えん(縁)もたけ(竹)なわ ~竹籔を活かして、認知症の人の「居場所」と「出番」と「役割」づくり~

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執筆者 小林恵子
所 属おばあちゃん文庫

2015/05/26

 

 4月から、ウェブ会員にさせていただきました。どうぞ、1年間よろしくお願いいたします。

 私は現在、竹藪を活かして、認知症の人の「居場所」と「出番」と「役割」作りに取り組んでおります。5年前までは、京都で知的障がい、発達障がいと言われるかたを支援させていただく仕事に就いていました。障がいがあっても、地域の中で、安心してその人らしい、当たり前の生活が送れるよう。障がいがあるからできないというのではなく、やりたくてもできないのであれば、それぞれの思いをくみ取りながら、できないところを支えさせていただこうという仕事をさせていただいていました。個性的な方々の中、多くの学びのある日々でした。

 

 竹やぶ

 

 5年前に、お百姓であった、岡山の祖母たちが認知症となりました。これまで祖母たちで守ってきた山が、祖母たちでは守れなくなり、荒れた竹藪となりました。認知症になったこともあり、何度も何度も荒れた竹藪のことを憂慮しておりました。何度も何度もでした。

 身内が何人も認知症になっただけで、介護が必要となる上に、両親を含む周りの家族も疲れ果て、もうお手上げでした。祖母は引き籠りの状態となり、陸の孤島のような生活でした。職場で、いろんなご家庭に関わらせていただいているだけに、このまま祖母の症状がすすんでいけば、これは大変なことになる!!と予感しました。

 

 介護でたいへん。その上、荒れた竹藪のことまで何度も言われたら、私はもう気が狂わんばかりでした。そんな中、出会った本が、「そうだ葉っぱを売ろう」の本でした。料亭で使う「つまもの」を出荷する「葉っぱビジネス」によってお元気なお年寄りの町、徳島県上勝町の本でした。80代という同じ年代のお年寄りも、環境が整うことによって、こんなにお元気に過ごしていらっしゃる!!と、目から鱗でした。

 

「そうだ!!うちには竹藪がある!!!!!」

 

と閃きました!!悶々とした暗闇のような日々から、一気に光が差し、夜も眠れるようになりました。

 

竹林

 

 ネットで竹細工教室を探し、竹細工教室にも通い始めました。認知症になると、被害妄想、物とられ妄想があり、気持ちもふさぎがちでした。が、祖母たちが心配してやまない竹の話題となると、たいへん喰いついてきます。竹を通して、笑顔でたのしい会話もできるようになりました。

 そんな中、上勝町で約1か月インターンシップをさせていただける機会に恵まれました。ちょうど、葉っぱビジネスの成り立ちを映画化した「人生いろどり」の映画の撮影中でした。インターンシップでは、農家さんの実習のみならず、横石社長のお話、映画関係の方のお話など、とてもとても密度の濃い内容でした。

 当時は、インターン30人弱が「山の楽校」という廃校になった小学校を改装したところでの共同生活。大部屋で休み、皆で自炊、共同風呂、共同洗濯の日々でした。そこでの出逢いは、人生感が変わるくらいの、毎日が刺激的で楽しい上勝町の生活でした。笑顔のすてきなお年寄りたちから、元気をもらう日々でした。

 

竹人形

 

 その当時入院していた祖母の生活とは雲泥の差でした・・。祖母は、治療のためながら、真っ白の部屋で、外はビル。季節も時間もわからない、刺激のない生活でした。

 葉っぱの社長・横石さんは、町の人の笑顔のために身を削って取り組んでいらっしゃる。私は、身近にいる身内。せっかくインターンで実際の上勝町を学ばせていただく機会をいただき、活かしていかないわけにはいかない。と強く決意をいたしました。

 

 竹藪のことを調べると、放置竹林は、深刻な社会問題であることを知りました。森の生態系を壊し、森が竹ばかりになり、イノシシなどのエサがなくなるため、イノシシが、民家におりてきたりの、獣害にもつながっています。これまで、見向きもしなかった問題です。

  祖母に言われ、改めて山を見ますと、確かに、小さい頃と今とでは、山の景色も変わっていました。荒れた竹藪が増え続けていました。竹細工を習い始めることで、竹の可能性の大きさも学びました。これまで、日本人の生活は、「竹と和紙」の文化といわれるほど、なじみの素材であり、建物や、家具、竹細工、炭、などたくさんの活用法があることを学びました。

 

竹細工

 

 現在は、居場所作りとして、おうちカフェ「おばあちゃん文庫」で、お味噌作りや、桜餅作りや、BBQ、竹藪を山ごと楽しむイベントなどを通し異世代交流をしています。出番と役割としては、畑を一緒にしたり、竹細工に取り組んでいます。じば(爺婆産業)と銘打って、今は、祖母たちと八多喜(はたき)や竹の器、お箸作りなどに取り組んでおります。お世話になっている方に使ってもらったり、販売をしています。

  竹藪のことや、竹の魅力を一人でも多くの人に知ってもらえたら、と、竹箸つくりや、器のワークショップなどにも取り組んでいます。まだまだの内容で、身内ばかりの活動ではあります。 介護サービスのおかげではありますが、寝たきりだった祖母は、歩けるようにもなり、祖母も周りの者も、笑顔も増えているように思います。

 

 えん(縁)もたけ(竹)なわ~竹やぶを活かして、認知症の人の「居場所」と「出番」と「役割」作り~ 少しずつ地域に輪を広げていき、竹藪を活用し、森をまもりながら、少しでも笑顔の増える活動ができればと取り組んでまいります。

 つたない文書ながら、お読みくださり、本当にありがとうございます。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

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