勝手に雑草ブーケお届けします
- 執筆者 上野仁美
- 所 属Nurse and Craft 合同会社
2021/04/21
もっとリアルを伝えたい
いなかで暮らすようになって、いつも自然が身近にあるのが当たり前。
「ツバメがやってきた」
「レモンの花のいい香りがする頃になったな」
「今日は海が霞んでるな」
と日々自然の変化を感じることができます。そして四季を感じながら道草をすることが私の楽しみになっています。
桜越しに好きな海を眺めれるこの場所はお気に入りです。
そんな私は普段、訪問看護という仕事をしています。体調管理や生活のお世話が必要な方のお宅へ伺っています。
訪問する方の中には、足腰が悪く外へ出ることが難しい方がいらっしゃいます。常に家の中での暮らしでは、外の様子が中々分かりません。
そこで私は、なんとかして今の家の周囲の様子を伝えたいと思い、まずは普段道草しながら撮った写真を、一緒に見ていました。でも、もっとリアルを伝えたいというところから、行く途中につんだ草花をある日、訪問先のおばあちゃんにプレゼントしました。すると、
「あら、かわいいね。これは、何ていう名前だったかしら。」
「どこで摘んできたの?」
などと会話が弾み、喜んでくださいました。
そこからこのおばあちゃんに訪問する毎週木曜日には、勝手に雑草を摘んで持って行くことが習慣になりました。これが「雑草ブーケ」の始まりでした。
梅雨の雑草ブーケ
お気に入りのお庭を見るために
おばあちゃんのお宅の庭は立派な庭木がたくさんありますが、ご主人が亡くなり、ご本人も高齢で手入れをすることが難しくなり、庭は草で生い茂っていました。訪問が始まった頃、庭が見える縁側もカーテンが閉ざされたままでした。これは、おばあちゃんがそこまで歩いて行くことが難しいという問題もありました。
そんなある日、植木屋さんが登場。剪定と草刈りが進み、みるみるとお庭が綺麗になりました。せっかく庭が綺麗になったので、
「外に見に行ってみましょう」
と、一緒に重い腰を上げ、歩行を見守りながら庭に出てみました。すると、
「うわー綺麗になった」
「この木はね、若い時に・・・」
と色々な思い出話をお聴きすることができました。
こんなお気に入りの庭を訪問の時だけしか見られないのは残念、いつもカーテンを開けて庭を眺めるような暮らしをして欲しいと思い、ケアマネージャーと呼ばれるサービスを調整する担当者に相談しました。
そして、カーテンまでたどり着けるよう、手すりを導入することになり、おばあちゃんは歩いて縁側まで行けるようになりました。
気候がいい時に一緒にお散歩します。
花のある暮らしが日常に
このおばあちゃんは、お花も好きでたくさんの花が庭にありました。庭の花をもっと近くで眺められたらいいなぁというところから、また私のお節介の始まりです。
花を切って、持ち帰り、お部屋でも楽しめるように花瓶に生けて花のある暮らしを楽しんでいただくようにしました。
ちょっとしたことで花のある暮らしに。栄養ドリンクの空き瓶が雑草ブーケにはちょうどいいサイズ感です。
ある時は、玄関先のお茶の花が見頃になっていたので、
「見に行きましょう」
と連れ出して、一緒に花を眺めました。そして玄関先のポーチでお茶の花を片目に体操をしました。
家の中より、外ですることの方が何倍もこの方にとっては気持ちが良く、前向きに取り組めるのではないかと思います。
楽しく暮らしながら、筋力を維持できるようにするために、外に少しでも出るようにし、色々な声かけをしながら訪問看護という仕事に携わっています。
雑草スポット
職場からこのおばちゃんの行く道中約400mの間で雑草スポットがあり、そこから今日の一押しを見つけて、採っています。最近暖かくなったことにより浮上した問題点が2つあります。
1つ目が、大発生しているアブラムシ。茎や葉っぱがブツブツしてなんだかおかしいなと思ったら、緑色をした奴らが潜んでいます。ある日、気づかず持って行ったことがありました。次にお会いした時に花瓶が珍しく空になっていて、どうしたんだろう、いつもなら萎びたまま雑草があるのにと思っていたら、
「虫がついてて、気持ち悪くって捨てました。虫がついてないかよく見て持って来てくださいね」
と言われたことがありました。
二つ目の問題が、草刈りです。本来なら、草刈り後は景観がよくなり気持ちよくなったなと喜ばしいことなんですが、雑草ブーケをするには雑草スポットが消えてしまうことになるため、ちょっと残念です。ですが、今はぐんぐんと草は成長盛り。またすぐに生えてきますし、また、ちょっと季節が進むだけで生えている草花も変わってくるので、1週間ごとの変化が私の楽しみでもあります。
春の雑草ブーケ
お弁当にもついてます
以前紹介した、宅配弁当のお手伝いも変わらず続けています。水曜日の「お弁当屋さん」として配達しています。
私が運ぶ水曜日のお弁当にはおまけとして、雑草をつけ始めました。こっそり足跡のように残すことをひっそり楽しんでいます。お客さんからは、
「あれ、いつもは付いてないんじゃね。花をつけてるのは上野さん?」
と聞かれるようになりました。また、つい最近お弁当にクローバーをつけた時は、
「わぁ、かわいいですね。これも食べられるんですか」
と聞かれることもありました。さすがに食べられませんが、こうやって会話のきっかけになることがとても嬉しかったです。
水曜日の雑草のおまけも楽しみながら続けていこうと思います。
お花見したくなるようなお弁当になったらいいなという願いを込めて。