第7回「何やりたいの」は呪いの言葉

 今年の3月に突然行われた『「いなかパイプが求める「いなか求人」~ない人って何!~トークライブ」。いなかパイプとも関わりの深いおふたり(青木将幸さん、岡田拓也さん)とササクラレオで話をしました。テーマは「ない人」について。

 

▼YouTube動画はこちらからどうぞ。

 

 やりたいことは9割9分勘違い。だから、立ち止まって自分の中を探すんじゃなくて、動きながら試してみたらいいんじゃない?という提案。やりたいことをやる、という他にも、好きなことをやる、この人と働きたいからやる、などいろんな動き方があるよね、うんうん、とうなずく最終回でした。

 

第7回 「何やりたいの」は呪いの言葉

 

岡田:大きい文脈で考えると、人生100年時代って言われるようになり、僕らもきっと100歳くらいまで生きるじゃないですか。やっぱり今までの働き方のイメージや働き方自体が変わらざるを得ない。学校を出てそこからまだ80年ぐらいある。その80年を同じ場所で過ごすとか、同じ仕事をするのは非現実的。

 中山間地域と言われる田舎から高知市のような都市部や、東京みたいな大都市があって。自分はどういうところが合うだろうと体験しながら考えられるといい。日本ではあまりメジャーじゃないけど、高校や大学を卒業して、少しモラトリアムの期間があって、旅をしたりする中で、自分は何をしたいんだろうと考えて就職を決める人たちも一部いる。そういう期間が学業から一旦離れたタイミングであり、30歳を超えたタイミングであり、50歳のタイミングであり、というような人生を描けるともっといいと思う。

 20代の頃はバリバリ働いて東京大好き!という人も、30、40歳になって、この情報量と密度はツライな、となったときに東京のやり方しか知らないと逆に大変だと思う。だから20代のうちに、四万十での29泊30日みたいなことを経験しておくと、あの頃の感覚を思い出せる。そういうところにいけるといいですよね。

 

レオ:そういう野望はあるんですー!!全国12ヶ所に寝泊りするところを作って、その周りに仕事をする場所を作ります。そして12人の人が1ヶ月交代で働くんです。3年くらいやったらいいのかな。今年も来たね、また宜しく!みたいな関係性が出来て、そういう自分の故郷が12ヶ所あり、その中から自分に合った場所を見つけてのめり込んでいくということができれば面白いと考えている。

 今も全国から問い合わせがある。さらに日本だけじゃなく、アメリカや世界の田舎でも働けるということが実現できればいい。それを実現するためには寝泊りするところさえあれば出来るな、ということが見えてきて今その寝泊りできるところを探し中。

 

ない人

 

マーキー:それいいじゃん。ここで募集したら?このプロジェクトの構想に共感する人って。

 

レオ:12ヶ所も働かなくてそこだけで良い、とか、3ヶ所で良い、とか。そうやって選べて働いてみることが出来る。やりたいことがわかりません、という人もやってみれば好き嫌いが見えてくるんじゃないかな。そんな仕組みをつくりたい。多拠点移住者。

 

岡田:そもそも「君は何やりたいの?」は呪いの言葉だと思うんですよね。

 

岡田さん

 

レオ:それを言ったらダメと言われたことがあります。追い詰められる、と。

 

岡田:雇う側のいやらしい目線が見える。「何がやりたいの?」という問いかけは、内側に入ってくる、それでどんどん内省する、でも、そんなことで見えるはずがない。やりたいことなんて9割9分くらい勘違いだと思うんですよ。「僕はこれがやりたいんだ」と言えるのはほとんど勘違い。自覚的に勘違いすることはできないから、やりたいことがないなら、やりたいことが見つかるまでうちで働きなよ、という言い方で使われがち。「何がやりたいの?」は質問する側が優位に立つワードだと思っていて、危険だし嫌だなって。

 

レオ:なるほどー。どういう風に言えば良いですか?

 

岡田:選択肢はあるよって。動きながら考えることを説いていく方が大事だと思うんですよ。内省を説明したりしないほうがいい。立ち止まって自分の中になにがあるのかをゆっくり考える、ということではない気がする。「ない」と思い込んじゃう人はそういう環境にいる人だと思うんですよ。「何が出来るの?」って聞かれて「これが出来ます!」って言える人って、これも勘違いじゃないですか。例えば「デザインできます」と言っても、あの人に比べたらどうなの?という話になる。

 

レオ:でも「できます」と言わないと雇ってもらえない世の中になってる。私できますって嘘でもつかないと入れない。

 

岡田:そうそう。そしたらどんどん自分を追い詰める。あれは本当に良くない。入り口は好きのほうが良いと思う。デザイン好きです。デザイン好きだからできます。

 

レオ:「何が好き?」と聞けばいいのか。

 

岡田:そのほうが良い。好きは本当、好きはウソつけない。好きじゃないと乗らない。でも「得意です」は誤魔化せる。フェイクできちゃう。だから「ない人」から始めるのは良いと思います。「ない」からこそ「ある」がみつかる。

 

マーキー:そうだよね。やればどんどん覚えるしね。3つ聞くことがある。好きなこと、得意なこと、これは一応聞くんだよね。やっぱり得意なことと好きなことは違うと思っていて。あとは、これから上手になりたいと思うこと。

 

マーキー

 

岡田:それいいですね。「ない人」で始めて、これが好きかも、くらいの入り口。もしすごくいい人に会ったらこの人と一緒に働きたいになって、気持ちが一気にパンとあがる。何をしたいかよりも誰としたいかの方が重要だからそっちを考えた方が良い。何をしたいかって、さっきの「何をしたいの?」という問いと一緒で疑問にした瞬間に立ち止まってしまう。だけどこの人と一緒にいたい、一緒に仕事したい、になると仕事内容じゃなくて頑張れる。そっちだろうと最近思うんですよね。

 どこで誰と一緒にいたいのか、が働くとか暮らすのベースになっていけば。ちょっと前までは、田舎の給料だといわゆるステレオタイプ的な幸せが得られないから東京に出ようとなってた。今はほぼどこでもネットが使えて、パソコンもある。そこまでお金が大事な要素じゃなくなりつつある、まだ移行期ですけどね。

 そんな中で大事なことは、どこでいくら稼ぐかというよりも、どこで誰と一緒にいるかというのをベースに、その暮らしを実現するための稼ぎ方というか、お金がどのくらい必要でどんな風に暮らしていくのがいいだろうって考えるのが一番いい。

 

レオ:この「ない人」をどう見つけていくかですよ。

 

岡田:「ない人」って言いやすい世の中にすればいい。「何者かである」を求められる世の中で、何者であるかをこじらせると、あの人の言っていることは正しいになる。それが盲信になって「僕はあの人と同じことを言っているから同じなんだ」と、どんどん自己像が歪んでいっちゃう。もっと「ない」ということをポジティブに当たり前にしたい。

 

レオ:そうなんです。

 

マーキー:「ない」のは価値だからね。

 

レオ:「ない」ことが「ある」になるんですよ。ではそろそろこのへんで。今日はありがとうございました。

 

(おわり)

 

ない人オンライン

ゲストプロフィール

青木将幸さん( 青木将幸ファシリテーター事務所 ) http://www.aokiworks.net/

 1976年生まれ。熊野出身。環境NGO・A SEED JAPANに関わる傍ら「それぞれの持ち味が発揮される組織づくり」に関心をよせる。95年よりNPO向けの組織運営トレーニングの開発とファシリテーションに関わる。企画会社ワークショップ・ミューで修行期を過ごした後、2003年に青木将幸ファシリテーター事務所を設立。以来、毎年100回ほどのペースで会議・ワークショップ・参加体験型研修の進行役をつとめている。2012年より拠点を東京から淡路島に移し、国生み伝説のある島から日本中に出かける日々を送っている。著書に「ファシリテーションを学校に!〜深い学びを促進する〜」 https://amzn.to/2Oj2vdQ などがある。

岡田拓也さん(株式会社ande代表)

 1988年、兵庫県豊岡市生まれ。いなかと都会を行ったり来たりしながら、ビジョン起点での仕掛けづくりを行う。2015年より、全国各地のまちづくり事業に携わり、まちづくりと地方移住とに関するメディアを立ち上げ、運営。全国100人以上のキーパーソンにインタビューを行う。2017年に起業し、複数拠点(宮崎・東京・高知・大阪・山梨)で暮らし、働く。人文知の社会実装がテーマ。

 

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