パイプウェブ会員インタビュー #1 小林美代子さん ~豊かな地球に戻したい
- 執筆者 小川知香
- 所 属一般社団法人いなかパイプ
2022/08/15
こんにちは。いなかパイプの小川です。
いなかパイプでは、「パイプウェブ会員」というコミュニティを作り、各地のいなかで暮らす人たちにいなかマガジンを書いてもらっています。また、月に1度、オンラインでの”キカクカイギ”と称して交流の場も持っています。
こうやってメンバーのみなさんと交流してみると、みなさん本当に人としても、暮らし方も、お仕事もバラエティに富んでいて面白いです。そんなメンバーのみなさんの魅力を今よりも深くお伝えできたらと思い、インタビュー記事をシリーズ化してみることにしました。
どんなメンバーがいるのか、興味を持って読んでもらえたら嬉しいです。
メンバーインタビュー#1 ~香川県の男木島で暮らす小林美代子さん
第1回目は、瀬戸内海に浮かぶ男木島(おぎじま)で暮らしている小林美代子さんをご紹介します。
男木島は香川県の高松港からフェリーに乗って約40分のところにある、面積1.34 ㎢の島です。ちなみに、隣には女木島(めぎじま)という名前の島もあります。
美代子さんは、こちらの男木島で町並み保存の活動などをされています。そんな美代子さんに、なぜ男木島で暮らしているのか、なぜ町並み保存の活動をしているのか、などを聞いてみました!
小林美代子さん
男木島ではどのような暮らしをされているのでしょうか?
NPOの町並み保存の活動、石垣修繕、みんなのお庭という活動や里山整備、植樹など色々していますが、どれも「昔の豊かな地球に戻したい」という思いに繋がる活動としてやっています。
また、「ドリマの上」という、地球を豊かにする方法を伝える小さな学校のような、学びたい人を受け入れることもやっています。
どちらにしても、地球を豊かにすること、環境に負荷をかけずに生活をする手段を伝える活動です。
なぜそのような活動をされているのでしょうか?
きっかけは、3~5歳くらいの時の記憶なんですが、富山の薬売りが家に来ました。「熊の胆(くまのい)」というものを持ってきていて、
「胃を治すには胃を食べるんだ」
と思った記憶があります。
※熊の胆(くまのい)…熊の胆のうを干した漢方で、胃や消化器系に効くと言われています。
そこからなんとなく、自然なものを食べて身体を治すのだな、ということをずっと考えていました。
この考えは、自然が汚れると自分たちの体も汚れ、病気になるという考えに繋がります。
「汚染化学物質のない豊かな海に戻したい」
という思いの原点にある体験です。
それから小学生になって、公害について学んだときに公害の被害で苦しむ写真を見て衝撃を受け、
「私は加害者にも被害者にも絶対にならない!」
と思った記憶があります。
ですが、生まれも育ちも東京で、都会では環境に負荷のかからない、安全なものに出会う機会が少ないなと感じており、なんとなく、もっと自然の多い田舎に住みたいなという思いはありました。
そして25歳のとき、旅行も兼ねて香川県の教員採用試験を受け、そのまま香川県に移り住みました。
それから16年ほど前に、畑をしようと思って男木島に来ました。
さらに7年位前に、島の人に家を買ってほしい、と言われ住み始めました。そこから島をよく見てみると町並みがボロボロだということに気が付きました。
町並み保存と豊かな地球に戻すということはどのように繋がっているのでしょうか?
昔の家は環境に負荷をかけない造りになっています。
お湯は薪で沸かしたり、そうして出た灰は畑に使ったり。家に使われる木も長持ちだし、家として使えなくなっても焚きつけにしたり、地球に還すことができます。
でも、今の時代にそういう家を新たに作ることは難しいです。古民家、と言っても見た目だけで中身は手を加えられ、ハリボテのものがほとんどです。解体時には地球に還すことができない、化学的なボンドいっぱいのゴミになってしまいます。
NPOでは昔の家を昔のままの形で修繕しています。こういう家を残しておくことで、同じように環境に負荷をかけずに生活したい人を受け入れることができると思っています。
※シェアハウスについてはNPO法人男木島の町並み保存推進協議会HPをご覧ください。
石垣の修繕では 石垣を使うことの意味を知っていただくことが目的です。 それはどういうことかと言うと、今、川の護岸工事は一般的にコンクリートで進んでいますが、コンクリートは化学物質を排出します。一方で石は自然のもので、長持ちもするため、環境に負荷をかけません。
※石垣については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
「みんなのお庭づくり」は、民家が崩れて、草がぼうぼうになっているところを整備する活動です。島をきれいに保つことに繋がります。
こういった色んなことが巡り巡って、町並み保存の活動は「地球を豊かにする」ことと繋がっていると思っています。
修繕中の石垣。
私たちが排出する お水 が 魚介類を 苦しめるとしたら 小学校5年生のとき目にした公害 に苦しむ人々の姿と重なります。人が苦しむのも辛いし 動植物が苦しむのも辛い。
汚染された動植物を食べる人間もいつかは苦しむことになります 。被害者にも加害者にも なりたくない 、その気持ちでこれからも 昔のような豊かな 瀬戸内海 に少しでも近づけるよう取り組んでいきます。
いなかマガジンも書いてくれていますが、発信することで何を伝えていきたいですか?
こういうことに共感して、一緒に取り組んでくれる人に来てほしいと思っています。
とにかく、思いは「豊かな地球に戻したい」ということひとつで、私自身の生活もそこに統一しています。でも、瀬戸内海をきれいにすること、1人ではできません。
たとえば、以前いなかマガジンにも書きましたが、男木島には下水処理がありません。なので、洗剤は界面活性剤が海に流れてしまいます。
これは有機物と固く結びついて、自然の力では分解することができずにヘドロになって堆積してしまいます。ヘドロ臭がしたり、近年では男木島の海でもフジ貝が全く見られなくなってしまったり、身に染みて影響を感じます。
漁師さんの
「海はからっぽになってしまった」
という言葉を聞くと、海は広いのでみんなで足並みをそろえて行動していかなければいけないと思いました。そのためにも、同じ想いを持った人たちと繋がって取り組んでいけたら、と思っています。仲間が欲しいです。
まずは、瀬戸内海を囲む県の人たちに海の現状を知ってもらいたいです。
インタビュー後記
いかがでしたでしょうか。
環境に負荷をかけない生活をしたい、という気持ちはあっても、生活の便利さなどから、実際に取り組むことが難しいこともあります。ですが、美代子さんの住んでいる男木島では家を直し住める場所を用意していたり、学ぶ機会も用意されてます。
まずは、このような取り組みを学んでみる、体験してみる、というところから始めてみてはいかがでしょうか。
いきなり移住とはいかなくても、これからの生き方として、同じような方向を目指してみたい方は、ぜひ一度、男木島を訪れてみてください。
美代子さんの取組みについて、詳しく知りたい、男木島で体験をしてみたい、という方はぜひ美代子さんの活動されるNPOや、いなかパイプへでも構いませんのでご連絡ください。
また、NPOでの取り組みなどについては、美代子さん自身もいなかマガジンで書いてくれていますので、もしよければそちらも合わせて読んでみてください。
私も、美代子さんへのインタビューを通じて、まずは今あるものを大事にすることから始め、自分なりに地球にやさしい暮らしについて考えていけたらと思いました。