尾道散歩日誌 プロローグ
- 執筆者 中尾早希
- 所 属フリー
2021/09/07
観光地・移住地としてじわじわ人気を集めている尾道。人気のお店や景色のいい場所、お得な物件など、まちに滞在するための“有用性の高い情報”を見つけ出すのが簡単になってきたように思います。
スマホ(情報)を片手にまちを巡ると、目的地に迷うことなく辿り着けるので便利なのかもしれません。行きたいところを制覇できる可能性も高くなるし、リサーチ通りの景色や食事はあなたの欲求を満たしてくれるかもしれません。
一方で、予定通りに町を歩くというのは“予想を超える大きな感動”を失っているのではないかとも思えるのです。それどころか、“目下に溢れている多くの小さな感動”さえも見落としてしまっているのではないでしょうか。
子供の頃、「白線だけを踏んで歩く」というルールで家に帰ろうとしたことがありました。その時だけは毎日通っている通学路がデスロードのように感じていました。
舗装された緑色の歩道や黒いアスファルトはまるで地獄。ドロドロのお粥みたいな、落ちてしまったら進むのが難しい沼のようなイメージです。
家路までの最後の最後、車の通らないような細い道にさしかかると、そこに白線はありませんでした。
帰宅困難に陥った私は、追加で「白線以外を通る場合は息を止め、泳ぐようにして歩く」というルールを設定しました。そして無事に帰宅することができました。
いつもは徒歩10分ほどで移動できる道のりに、30分以上もかかりました。
このときように、目の前に与えられた景色(情報)と自分の感覚やルールを頼りに街を歩いてみたら、見慣れたいつもの道が全然違ったものに感じるのではないでしょうか。
目的地に向かって一直線に歩く時には気づくことのできなかった“小さな感動”も、たくさん見つけられるような気がしてきます。(アスファルトが沼に感じる魔法にかかったように。)
『尾道散歩日誌』では、宛てもなく(時にマイルールをつくり)尾道散歩をした私が、些細な魅力を発見し、コツコツと書き綴っていくシリーズです。
───これは情報ですらない。
───でも目を通しておくともっと街を楽しめる。
そんなことを読んでくださるあなたと共有していきます。言わば、日常の中に潜むささやかな感動を見つけるためのヒント集だと思ってください。尾道に滞在するときの参考に。また、あなたの街を同じように歩いてみるための手引きになると幸いです。
最後に。
「いなか」は本当に“なにもない”のでしょうか。
まだ気づいていないだけで、なんだってあるような気がしています。
小さな感動も、大きな魅力も、豊かなひとときも。
素直な気持ちに従って、観察しながら街を歩きたい!!!
写真と文 / 中尾早希
宛てもない旅、映画館で映画を観ること、いい感じの石を拾うことなどが好き。
肩書きは特になく、コンセプトを考えたり、イベント・ワークショップの企画運営、 商品開発、広報活動(写真を撮ったり文章を書いたり)などを生業としています。
instagram : https://www.instagram.com/so_sakinakao/