帝王切開〜切腹〜
前回は帝王切開の手順や痛さについて紹介しましたが、今回はいよいよメインディッシュ、お腹をきります!
麻酔が鎖骨まで効いたら、猛スピードでお腹を切られていきます。ここからは麻酔がきれないように時間勝負なんでしょう。必殺料理人のように手際良く私を捌く姿はまさに神業。痛みはもちろんまったく感じないのですが、おへそから下を縦に真っすぐサーーッと切られる感触は伝わりました。それは例えるならプリンにカッターで切れ目を入れるような滑らかさ。そして切り開かれたであろう右側と左側の皮膚をグッと押さえ両側に開けている感覚も伝わります。
私はこの時、三島由紀夫の「憂国」を思い出しながら、自分が半分死んでいることを味わっていたように思います。憂国は切腹シーンを克明に描写しているので、帝王切開前にぜひ読んで欲しい一冊です。
気づけば手術室にラジオが流れていました。リクスト曲はCardigansの「Carnival」。中学生の時によく聞いていたオシャレな曲だったので、鼻歌まじりで歌っていると、「はい、元気な男の子ですー!!」と、目の前に我が子がヒョイと出現。メスを入れてからものの5分で誕生です。唐突すぎて「あ! は!? え? か、かわいい…」 発した言葉はこれだけだったと思います。とにかく産んだのが卵じゃなくて安心しました。
余談ですが、母が私を出産した時は土曜日の夜8時で、分娩室のテレビに「ドリフ大爆笑」が流れていたそうです。そのせいか私は今もそんな感じの人生を歩んでいるように思います。それに比べて我が子は「come on and love me now〜」とオシャレな洋楽! これは将来が楽しみです。
それからオシャベリしながらの縫合が15分。手術室にいたのはトータルで40分程度でした。とにかく早いっ!
日赤の平野先生は、腕は確かなうえ手術が早いことでも有名なので、高齢出産などで総合病院を選ばれる方、あるいは子宮筋腫や子宮ガン、合併症などの可能性がある方は一度診察されると良いかもしれません。ただ、総合病院なのでとにかく忙しく、1人ひとりにそんなにかまってくれませんのでそこは割り切りましょう。
ちなみに、私はお腹を縦に切ったのですが、縦か横かどちらになるかは施設や医師の考え方、ママや赤ちゃんの状況、緊急度によって選択されますので事前に確認しておきましょう。一般的には横切りが多いようですが、私は手術時間が短く痛みも少ないといわれる縦切りをチョイスしました(筋肉が縦にはしっているので回復しやすいというメリットが)。横切りは切開の行程が一つ増えるらしく手術の時間が縦に比べてかかるそうです。
また、日赤では縫合に使う糸は溶けてなくなるタイプを使用してくれるので抜糸がありませんでした。抜糸も痛いので、病院を選ぶ時に抜糸の方法まで調べておくのがよろしいかと思います。
手術室から出てくる私。「気持ちよかった〜」を連発
入院室に戻った後も、麻酔が気持ちよすぎて最高の気分でした。持病の腰痛も消えさり、まるで温泉につかっているかのような心地よさ。しかも麻酔がきれてきたら痛み止めの座薬を入れてくれるので、気持ち良さがさらに続行〜(麻酔や痛み止めが効かない人は傷口が痛むらしい)。可愛い赤ちゃんもカンガルー抱っこできて、胎盤も見せてもらって、写真をバシャバシャ撮って、家族で団らんして… と幸せな時間が夢のように流れていきました。
しかーーーし、本当の戦いはこれからだったのです。
「母乳が出ない…」
次回はとってもとっても大事な母乳のお話です。