会津の暮らし
2016/05/06
- 執筆者 横山萌美
- 所 属西会津町地域おこし協力隊
雪深い西会津町も、今年は暖冬の影響で、町の誰もが「いまだかつてこんなに雪が降らなかったことはない!」というほどに降雪量が少なかったです。
その分、例年より少し早く、春の訪れを感じています。ふきのとうもすっかり芽をだしていたり、花のつぼみを見かけます。
そういえば、鎌倉で暮らしていた頃は、もちろん桜や山が芽吹く様子でも季節を感じていましたが、通勤途中で店頭に並ぶ春物の洋服や靴を目にして、「あぁ~春が来たな」と感じていた気もします。「朝早くに家を出て、夜暗くなってから帰る」日光を浴びない生活サイクルで、それだけ自然や周りに目を向ける余裕のない生活を送っていたのでしょう。それが会津に来てからは、だんだんと山の草木が芽吹いていく様子や道路脇にふきのとうが目を出す様子を毎日当たり前に目にして、季節を感じることができるのだから。 幸せなことですね。
四季がはっきりしていることが西会津での暮らしが魅力的な理由のひとつだと私は、感じています。真冬の大雪は正直、しんどいですが。
車を停めて土手でふきのとうを収穫しているおじさんやおばさんを時々みかけます。山の恵みは美味しいことはもちろん、ふきのとうは肝臓のデトックス効果もあるんですね。冬眠から覚めた熊も山菜を食べて、デトックスしているという話を先日、耳にしました。
私も、3月中旬からふき味噌が毎日のごはんのお供になっていて、ふきのとうの苦味を噛みしめるたびに「春だな」とひそかに感じています。
野花や山菜もだんだんと芽吹きはじめているのですが、例年に比べると2~3週間程早い春の訪れです。天気の良いぽかぽか陽気が続いているので、春を探しに散歩に出かけると、桜の蕾やツユクサ、見ごろを迎えた福寿草が目に止まります。色のない雪景色の中、過ごしてきた数か月間を経て福寿草などパッと明るいビタミンカラーの花を見ているとなんだかちょっぴり気持ちも明るく、元気になるから不思議です。
会津に移住してきたのが、5月。地元の方から「春になるとわくわくするんだよ~」と聞いていましたが、私にもその感覚がやってきました。雪解けをして、顔を出すふきのとうを見かけて「わっ!もうふきのとうが顔だしてる!春だー!!」と嬉しい気持ちに。
一昨年の冬は、4か月間くらい色のない世界での生活。深い雪に町全体がすっぽり包まれてしまい、雪景色ってモノクロの世界にいるように感じるんです。だから、春になって空がどんより曇り空ではなく、青空が広がったり雑草が伸びてくるだけでもなんか色を感じて、春の訪れにわくわくしてくるんです。
西会津で2度目の冬を越え、この土地での暮らしにも慣れてきました。ただ同時に日々暮らしていけば行くほどに、知らないこと・知りたいことが増えています。それは方言であったり、風習・歴史であったり、食にまつわることなど様々。少しずつですが、まずは自分の興味があることを地域の方々に教えていただきながら覚えていきたいと思い、冬の間に手仕事を習い始めました。
またたび細工
以前から興味のあった「またたび細工」を今年からはじめました。福島県の奥会津と呼ばれる地域では、昔から山で採れるマタタビや山ブドウ、くるみなどを材料に、「またたび細工」や「山ブドウ細工」、「ヒロロ細工」など編み組み細工が盛んで、伝承され続け現代風にアレンジされながら進化をしてきました。
山の素材でつくられており、生活に欠かさない道具の一部として用いられてきていましたが、現代では“高級品”というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
工人と呼ばれる作り手さんたちのように職人技を習得するのは、たやすいことではありませんが会津で暮らしている以上、私もその手仕事を習得したいと思い習い始めました。隣町の公民館が主催している「マタタビ細工講座」に参加し、4日間という短い時間で1つの作品を仕上げるというなかなかハードルの高い講習会へ参加。またたび細工のざるは、米とぎや野菜を洗うときに使うこと多いようなので私は「米とぎザル」をつくることにしました。
まずは、マタタビの皮を剥いていきます。木の皮を削いでいくとマタタビの香りが広がります。「猫たちはこの香りの虜になるのか・・」なんて話していたら、窓の外側で野良ネコちゃんがマタタビの香りに誘われて、窓の外でゴロンゴロンってうっとりした表情で身体を窓にこすりつけていました!! そんなに香りが強いんだ! マタタビ効果恐るべし!!!!(笑)
しょっぱなのこのマタタビの蔓を揃えていく過程が難しいです。師匠からは、「これだけでも一人前になるには、4年くらはかかるかもな」と言われました。材料の準備ですでに心折れかけながら教わりながらすすめていきます。材料の準備を済ませたら、いよいよ編み組み開始です。
不器用な私にも果たして編み組みできるのか?!やる気と気合だけは十分だったのですが、やはり師匠たちのようには進んでいくことはできません。非常に難しい。頭で考えてもこういのは上手くいきませんね。「手でしっかり覚えていくしかねぇぞ」師匠の言葉突き刺さります。
会津弁が強い師匠の言葉が上手く聞き取れなかったり、いろいろ壁はありましたが(笑)何回聞いても、何回失敗しても、決して怒らずに指導してくれる師匠たち。地道にコツコツとものづくりしている師匠たちは、やはり違う。素敵です。※実際のところは、時折「吸わねぇと、イライラしちまうからな(笑)」と言いながら、何度か煙草を吸いに行ってしまいましたが・・(笑)
どうにかこうにか、4日間で仕上げた「米とぎザル」ですが。師匠には「なんだか植木鉢みてぇな恰好だな(笑)」と好評されました。来年は、マタタビを収穫するところから全ての行程を経験していきたい。
その様子は、こちらのいなかマガジンにまた投稿できればと思っています。