出ヶ原和紙再生プロジェクト

2016/03/22

 

 みなさまご無沙汰しております。 福島県西会津町の地域おこし協力隊の横山です。

 今回は、昨年11月頃から私も参加してきた「出ヶ原和紙再生プロジェクト」のお話しをさせていただきたいと思います。

 

 

 出ヶ原和紙とは

 

 かつて西会津町下谷地区出ヶ原(いずがはら)で生産されていた「出ヶ原和紙」。旧会津藩の御用紙として、公文書や鼻紙・障子紙などにも使われていたほど。出ヶ原は水源が豊富で会津の中でも和紙の生産で有名な地域であり、出ヶ原以外の地域でも「出ヶ原紙」と名乗り売り出すなどブランド紙だったといわれています。昭和30年頃を境に、洋紙の普及や後継者不足、西会津町を襲った大水害の影響で、原材料の楮が流されたことにより、産業は一気に衰退していきました。現在は、紙漉きを経験したことのある方もごく僅かになっています。

 

 1999年に町役場を退職後、「出ヶ原和紙・再生」を試みた方が、出ヶ原集落にはおられます。全国各地の和紙産地を回って手法を学んだり、集落の紙漉き職人への聞き取りや独学で活動に取り組んでおられましたが、現在はその方も高齢ということで活動を行っていません。

 そんな中、埼玉県在住の滝澤さんという小川和紙の修行もされていたアーティストさんが出ヶ原和紙再生に向けて、一緒に活動してくださることになりました。まずは、町に残っていた紙漉きの道具の調査や原材料の楮(こうぞ)やノリウツギなどの捜索や収穫などを秋からすすめてきました。

 私は紙漉きも和紙の経験も無いので、素人が見聞きしてきたことをそのまま綴らせていただこうと思います。

 

 

楮の収穫

 

11月中旬~12月初旬にかけて、楮を収穫します。

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

 

会津では雪が降りますので雪が降るまでのわずかな期間での収穫作業になります。収穫にはこの時期が適しているそうです。

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

収穫した楮はなるべく同じ長さ切り揃えます。

 

 

楮の皮剥ぎ

 

大きな窯に楮を入れて蒸かしていきます。

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

 

火力にもよりますが数時間蒸して、やっと皮が剥ぐことができるようになります。蒸かしたては、軍手をしているとおもしろいくらい簡単にスル―っと楮の皮を剥ぐことができます。

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

 

剥いだ皮は、ある程度の量で束ねてはぜ掛けし、乾燥させます。

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

 

乾燥させた楮の木の皮(茶色の部分)をヘラのようなもので、削ぎ取って乾燥させていきます。

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

 

この作業は何度か繰り返し行い、和紙仕上がりがきれいになるよう丁寧に皮を削ぎ取り、ごみを取り除いていきます。

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

 

この行程を行っているうちに西会津はすっかり雪が降る季節となり、楮を寒ざらしすることで白く漂白されていきます。

 

 

楮の繊維をつぶす

 

楮の繊維を木槌で叩いて、繊維をつぶしていきます。

 

写真9s

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

 

この作業が意外とハードなんです。根気と力が必要。1時間くらいずーっとひたすら叩き続けます。

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

 

 

写真を撮りそびれてしまったのですが、ノリウツギの木の皮を煮て、濾したものと叩いた楮の繊維を舟の中で混ぜ合わせていきます。

 

写真13s

 

 

そして、いよいよ紙漉き

 

 まずは、滝澤さんのお手本です!これが秋からみんなで作業し続けてきた原材料を使った記念すべき「出ヶ原和紙」の1枚目。

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

 

 漉き終えた和紙を見て、「うわぁ~」思わず感動して、涙でそうになりました(笑)これまでのリサーチ、楮蒸かしの失敗、試行錯誤の連続で「本当に和紙が漉けたんだ~」って漉いた和紙を見た瞬間がものすごく嬉しくて。感動したのです。

 そして私も、「漉き初め会」で紙漉きを体験させていただきました。人生初の紙漉き。この紙漉きを楽しみに今までも活動してきていましたので、わくわくしていました。

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

 

 けれども、見ているのと実際にやってみるのでは、全然違いますね。微妙な加減が難しい。まず、1回目は失敗・・・滝澤さんからも「あんまり見たことが無い失敗ですね。」とやんわりと失敗作であることを伝えられました。

 めげずにもう一度挑戦!なんとか無事に漉くことができました~

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

嬉しいー!!!手の冷たさを忘れるくらいの感動でした。

 

 工房となっている古民家の底冷えする寒さの中で冷たい水に手を入れて、紙漉き。かつての職人たちは、ナリワイとして紙漉きをしていたのだから、この雪が降る寒い季節の紙漉きは過酷でしかなかったのではないか。ふと、そんなことも考えてしまいました。

  紙漉き会は2日間に渡って開催。2日目は休日ということもあり、出ヶ原集落の人たちが紙漉きを体験しに来てくださいました。かつて、出ヶ原和紙再生の活動をされていた方も足を運んでくださいました。

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

 

 私たちの使っている道具が「これじゃあだめだ・・」と言いながらも、楮の皮削ぎを指導してもらえたり、これまでの取組みを集落の人や私たちに話してくれました。

 前日に、漉いた和紙が乾いたので出ヶ原集落のみなさんへお披露目。

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

 

オール・メイドイン西会津の和紙です!!

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

 

 時代を越えて、出ヶ原和紙の再生に向けた一歩が動きはじめています。和紙職人である滝澤さんに教わりながら、地元の人、出ヶ原集落に暮らす人、若者、よそ者、いろんな人が関わりながら復活・再生に向けてプロジェクトは少しずつ進んでいます。

 

福島県 西会津 出ヶ原和紙再生プロジェクト

 

 写真や文字だけでは伝えきれないほど、手間暇かかっている和紙づくり。今回、こういった経験をさせてもらえた事にまず感謝です。

  これからどんな風に、出ヶ原和紙再生プロジェクトが進んでいくのか・・・?みなさま乞うご期待!私も引き続きこのプロジェクトには関わっていきます。

 

 

 

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