茶摘みブログ

2014/06/20

 

いなかマガジン読者の皆さま、こんにちは。

徳島県上勝町・株式会社いろどりの粟飯原です。

 

今回は上勝町民のソウルドリンク「上勝阿波晩茶」を取り上げたいと思います。

 

◎上勝阿波晩茶とは!?

 

 「番茶」ではありません。「晩茶」です。というのも製法が全然異なるからです。一般に「番茶」というと、一番茶、二番茶に次ぐ日常的に飲まれるお茶というイメージがあるかと思います。しかし、上勝町では「晩茶」なのです。その名の通り、お茶摘みの時期が遅い。静岡などの茶所では毎年5月頃に新芽を摘むのが通常だと思いますが、上勝町では早くても6月末~遅いところではお盆の時期に、成熟した茶葉を摘み取ります。茶の木の枝についている葉っぱは一枚と残さず摘み取るので、茶摘み後の茶の木は哀れです。

 

●茶摘み前

 

徳島上勝町 茶摘み前

 

●茶摘み後

 

徳島上勝町 茶摘み後

 

 で、でも来年に向けてまた新しい葉っぱを身につけるので、「サッパリした」ようにも見えますよね?長~い晩茶づくりの最初にして最大の難関がこの茶摘みです。

  炎天下の中、一日中ただひたすら茶の木から茶葉を摘む。グゥの手の親指と人差し指の間に枝を挟み、ブチブチブチィッ!と枝から茶葉をしごき取るのです。茶摘みには「熟練者」と呼ばれるつわものが存在します。初心者は一日がかりで5㎏の茶葉を摘むのが精いっぱいのところを、熟練者の方々は20㎏以上摘みます。力の差は歴然です。そんな熟練者は親指と人差し指の間だけではなく、人差し指と中指の間、さらには中指と薬指の間と、手と指の可能性をフル活用して次々と茶の木を丸裸にしていきます。

 上勝町では茶の木が元々自生していて、町の至るところから茶の木が顔を出しています。大体が足場の悪い斜面に自生しているので、茶摘みの間、足を踏ん張るのも大変です。

 

●上勝町の茶畑はこんなカンジ

 

徳島上勝町 茶畑

 

そうしてたくさんの人の努力によって摘み取られた茶葉たちは、まず釜でゆでられます。

 

徳島上勝町 お茶ゆでる

 

ゆでられた茶葉は「茶擦り」の工程に入ります。茶擦り機という機械によって茶葉が擦って揉まれます。こうして茶葉に傷をつけることで、その後の工程である「発酵」の進行を助けているんですね~。

 

徳島上勝町 茶擦り機

 

今でこそ便利な茶擦り機が存在しますが、以前は「舟」と呼ばれる木製の人力装置を使って「茶擦り」を行っており、これまた大変な作業だったようです。二人が対面で向かい合ってギィ~コギィ~コと持ち手を交互に押して茶葉を揉みます。

 

徳島上勝町 舟

↑分かりづらいですが、これは片方だけ機械式で一人で動かせる舟です。

 

「茶擦り」作業によって、もみくちゃにされた茶葉たちは大きな桶に詰め込まれ、入れては押し込み、押し込んでは詰め込んでを繰り返してギュウギュウギュウギュウ。最後に上から落とし蓋をして、見るからに重そうな大きな石を何個も上に積み上げて、茶葉を押さえつけます。

 

徳島上勝町 落とし蓋

 

 こうして桶に収まった茶葉たちは、2週間~1ヶ月間かけて発酵していきます。発酵の期間は各家によって違い、期間の違いによって酸味や味わいに差が出てきます。落とし蓋の回りからは、発酵によってブクブクと黄色い泡が出てきます。発酵の正体は乳酸菌発酵。みんな大好き、ヨーグルトでお馴染みの乳酸菌です。

 この乳酸菌は茶葉そのものに潜んでいると言う方もあれば、桶にいるんだと言う方もいますし、どっちもだ、という方もいます。空気中にいるんだと言う方もいました。神出鬼没な憎いヤツ。いや、ありがたいヤツです、乳酸菌。

 7月後半になると家の軒先や道路わきに桶から取り出された発酵済みの茶葉を乗せたむしろが広がります。近くを通ると何ともいえないいい香り。

 

 晩茶の香りです。最後の工程「茶干し」の作業。これまた家によって違いがありますが、大体二晩ほど天日干しをして茶葉をカラカラに乾かします。

 

徳島上勝町 茶干し

 

 ただ干すだけと侮ることなかれ。「茶干し」の作業もなかなか大変なんですよ。茶干しの間、農家さんは常に空の様子を気にしています。もし突然雨が降ってきて茶葉が濡れてしまおうものなら味が落ちてしまって、今までの苦労が台無しになってしまうからです。山の天気は変わりやすいので、ちょっとでも怪しい雲行きになってきたら屋根のあるところにむしろを移して、晴れてきたらまた外に出して…その繰り返しです。

 干している間も茶葉同士がひっつかないように一枚一枚はがしてバラバラにしていきます。今だかつてこれほどまでに手間暇かかったお茶があったでしょうか?いえ、僕は知りません。昔の上勝人はどうしてこんなに手間のかかる製法でお茶をつくる道を選んだのか? いやぁ不思議です。

 

 ここで、僕の晩茶エピソードをひとつ。

 

 僕は今から3年前にインターンシップ生として上勝町にやって来ました。毎日農家さんのところで仕事をした後、「あ~!今日もよう働いたなぁ!」と言って、同期のメンバーとともに夕食を食べていました。その時に初めて出会ったのが晩茶。最初はなんかちょっと酸っぱいし、変わった味のお茶やな、と思ってました。嫌いではなかったけど、お~い○茶が隣に並んでいたならそちらを手に取っていたでしょう。

 

 そんな晩茶に対するイメージが変わったのはある事件があってから。

 

 好奇心の塊だった当時の僕はある日、とある農家さんのお宅で生の鶏肉を食べさせてもらいました。「鳥刺し」というそうです。鳥の刺身ということかな。もちろん食べるのは初めてだったのですが、「エイッ」と食べてみたらウマいウマい。焼き鳥屋でもそんなに食わんだろうとというくらい、バカみたいにたくさんの鳥を食べました。本当に美味しかったです。

 その夜、僕のお腹に雷が走りました。トイレに籠ったまま、ベッドでは一睡もできずオマケに40度を超える高熱も出てきました。結局、2日間研修をお休みしてベッドとトイレを行ったり来たりする羽目になってしまいました。そして、なんとか復活して他のみんなと一緒に食事がとれるようになった頃、なんだか晩茶がとっても美味しく感じたのです。

 晩茶は乳酸菌発酵でお腹に優しいんだよ、と聞いていたからか、実際にお腹に優しい感じがしたからか分かりませんが、なんせそれ以来、僕はネイティブ上勝人にも引けを取らないくらい晩茶を好んで飲みます。もう伊○衛門にだって負けません。そんな晩茶との馴れ初めエピソードでした♪

 

 一昔前、みのもんたさんの「思いっきりテレビ!」で、その効能が紹介されて以来、人気に火がついた「上勝阿波晩茶」。毎年、新茶が販売される前には品切れになるくらい、たくさんの晩茶ファンがいらっしゃってありがたい限りです。

 ですが、困っているのは生産の担い手不足。まずは茶葉を摘まないことには始まりません。そして摘んだ茶葉はその後の工程の途中で何度も何度も選別し、ゴミや質の悪い葉を取り除くのです。ですが、それをする人手がいません。特に炎天下の中、日当たりのいい急な斜面で一日中行われる「茶摘み」は、農家の高齢者の方だけで行うには無理があります。

 インターン生もこのシーズンは茶摘みに行きますが、さすがに茶摘みばかりしてもらっていると担当の僕は冷たい目で見られてしまうので、週一回くらい「茶摘みはインターン生の義務です!」とかなんとか言って連れて行くのが関の山です。

 

徳島上勝町 晩茶インターン

↑昨年「晩茶インターン」に参加してくれた晩茶の申し子・松岡君。

 

 でも茶摘みだって辛いことばかりではありません。農家さんはどんなに忙しくたって10時・12時・15時にはキチンと休憩をとります。その時にいろいろなお菓子や、よく冷えた黄金色の晩茶や、あるいはとれたてのトマトなんかを出してくれるのですが、それが何ともいえないウマさなのです。景色のいいところで日陰に入って休みながらみんなで世間話なんかして、そうしていると「さぁ、もういっちょ頑張るか!」という気持になってくるのです。

 

 夏に向けてたくさん汗をかいてダイエットしたい方なんかにもオススメなのかもしれません。炎天下で一心不乱に茶葉を摘み取るその様は、ある種の修業のようにも見えるかもしれません。だらけてしまった自分の心を鍛えなおす鍛錬の場としても茶摘みは最適なのではないでしょうか?修業癖のある僕が言うのですから間違いありません。

  また、冒頭にも書きましたが、初心者と熟練者で摘める量が全然違うので、ちょっとでも負けん気のある方は「よっしゃ、昨日は5㎏しか摘めんかったから、今日は6㎏摘むぞ」というように自分との闘いのループに入っていくはずです。絶対に負けられない闘いがここ、上勝町の茶畑にもあるのです。

 

 とまぁ、今回は「晩茶」についてつらつらを書いてきましたが、この恐ろしく作るのに手間のかかる、だけどお腹に優しくて生まれたての赤ちゃんでも飲むことのできる、素晴らしいお茶をもっと多くの方に知って頂きたいという思いです。

 最近ではIターンの方が「いろどり晩茶生産組合」を立ち上げて、初の晩茶ペットボトル化を実現させ、徳島県内のみならず東京でも売れまくっています。

 

 徳島上勝町 いろどり晩茶生産組合

↑左がいろどり晩茶生産組合長の井川さん。右はその右腕インターン生の松岡君。

 

また、県内大学の研究で晩茶が糖尿病予防に効果があることが判明するなど、「今もっとも“アツい”お茶」それが上勝阿波晩茶です。B・A・N・C・H・A。

 

徳島上勝町 糖尿病

↑2014年5月9日の徳島新聞朝刊の記事。

 

 このマガジンを読んで、お茶を摘みたくてウズウズされてきた方は、まずは㈱いろどりの粟飯原までご一報ください。(0885-46-0166) きっと素敵なお茶摘み体験ができると思います。

 

 それではまた来月までさようなら♪

 

 

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