第1回 なぜいなかパイプは「ない人」と言いはじめたのか?
- 執筆者 古川智恵美
- 所 属一般社団法人いなかパイプ
2019/06/30
今年の3月に突然行われた『「いなかパイプが求める「いなか求人」~ない人って何!~トークライブ」。
▼YouTube動画はこちらからどうぞ。
淡路島在住、プロファシリテーター青木将幸さん(通称マーキー)、宮崎・東京・四万十など多拠点でサービスをイチから立ち上げる岡田拓也さん、そしていなかパイプ代表ササクラレオが話をしました。テーマはいなかパイプがはじめた「ない人」のこと。
今回から7回シリーズで、トークライブで話されたことをご紹介します。
第1回 なぜいなかパイプは「ない人」と言いはじめたのか?
レオ:いなかパイプで「ない人募集」というメッセージを配信したところ、これまででもっとも反響がありました。ただ、ホームページを見てもチラシを見てもよくわからないという声も。今日は詳しく説明しつつ、日本中の様々な地域に関わっている2人から見てどう思う?ということを聞いてみたいです。
マーキー:「ない人募集」がFacebookのタイムラインで流れてきて、よくわからないけど面白そうだなと思ってシェアしてみた。そしたら僕の友達もどんどんシェアして、「これで勇気が出ました」とか「僕もいけそうな気がします」という反応があった。どうやら人を救う広告だったみたいだね。
レオ:おおー、すごい。
マーキー:広告で人を救えるってなかなかないよね。なんで「ない人募集」をはじめたの?
レオ:いなかパイプは人が来てなんぼの商売なんです。なので、人の募集をいろんな形でこれまでしてきましたが、なんかうまくメッセージを発信できていない感じがあり、どう発信したらいいか悩んでいました。いろんな会社さんと付き合いがあるんですけど、みんな人手不足を嘆いており、求人募集を出しても人がこない、とご相談に来られる。でも、いなかパイプが募集すれば人が集まるかと言うとそうでもなくて。
マーキー:そうでもない。
レオ:どうやって伝えればいいのかって、ずっと考えていました。世の中の求人は給料おいくら万円です、こんな福利厚生があります、こんな業務内容です、という条件を整えて募集するわけです。その条件を見てみると給料が高かったり、その分求めるスキルも高かったりする。そう、「ない人」の逆でこれらは「ある人」に向けてなんですよ。これができます、こういう経験があります、キャリアがあります、私こんなことができます、という人を募集している。それが一般的だなと。
岡田:確かに。
レオ:田舎も欲を出せば色々条件はあるんですよ。「ある人」に来てほしい、いい人来てよっていうことは言っている。けど、実際はなかなか来ませんよね・・。
マーキー:なんでだと思う?
レオ:条件だけ比べたら都会より給料が下がります、こんな田舎で不便です、となる。でも、そこで比べられたくないなあと思っていて。田舎はそこで戦うべきじゃない。どう発信するかをずっと考えていたとき、居酒屋のトイレでたまたま求人募集のチラシを目にしました。この仕事は時給750円です、こちらは時給800円です、とある。なぜ仕事内容によって給料が変わるのか?こんなスキルがあるから、とか、大変な仕事だから高い時給というのはわかりますが、そうじゃない差のつけ方はないのかと。別に時給750円の仕事がいいならそっちでもいいんじゃないかと。
そうやって給料の金額で人を選んで、来てもらうことは嫌だなと思って。そうじゃない発信の仕方、募集の仕方で田舎の人たちが求めている人って何かなと考えてみた。もちろん条件を言い出せば出てくるけど、究極的に言うと、田舎の人たちは「笑顔があればいいから」とか(笑)、逆にどんな能力とかあるかわからなくても「お前だったらいいよ」とマッチングされて仕事が決まっていくことがあります。
岡田:なるほどね、実力やスキルじゃないところ。
レオ:そうそう。田舎の人はスキルとか経験とか全然求めてなかったりする。だから逆に募集情報を出すのが難しい。
マーキー:そもそも条件がないってことね。元気で田舎に来てくれればいい。
レオ:そうそう。そもそも人がいないんだから、来てくれるだけでありがたいっていうような状況はある。人間であればみたいな。
岡田:人間であればいい?!
レオ:極端に言えば。「人間であったら誰でもいいんですか?」と実際に聞いてみたことがあって。そしたら「自分で会社まで来られたら」とか「動ける人ならたぶん仕事教えられるわ」って言うワケですよね。
岡田:えー、すごいな。
レオ:だからどんな人でもいいなと思った。田舎側はそうやって受け入れる能力があることが見えてきた。なんでもオッケー。
(②へつづく)
ゲストプロフィール
青木将幸さん( 青木将幸ファシリテーター事務所 ) http://www.aokiworks.net/
1976年生まれ。熊野出身。環境NGO・A SEED JAPANに関わる傍ら「それぞれの持ち味が発揮される組織づくり」に関心をよせる。95年よりNPO向けの組織運営トレーニングの開発とファシリテーションに関わる。企画会社ワークショップ・ミューで修行期を過ごした後、2003年に青木将幸ファシリテーター事務所を設立。以来、毎年100回ほどのペースで会議・ワークショップ・参加体験型研修の進行役をつとめている。2012年より拠点を東京から淡路島に移し、国生み伝説のある島から日本中に出かける日々を送っている。著書に「ファシリテーションを学校に!〜深い学びを促進する〜」 https://amzn.to/2Oj2vdQ などがある。
岡田拓也さん(株式会社ande代表)
1988年、兵庫県豊岡市生まれ。いなかと都会を行ったり来たりしながら、ビジョン起点での仕掛けづくりを行う。2015年より、全国各地のまちづくり事業に携わり、まちづくりと地方移住とに関するメディアを立ち上げ、運営。全国100人以上のキーパーソンにインタビューを行う。2017年に起業し、複数拠点(宮崎・東京・高知・大阪・山梨)で暮らし、働く。人文知の社会実装がテーマ。