サンタは公用車にのって!食パン配食大作戦!
2018/11/30
- 執筆者 小原宙子
- 所 属鹿児島県西之表市地域おこし協力隊
南の島の種子島。種子島の冬は風がとっても強くなるのが特徴的。1月ごろの寒い時期にはやはりダウンの活躍もあります。
昨年の11月から12月で安納芋からだんだんとオウギ(サトウキビ)の収穫に移行してくるこの頃合に、企てが実行されました。
島にある有名なお菓子屋さんとコラボしたパンとケーキの講座(そして鍵を見つけた)日、わたしは先生にきかれました。
「明日の食パン焼くとき、わたしも一緒にいましょうか?」
当初は、前日お母さんたちがこねあげてくださったパンを、翌日発酵を済ませてから私が一人で焼き上げ、じいちゃんばあちゃんに配るという計画でした。あのひとと、あのひとと…。お顔を思い浮かべながら人ととおり指折りして数え、うなずきました。
「大丈夫ですよ。一人でいけるとおもう…んだよね?たぶん」
さすが先生。何かを察知されたのでしょうか。
「いえ、私もお手伝いしますよ。お一人だと大変だと思います。何時にきたらいいですか?」
「え…良いのですか。では、お言葉に甘えて…ありがとうございます!今日に続き明日まで…!」
CSRという言葉がきかれて久しいですが、社会貢献にはいろいろな形があるのだなぁとこの仕事を通しても実感します。
お金という利益とは違うかもしれない。もしかしたらまわりまわってそういった形にはなるかもしれない。でも、目の前の人への思いやりが、おいしかったり、楽しかったり、違うかたちで実になっている。本当に尊敬できる人たちの多くは、そういうところにもたくさんいるような気がしました。
そして、この先生の申し出が、どれだけありがたい、ありがたいを通り越して、本当に実際なくてはならなかった!という采配だということに、後々気づくのでした。
サンタさんは、きっと一人ではサンタ業できないのかもしれませんね。トナカイとかね。小人とかね。たくさんの役割の人たちに支えられていて、自分のお役目もできているのかもしれませんよね。
そして、役所の担当課の月イチミーティングのあと、なぜか突然やってきた個別面談タイムに慌てつつ。なんだかんだ勤続早い人順ということで最初にあたった私。むしろラッキーだった。
お店で合流した先生と一緒に一路立山小学校と公民館へ!昼なのに大きい道路沿いで鹿を見たような気がします。ずっと鹿を見たい、いやみたくない、と言っていた先生、よかったやったね!!
前日の机をすばらしい参加者の皆さんのえずか(仕事がはやい)掃除の後も残していただき、パンの発酵具合などを確認します。この時点で気づきました。
(先生いてくださって、本当によかった。正直、わかりきらなかったかも)
ありがとうございます!そして、待ち時間などもはさみ、いただきものの生姜の砂糖漬けなども女子らしくつまみながら、準備は進んでいきます!
パンを再発酵させ、昨日どうなったか見たい!と言って下さったお母さんのためにも写真をパシャパシャとります。後日の校区新聞の表紙になってお伝え完了。
可愛く膨らむパンをみてやはり思います。
(先生いてくださって、本当によかった!以下略)
卵の黄身をおしゃれに塗って、光沢を出すときも。
(先生いてくださって、本当に!以下略していいのだろうか!)
そうこうしているうちに、パンがきれいに焼きあがります。手際よく3本を焼きこなして下さる先生。
また、皆さんへ配食するためのカッティングもさすがプロ!きれいに切り分けて下さり。さらに写真栄えするようにもならべてくださいます。
写真をとって、袋詰めをする間も、先生のありがたさはとまりません!!出来たてを配るために、袋詰めを変わって下さるとおっしゃる!なんてありがたい!!
100均のクリスマスフレークシールを一応持ちながら、出来たてをお届けすべく、ちょっと封をあけたまま、近くに走ります。白馬、トナカイもとい白の公用車がソリ代わり。
焼きたてのパンを受け取ると
「あたたかい!」「やわらかい!」「もうおいしそう!」
とじいちゃんばあちゃんに好評をいただきました! 嬉しい感想を携えて、公民館に戻ると、さすが!なんとラッピング用に、かわいい2色のリボンを容易して下さり。用意していたビニール袋を贈り物、ギフト使用に!100均のクリスマスフレークシールも可愛いのですが、ランクがぐっとあがりました!!
さらに、次のパンの焼き準備もしてくださり、また「行って来い!」とおくりだしてくださる!先生!よかよめじょう!!(美人!)
おおきに!!白いソリにのって、何往復めかに、時計をちらっとみたとき、また思いました。そうです。
「先生いてくださって、本当によかった…!先生がいてくださったからできた!!」
お気づきの方も多いと思いますが、配る以外、ほとんど、いえ全てといっていいほど先生のご活躍でした。そしてパンをこねてくださったお母さんたち。もちろん、パンを渡すときに
「支え合いのお母さんたちからクリスマスプレゼントですって!いま、公民館にお菓子屋さんが来てくださって、プロの先生が焼いて下さった美味しいやつだよ!!」
まちがいありません。そうすると、受け取るおじいちゃんおばあちゃんたちもまた驚き、感心されます。
「すごいねぇ。」「あったかい。」「ありがとう。」
高齢者サロンが積極的にひらかれている種子島。地域の見守りの目は、あたたかく人が寄ろうて集える場所をつくってくださっています。その真ん中にいる、高齢者の方やあるいは学童の子どもなど。顔を見合って喜べるというのは、とてもすてきなことです。これもひとつの地域の活性に思えます。
一方で、おしゃべりもとっても面白いけど、集まりに出るのは苦手というかたもいます。小さい地域ほど、声をかけあったり目配りができる関係が、ネットワークのように出きていて、地域包括支援センターの方もその網の目に感心されていたことがありました。
できれば会にでてほしい。でも無理強いするだけなら違う。そんなときに。この配食というのは、皆で共通のお話のタネになりながら、おいしいも共有できる取り組みのように思えます。
訪問したり、顔をみたり、お話をしたり。それだけでも楽しいし、喜んで下さるかたもいます。来たひとをたくさんもてなしてくれる島の文化は、外から来た私にもとってもありがたくて嬉しいもの。
一方で、お礼ということが浮かびます。もてなされながら、島の方はもてなしかえしたり、できた野菜を交換するなど、もらいっぱなしにならない関係、だから続いているものもあるのかもしれません。こちらの方は、していただくことにとても恐縮される方もいる一方、とっても喜んでくださる気もします。
それは、ものをもらったということだけでなく、あのもてなしを喜んでくれた、あるいは自分のことを気がけてくれた。そういうおもいも受け取って下さっているからなのかなぁと思いました。社会貢献のように、ちょっとしたこと、だけど循環していくためのヒントなのかもしれません。
5時の音楽が鳴り響く中、白いソリから公用車にもどった車内はパンの良い香り。すっかりお世話になった先生と来た道を、鹿を探しながら走りつつ。心の中でもまた手を合わせたくなりました。
本当に、おおきんなぁ。
種子島の人たちは、本当に良い人がたくさんいます。