地方創生フォーラムにて

 

 2015年2月22日、石川県の小松市で地方創生フォーラム(主催:内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局)に登壇者として参加しました。

 

地方創生フォーラム

 

 

プログラム

 

■基調講演

伊藤 達也氏  内閣府大臣補佐官

 

■事例紹介:登壇者(50音順)

多田 喜一郎氏 農家民宿「春蘭の里」実行委員会 事務局長(石川県能登町)

多田 朋孔  NPO法人十日町市地域おこし実行委員会 事務局長(新潟県十日町市)

能作 克治氏 能作 代表取締役社長(富山県高岡市)

福野 泰介氏 jig.jp 代表取締役社長(福井県鯖江市)

萬谷 浩幸氏 よろづや観光 代表取締役社長(石川県加賀市)

 

首相官邸政策会議HP  http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/h270119.html

地方創生フォーラム専用サイト http://www.unei-jimukyoku.jp/sousei/

地方創生フォーラム石川会場 開催概要  http://www.unei-jimukyoku.jp/sousei/outline_ishikawa.html

 

地方創生フォーラム プログラム

 

 会場は満員御礼でした。地方創生に関してはそれだけ世間の関心が高いという事が伺えます。基調講演をされた内閣府大臣補佐官の伊藤達也氏より「まち・ひと・しごと創生」に関しての国の考えを聞くことができ、理解が深まりました。私が個人的に印象に残った内容としては、キラリと光る日本の中小企業を世界市場に伸ばして行き、経済成長を目指すという事でした。

 ドイツでは hidden champions(ヒドゥン・チャンピオン) と呼ぶべき隠れた企業があって、ニッチな市場で世界一位になっている企業が現在1300社もあるそうです。ドイツでは今後の目標として、これを2000社 に増やす方向で考えているようですが、日本にもこうしたhidden championsと呼べる企業は現在220社あるそうで、今後中小企業の成長力に着目して商品開発や販路拡大の支援をしていく事が重要であるとの事でし た。また、これまでとは違い、縦割り・一律・短期的な視点で行うのではなく、地域が主役になってPDCAを回して結果を出せるように進めるという事もおっしゃっていました。話を伺っていると、国も本当に危機感を持っているという事が伝わってきました。これはとても良い方向性であると思います。

 

伊藤達也

 

 伊藤氏は元々夫婦で宅配ピザ屋さんを経営されており、その後政界に転身されたそうですが、中小企業に対する思い入れが感じられるお話であったと思います。私は現在新潟県十日町市の中山間地で活動をしていますが、補助金や国の制度は地域の側が上手く活用すればとても良い効果をもたらしてくれるという事を実感しております。ですが、いかに予算や制度があったとしてもそれを使う地域の側がうまく使いこなせていないのが「補助金は税金の無駄、バラマキだ」と言われる原因であると思います。

 つまり、公平性という名の下に全国各地で一律に予算や制度を導入していくと、考えのない地域では無駄な建物が建設されてあとはほとんど活用されずに終わるという事が発生します。ですので、本当にやる気のある地域やその地域の中小企業を伸ばして行くというある意味差がつくような取組みについては賛成します。そして、経営においては常識だが行政はこれまで行ってこなかったようなKPIを設けてPDCAサイクルを回すという視点が持ち込まれたのもとても期待が持てます。

 

 また、今回の登壇者は農業・観光・伝統工芸・IT・地域おこしと様々な分野の方々がいらっしゃったので、とても新鮮で刺激的なご意見をうかがう事が出来たのは有意義でした。

 農家民宿「春蘭の里」実行委員会の多田氏によると、この地域の農家民宿に年間でのべ10000人のお客さんが来ており、海外からもお客さんが来ているそうです。そして、農家民宿で月40万円の収入を目指す事で行政に頼らない、行政が応援をするような地域を作っていきたいという事でした。多田氏は農業もしているのですが、農業の部分に関しては農業単独ではとてもやっていけないというご意見をお持ちでした。

 能作の能作氏のお話は、実際に輸出をしておられる方からの説得力のあるコメントが印象的でした。

「日本の製品は150点の品質があるのにアピールが下手なので、その良さを伝えきれていない。海外の人達は製品の品質が60点ぐらいでも100点に見せてアピールしているので売れている。」

これは裏を返せば、品質的に見れば海外の方が国内よりレベルが低く、アピールする力さえ磨けば海外市場で戦う方が実は有利なのではないかと感じました。ただし、日本の製品は海外の文化に合わせてアレンジする事も必要だそうで、お酒を飲むおちょこのつもりで出した製品が、フランスでは手を洗うためのフィンガーボールとして使われていたそうです。また、子供たちに地域の誇りを持ってもらいたいという事で自社の見学をしてもらう事を通じて伝統工芸について触れてもらう取り組みもされておられます。

 

地方創生フォーラム 来場者

 

 よろづや観光の萬谷氏は加賀温泉郷でレディー・カガという取り組みについてのお話をされていました。動画が3か月間で30万回再生されたり、JR西日本、東日本とタイアップしたポスターを作り、観光庁長官表彰を受賞するなど、PRに関してすごい実績でした。地方コンテンツとクールジャパンを組み合わせ、加賀温泉郷フェス(音楽フェスティバルと食と伝統物産展)や僕だけのレディー・カガと題して加賀温泉・周遊育成ゲームとしてアニメキャラ化させるなど、色んな人が加賀温泉郷に興味を持つようなPRをされていると感じました。今後の課題としてはレディー・カガの取組の事務局運営体制を手弁当での運営から継続的にできる形にしていく事のようです。

 1つの会社の取組ではなく、色んなところが連携して地域おこし的な事をすると、多くの場合はボランティア運営の形態から始まります。ただ、これを安定的に継続するためには事務スタッフの人件費を継続的に支払う事ができる体制にしてボランティアから仕事に段階を上げていく必要があります。これは公的な要素もありますのでこういう部分に行政が支援していく事は大切な事であると思います。

 

jig.jpの福野氏は生粋のプログラマー畑の方で、いわゆる田舎での地域おこしという感じではなく、都会でITベンチャーという感じの方でした。ただ、福井県の鯖江市に会社を設立されており、自社の取組以外にもオープンデータを鯖江市に提案して活用してもらうようにしたというお話がありました。「未来の社会=オープンデータ×めがね」という独自の考えも披露されており、めがねのまち鯖江市が本当に好きなのだという事が伝わってきました。実際、

「地域活性化の答えは簡単で、地方の人は自分の住むところをいかに好きになるか?という事です。日本の活性化は日本人はいかに日本を好きになるか?です。」

という発言もされており、これが本質なんだろうと思いました。地方で活躍される色々な分野の方のお話を伺い、私自身も農業や中山間地の事をベースとしつつも、異業種が上手く連携して地域での経済を作っていく事が今後重要になってくると思いました。

 

 ただ、今回の会の中では中山間地に対する施策はこれと言って見えませんでしたのでパネルディスカッションの際に

「農業には人間の経済活動の部分と自然との共生の部分があって災害の被害を減らしたりする機能が農村の多面的機能としてあるので競争力ある農業という視点とは別にこの点も考えてほしい。」

という話をさせて頂きました。また、

「世界市場に打ち出せるほどの競争力ある農業は基本的に富裕層を対象にした贅沢品でないと難しい部分があるので、庶民が食べる日常食はある意味社会インフラのようなものと考えて分けて考えてもらいたい。」

という話もしました。これを図にすると下記のような考え方です。

 

農業の価値の3要素

【農業の価値の3要素】

 

あと、

「国がいくら良い制度を作ったとしても地域の側が活かしきれない事もありますので、きちんと地域の側が活用しやすいやり方が必要である。」

という事もお伝えしました。これの一例として、地域が主体となってビジョンを作り、ビジョン実現のための取組を支援する『農村集落活性化支援事業』という素晴らしい事業があるのですが、募集開始から締切りまでの期間が1ヶ月未満(平成27年1月30日から平成27年2月25日まで)であり、この間に地域内で合意形成して書類を作成して応募できる地域がどれだけあるのかという事を考えると、もう少し募集期間を長くして応募しやすくしてもらった方がよいと思います。

 

 こういう公式な会にお招きいただき、政府に直接意見を言う機会を頂けたことはとてもありがたかったです。地方創生に関しては色々な立場の人がいろんな意見を持っているかと思いますが、ある意味将来の日本を新しく作り直していく取組みになると思いますので、足を引っ張るだけの批判をするのではなく、より良い形にしていくための建設的な提案をしながら現場での取り組みを進めていきたいと思います。

 

 

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