことで、
園主さんが高齢で管理できなくなった栗園を、高知市内のお菓子屋さんと、栗の加工会社と、四万十ドラマが協力して管理していこうという取り組みの一貫で、毎年2回、栗園の下草刈りをするというもの。
急斜面で、約2ha(東京ドーム2個分!)の園をみんなで草刈するというただそれだけなのですが・・・
ところがどっこい、これが、とてつもなく過酷なことで・・・
普通の生産者さんにとっても大変なことですが、
さらに、ど素人の僕らにとっては、ありえない過酷さがありまして・・・
ですが、気づけば、四万十に来て、もう5年、
僕が毎年欠かさずやっている唯一のことは、この栗園の下草刈りということになっていました。
なんだかんだと言いながら、なぜか、これだけは、毎年欠かさず参加してやっています。
▲今や、四万十ドラマで働く若者の登竜門となった?!栗園の草刈。今年も若手が挑みました。
ということで、この過酷な下草刈りの様子を、レポートしたいと思います。
下草刈りは、年2回、7月と9月ごろに行われるのですが、写真は、9月の頭に行ってきた様子です。
この栗園がある場所は、道の駅四万十とおわから車で約1時間くらいの場所にあります。
なので、朝から車を走らせ現場に向かいます。
高知市内からも、お菓子屋さんの社長自ら社員を引き連れて、車で2時間かけてやってきます。
こんな感じで、草刈前のミーティング
目指すのは、この山の頂上!
2日間かけて、下から順番に草刈機持って攻めて行きます。
草刈機なんて、使ったことなかった僕も、
もはや、草刈機を抱えて、急斜面を登っていく技を見につけてしまいました。
でも、この急斜面、ただ登っていくだけで、息が切れる!
5年前は、もっと軽やかに登っていたような気がしますが
草刈する前に、すでに疲れてしまっていて、休憩しながら、ハーハーいいながらがんばります。
こんな感じで、草を刈りながら、上に攻めて行きます
今年は、日照りのせいもあって、草もあんまりはえてない感じでした。
7月にやったときは、背丈くらいある雑草を、まさになぎ倒す!という感じで刈って行きます。
途中、調子があがってきたところで、燃料切れで、草刈機がとまったりして、燃料の予備を持ってないと下までわざわざ降りないといけない、という事態が発生します。最近では、燃料をペットボトルなどにつめて、要領よくやっていけるようになっているのですが。
今年は、僕が使っていた草刈機が、「刃」タイプではなく、「ヒモ」タイプだったため、ヒモがちびてしまい、予備のヒモもなく、あえなく草刈機が使えなくなりました。
しかーし!文明の利器を使えなくなったとしても、草刈はできるんです!
じゃーん!「カマ」!!
ということで
原始的ではありますが、カマを持って、再び、草刈に挑んだのでした。
カマも意外と、使えるんです! 草刈機に負けないくらい、草を手早く刈っていける。
コツは、上の写真をご覧ください。
雑草は、上から見るとおい茂っているように見えますが、葉っぱの下をのぞくと、茎はほっそいのです!
この茎を切ってしまえば、さようならです!
この細い茎だけ切っていけば簡単にやっつけられるので、
顔を葉っぱより下に下げ、無駄な動きがないように、茎を切っていきます。
こうやって、カマを使って、ガンガン草を刈っていると
なぜか僕は、昔あった、ファミコンのゲーム「百姓一揆」を思い出して、
人間をやっつけている錯覚に陥ってきます。結構ヤバイ。。。
まぁ、それぐらい、無心になって、草を刈っていくってことです。
頂上までやってくると、もう体が慣れてしまったのか、山を登っている感覚はなく、見晴らしの良さと、ここまできた!という達成感でテンションがあがってきます。
そして、栗の木を見れば、栗が実っている!
今年の夏も、雨がなかったので、栗の数は少ない感じですが、冬場に剪定作業をしっかりできたところには、ちゃんと大きな栗が実っている!!
日照りにやられ、ちゃんと実らず落ちちゃった栗
四万十川流域の多くの栗は、剪定もされず、放置して育てられているので、年々、勢いが弱り、栗の枝も大きくなり、栗の実に栄養が行き渡らなくなり、栗の実が小さくなってくるのです。
ですが、剪定をちゃんとすると、大きな栗の実が安定的にとれるようになっていきます。
そういう剪定技術も、5年かけて生産者さんたちと一緒に学んできたことでもあります。
剪定された栗の木。やはり、実のなり方が違う!!
5年間かけて、少しづつ植えている栗の木も、ちゃんと根付いて、すくすく育ってます。
こんな様子を見ると、5年間やってきたことは無駄ではなかった~ と確信できます。
こんな感じで、草刈をしながら、1人でブツブツ言いながら、栗に対して思いを馳せているのです。
で、草刈が終わると、頂上から、登るのとは逆で、ジャンプしながら降りていきます。
上から見ると、ホント急斜面だなーってことがよくわかります。
下から見るとこんな感じ! 過酷だってことがわかるでしょ?!
草刈が完了した景色は、なかなか達成感があります。
下の写真をみれば、きれいになったってことがよくわかるでしょ?!
こうやって過酷な草刈は、2日間くらいやると、終わりを迎えるのでした
毎年、草刈の時期が来ると、今年も来たな!っていう気持ちになります。
そして、今年こそ、さぼりたい!と思うのですが、なぜかスケジュールが空いていて。。。
気づけば、5年続いてる。。。
最近は、忙しくなってきて、スケジュールが空いていない!ってこともではじめてきて
7月の方には行けない!とか、2日間の内、1日しか出れない!とか、ではじめていて、休んだりすることも出てきているのですが
休むと
「あら、偉くなったねー」なんて言われたりして、くそっ!っと思うわけです。
半分意地で続いている、という部分もあるけれど、
さぼりたい!とかっても思うけど
でもなんか大切にしておきたいことだと心のどこかで思っているので
無意識の内に毎年参加しているのだと思います。
5年間、栗に関わってきて、去年から念願だった農業法人を立ち上げられたこともあり、
(社)いなかパイプとして、栗に関わる仕事をやることもなくなり、
僕がでばっていって栗園に行く必要もなくなってきているわけですが、
こういう「地域産業」の底辺を担っている一次産業の、
さらに底辺の一次産業を下支えしているような、
草刈のような基本的な仕事こそ、ちゃんと知っておかないといけないことだと思うのです。
この仕事をする人がいるから、僕らの仕事が成り立っているんだということを。
そして、頭の中でわかった気になっているだけでもダメで、
肌感覚として、ちゃんと持っておかないと、
今、僕らがやっているいなかパイプの仕事もできない気がするのです。
さらに、やってみれば現場の中に、ちゃんとヒントがある。
例え、関係ないような草刈であっても、悩みを解決してくれるアイディアがある。
生産者の方々にしてみれば、それが毎日のことで大変なことなのだけれど、僕らにとっては、たった、年1、2回のことなわけで、過酷であっても、それは大したことはないと言えるでしょう。
えらそーでもありますが・・・
年1、2回くらいでわかった気になるなよーって怒られそうでもありますが・・・
まったくやったことがないよりはまだマシかなと思っていまして、
こういう現場感覚を僕は大事にしたいなーと思っています。
現場に出ている場合ではなく、こっちの仕事をやってよー!!
と怒られたりもするのですが。。。
でもやっぱり、現場が好きだなー、僕は。
最近そうもいかなくなってきている感じですが・・・
年を食っても、できるだけ現場で、地域の人たちにより近いところで仕事をしたい。
偉くならないプロジェクト!がんばります~
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この度、一般社団法人いなかパイプでは、ツアーやインターンシップのコーディネートを行うようなコーディネーターを育成していく、長期実践型インターンシッププログラムを実施することにしました。1ヶ月間だけでは学べない、四万十川のほとりで学ぶ180日間のインターンシッププログラムです。
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