海苔のソダテカタ~赤ちゃん海苔編~
2015/09/21
- 執筆者 鈴木陽子
- 所 属一般社団法人 ピースボート災害ボランティアセンター
突然ですが皆さん、これ、なんだかわかりますか??
お月様みたいにきれいなこれ、なんと海苔の赤ちゃんなんです。正確には、お月様みたいな丸の中にある小っさーーーな粒々の一つ一つが海苔の赤ちゃん、海苔の種です。海苔の赤ちゃんは、小さすぎて肉眼では見えないので、これは顕微鏡を覗いて見たところなんです。
漁師さんたちは、海水のプールに牡蠣の殻を吊るし、海苔の赤ちゃんを付着させます。そして、8月お盆明けから始まる「陸上採苗(りくじょうさいびょう)」と呼ばれる作業の時期が来るまで、水槽の中に沈めて、上からシートをかぶせておきます。
赤ちゃんが付着して黒ずんだ状態の牡蠣の殻と、
水槽に入れられている様子(シートははずしてあります)。
赤ちゃんたちは秋の環境になると海中に飛び出すので、水温を操作して赤ちゃんたちに「まだ秋じゃないよー!」って季節を勘違いさせるんです。
そして満を持して陸上採苗の時期がやってきたら、シートをはいで赤ちゃんたちをお引越しさせます。お引越し先は、こちら!
どどーーん!!……水車!!
この水車の足元の水槽に赤ちゃんたちを牡蠣の殻ごとお引越しさせて…
よいしょっと…
そしたら水車をぐるぐる回します。
あ、水車を覆っているのは養殖用の網です。
陸上採苗の現場にはこんなにたくさんの水車が。
秋が来て嬉しい赤ちゃんたちはいっせいに牡蠣の殻から飛び出して水の中を散歩し始めるんだそう。でもそこは赤ちゃん、やっぱりどこかにくっつきたくなっちゃって、ちょうど良いところにある網にぴたっとくっつくんです!その時間わずか4~5分!その頃合を見計らって、赤ちゃんがどれくらい網にくっついているかを検査します。
検査のために網をちょっと切り取って…
顕微鏡でチェック!!
まだあまりついていなければ「確認っ」と声がかかり少し時間をおいて再度検査。いっぱい付いていたら「上げー!」と声がかかり、網を取り外しにかかります。取り外した網はまた別の水槽の中へ。
ここでほかの網が「上げ」られて来るまでしばらく待機です。この作業を繰り返し、一日で何百枚もの網に赤ちゃんをつけていきます。
その日の分が終わったら、赤ちゃんたちは網と一緒にしばし日向ぼっこ。みんなに平等にお日様の光があたるように、漁師さんがちゃんと裏返したりと面倒を見てくれるから極楽極楽♪あったかくなると成長したくてむずむず… そしてそのあとは一気に極寒の冷凍庫へ投入。温度はマイナス25度!
そうして網を海に張ってもいい時期になるまで、ダメにならないように冷凍保存されるんです。そして9月も終わりに近づくと、赤ちゃんたちは晴れて大海原へ…!その勇姿はまた今度ご紹介しますね。
ということで、今回は「海苔のソダテカタ~赤ちゃん海苔編~」をお送りしましたっ。いかがでしたか?一口に海苔養殖と言っても、赤ちゃんのときだけでこんなに手がかかっているんです。そしてこれはまだまだ序盤…。あー早く続きを紹介したくてたまらないっ。でも今回はここまでです!
最後に。ご協力くださったのは、いつも陽気な石巻は渡波(わたのは)の海苔漁師さんたちです。大変お世話になりました。どうもありがとうございました!