ふぅーっと一息ついたときに深呼吸して気づいたこと
- 執筆者 久米可奈子
- 所 属阿南市地域おこし協力隊
2018/03/27
突然ですが、私はプレゼンがとても苦手です。急に田舎暮らしとは違う話を始めてすいません。
地域おこし協力隊の活動は、地域によって違いはあると思いますが、私たち阿南市新野町では、移住希望している人を案内できるよう空き家を探したり、町の行事に参加して手伝ったり、農業を手伝わせてもらったりしながら、町のことを知り、町の人を知って行くよう活動をしています。
そうこうしながら、私は、新野町は私が好きなところ以外にどんなところに魅力があるかなー、将来どのようにしてこの町に残れるかなーなんて考えています。
そんな活動の中で、時々、プレゼンをする機会をいただきます。町内の方に対してや、遠くから移住体験ツアーに参加してくれた方に対してだったり、東京や大阪で行われるような移住フェアに出向いて、阿南市に興味を持ってブースに相談に来てくれた方に対して話をする機会もありました。
緊張の問題だけではなく話をするのが下手なのももちろん、資料の作り方もうまくないんです。自己紹介(これまでの経歴や今後の地域おこし協力隊としての活動についてなど)をする際に、5分与えられて、恥ずかしながら3枚のスクリーンで挑んだこともあります。
つい最近では、移住体験ツアーに県外から参加してくれた方に対しての発表で、私が移住を決めたきっかけを話す部分の資料を入れてなくて、ひたすら阿南市の紹介ばかりして終わってしまいました。
SNSや体験ツアー、移住フェアなど、田舎暮らしの魅力のPRはいろんなところで行われていますが、この町すてきだなーって思う最初のきっかけってSNSや雑誌の紹介や、移住フェアでのポスターの写真だったりしますよね。観光地のPRのような美しい写真もよく見ます。
うっとりするような風景が毎日見られるようなところへ移住するなんて、なんてすてきな暮らしになるんだろうか!と、もうすでに田舎で暮らしている私ですら心を揺さぶられます。
そこから、その土地で暮らしている人はどんな暮らしをしているのか、どんな風に移住を決意したのか、暮らしてみて分かったことなんかを聞いて、自分が移住した先のことを想像してみて、その町が自分の移住先になっていくような感じじゃないでしょうか。(ぴっときてパッと移住決めちゃう方もたくさんいますけどね!)。
私たちのプレゼンはそーーーんな大事な役割なのに・・・こんなにヘタではいけない!!
これまで、前の仕事でも知らない人と会話をする機会はたくさんありましたが、大勢の人に対して好きなことを一方的に話続けるってしたことがなかったんです。学生の頃にはやった気がするけど、もうそんな記憶はない・・・。
でも、これはもう本当に、新野町のためにも、私の地域おこし協力隊としての活動を存続させてもらうためにも、研究と練習を重ねようと心に決めました。
そんな、活動1年目。いよいよ、新野町に来て2度目の春を迎えようとしています!今年の新野町は随分と寒かったようです。私は、10数年ぶりに霜柱をザクザク踏みながら歩いたり、鉢に張った分厚い氷を石で割ったりしました。うっすら雪が積もる日も!
梅の花の蕾が膨らんで来た頃から、草むらや田んぼのあぜ道を、枯れ草をがさごそかき分けて歩きました。
ふきのとうを見つけたかったんです!地元の人に、ふきのとうがある場所知らないか聞いたんですけど、あんまり興味がないのかみんな知らないみたいで。
「そんなに一生懸命探さなくても、産直市へ行けばきれいなふきのとうが安く手に入るよ」
って教えてもらっちゃいました。でも、自分でどうしても発見してみたかった・・・。
ネットで「ふきのとう 見つけ方」で、検索したら、山にあるとか土手にあるとか、情報は様々・・・。ふきがいっぱい生えている所にあるらしいけど、去年どこにふきが生えていたかなんて覚えていません。
今年、チェックしておいて、来年まで待つしかないかなと諦めていたんですが、ついに見つけましたーーーーー!!!!1つだけだけど!!!
嬉しくて嬉しくて、本当は天ぷらにして食べたかったんですけど、一口で終わってしまうのが勿体無くて、ふきのとうみそにすることにしました。
ふきのとうをさっと茹でて、細かく刻み、すり鉢でごりごりすりつぶしながら味噌とふきのとうを合わせていきます。
1個だから本当にちょっとしかない!
ふきのとうの青々とした匂いと味噌の香ばしい匂いがだんだんと混じって、ふきのとうが味噌になじんできました。 おいしそうー!!
ブレンダーでガーッともできますが、私は東京にいるときに精進料理を習い始めてから、すり鉢を好んで使うようになりました。
精進料理は、五味(甘味・酸味・塩味・苦味・うま味)、五色(青・黄・赤・白・黒)、五法(切る、焼く、煮る、揚げる、蒸す)を作る方も食べる方も、五感(視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚)で愉しむ料理です。
私はまだまだ修行が足りないので、ご飯を作るときに毎回そうしているわけではないんですけど・・・レンジでチンしてしまうし、フードプロセッサーでガガーっと回してしまうし、野菜の色や形も大して見もせずに一気に洗って皮をむいてカットしてしまいます。
でも、今回のように念願のふきのとうが手に入って、大事に大事に食べたいっていうような気持ちの時には、精進料理で習っているように、ふきのとうの形をよく見て丁寧に土を落とし、1番良い色になった時にさっとお湯からあげて、ふきのとうの香りを嗅ぎながらザクザク刻んですり鉢に移し、柔らかいところ、硬いところを感じながら綿棒でつぶして・・・と、ふきのとうを調理する段階からじっくりたのしみます。
新野町で暮らすようになって、東京にいた頃を振り返ってみると、思いっきりにおいを嗅がないようにしていた気がします。
電車の中、地下鉄の駅、大きな百貨店の1階、飲食店の裏口・・・人混みや埃っぽいところなど、どうしてもあんまり良いにおいじゃないものに出くわす機会が多くて、無意識に嗅覚全開にしないようにしていました。
でも、田舎での生活は、花の匂い、草や木の匂い、土の匂い、風の匂い、海の匂い・・・思いっきり嗅ぐことができます。
田舎だと何でも広いし人も少ないから、苦手な匂いの人がいても距離を取ることもできますし、自分が、もしかしてなんにおってるかも?!と気になったときは、そっと離れておけば心配ありません。心穏やかに過ごせます。
とっても小さな変化なんですが、自然の匂いを味わえる毎日って幸せなことです。
どこにいても、写真や動画で素敵な景色を知ることはできるけど、においはこの場に来ないと感じられないし、季節によって変わっていく。暮らしてこそ味わえる贅沢だと感じています。
でも、このにおいの素敵さを伝えるにはかなり高度なテクニックが必要だなぁーーーーー!!!