宇和島の水産業を支える、九島の巻き網漁! 後編

2016/06/16

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執筆者 村上将司
所 属九島地区地域づくり協議会

 

 つづきが遅くなりましたが、「宇和島の水産業を支える、九島の巻き網漁!」の後編です!前編を3月に書きまして、あっというまに初夏になってしまいました…

 巻き網の漁師さん達は毎晩漁に行っていてとっても忙しくしています。

 

九島

四国の西南 九島は暑い日が続きます。

 

 

 さて、前回の続きですが、前回は網を放つ前の準備のところでした。

 網を放つのもタイミングがあって、前回の記事にあるような機器を使いながら、潮の満ち引きと流れを読みながら網を投入!集魚灯を照らしている中船の周りをぐるーっと本船が網を落としながら回ります。

 

網が海中に

ものスゴイスピードで積んでいた網が海中に。

 

 

 あっという間に網を全部投入し、その後底から引き上げながら円を小さくして行きます。網を投入してから引き上げるスピードが結構早い!全員が慣れた手つきで網をきれいに整理しながら巻き上げていきます。

 

勝生丸のチームプレイ

勝生丸のチームプレイ

 

 

 だんだん網の底が上がってくると水面近くに鯛、アジなどがかなりたくさん入っているのが目にも見えてくるようになります。

 前回記事でも書きましたが、春ごろのこの季節のアジは大きめのサイズが多いです。値が良い豆アジ(スーパーゼンゴ)は水温があがってきた夏ごろです。

 ある程度巻き上げて網を狭めたて集めた状態にしてから、ユニックを使って別の網ですくい、運搬船のイケスに流し込みます。ユニックを上手く操作し、魚が逃げないよう、獲り漏らしがないようにイケスに移します。

 

アジやタイが獲れてる

引き上げてくるとアジやタイが獲れてるのが確認できます!

 

運搬船に積み込み

海上でそのまま運搬船に積み込みます。

 

 

 海のど真ん中で、数隻が無線でやり取りしながら魚を求めて船を走らせ、「ここだ!」という所を決め、そこで青白い集魚灯が光り、潮を読みながら「今だ!」というタイミングで静かだった海面に一気に網がぐわーっと投入され、その網を巻き上げてみんなが網を手繰り寄せていると、獲った魚がだんだん見えてきて、だんだん見えてくるとその魚の多さにびっくりし、いつの間にかユニックに網が準備されていて手際よく運搬船に移している。

 

 語弊を恐れずに言うと、ある種の「イベント」のように見えたこれらの光景。漁師のみんなの生業を「イベント」扱いしたらいけんと思うけど、漁のことを何も知らずに船に乗らせてもらって、これから始まる作業や見えてくる光景にワクワクしたし、スゴく新鮮でした。

 巻き網漁をしている九島のみんなは、仕事として毎日沖に出て漁をしていて、獲れるか獲れないかはある意味ギャンブルでもあり、その確率を上げるため、良質な魚を獲って利益を上げるために、ひとつひとつの作業を巻き網船団の「チーム」で動いて機能し、そんな漁を生業としてそれぞれが頑張ってて尊敬するなーと思っています。

 

 さて話は戻りますが、運搬船に積んだ後は、九島に戻り湾内にあるイケスにアジをいくらか移します。この日は金曜日で、翌日の土曜日は漁が休みなので魚が少なく単価が上がります。なので、いくらか活かしておいて土曜日に水揚げするようにします。

 

集魚灯

運搬船からイケスにも集魚灯でおびき寄せて移します。

 

 

 移した残りのアジを市場に持って行き、再びユニックですくい上げて水揚げし、大きさを選別してトロ箱に移していきます。これもチーム作業で水揚げと選別の作業に分かれながら手際良く進めていきます。

 水産業のまち 宇和島・九島に住んでいながら早朝の魚市場に行くのは初めてで、水揚げの作業、選別、魚市場の職員さんの作業、続々と入ってくる漁船、一本釣りや刺し網漁の水揚げなど見るもの全てが新鮮でした。

 勤め人だと一次産業のことを知らないまま過ごしてしまっているので、それではいかんなーと改めて思ったところです。

 

水揚げ

朝日が昇ってきたころに水揚げ。たっくさんのアジやタイ!

 

アジ

きれいなアジ!美味しくないわけがない!

 

 

 水揚げ・選別したあとは運搬船を洗って終わりです。終わったのは午前6時ころ。18時に船元に集まってから夜間の約半日の間船の上で過ごし、真っ暗な海のど真ん中で潮の流れや天候を読みながらギャンブルに似た漁を行い、船上では勝生丸チームが手際よく作業に取り掛かり、市場に行ってからは朝焼けを浴びながら水揚げ・選別を行う、とても大変な仕事でした。

 今回は勝生丸に乗せてもらいましたが、九島には全部で17船団あります。その船団ごとに漁場や漁の方法も若干違うだろうし、船の大きさによっては獲る量も変わってくるし、それぞれが工夫しながら、また情報交換もしながら生業を築いていっています。

 

 「情報交換しながら」と書きましたが、九島の漁師さん達は、それぞれみんな仲が良い!消防団で集まったり、自治会で集まったりした時は、休憩や飲み会の場でも海や船の話ばっかり。それ以外は、だいたいパチンコか競馬の話。巻網組合や青年漁業者の集まりもよくあるみたいで、勤め人の自分からしたら結構うらやましかったりします。

 

 九島は巻網以外にも魚類養殖が盛んです。フード・アクション・ニッポン・アワード2015で農林水産業部門最優秀賞を獲得した「みかん鯛、みかんブリ、みかんサーモン」はこの九島の海で養殖されています。

 山では日本一の産地 愛媛県の一角を担う柑橘栽培が行われています。

 

 九島は一次産業の島です。橋が架かってもそれは変わらないと思います。九島のみんながどう思っているかはわかりませんが、産業を続けていっていることが島の景観や文化、暮らしを守り引き継いでいることにもつながり、それはきっと外の人から見ると新鮮で、九島らしさであり九島の良さなんだと思います。

 そんなことを思いながら朝日を浴びた船の上はとっても気持ちいいです!

 

朝日を浴びた船

 

 

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