ゼロからモノを作って出すイロハ 佐護ツシマヤマネコ米から教わった【商品開発】
対馬市 島おこし協働隊の島デザイナーとして対馬に来てから、早6度目の春を迎えようとしています。
島デザイナーに課せられた任務は、島の魅力を発見し外に出すこと。対馬の商品開発。いなかで必要とされる商品開発とは何なのか、右も左もわからず着任したのが2011年の4月でした。(前回記事)
島デザイナーとして最初に作ったパッケージが、【佐護ツシマヤマネコ米】。(リンク:佐護ヤマネコ稲作研究会) 私が着任する前からオファーがあり、お米のパッケージリニューアルを任されたことが最初の仕事でした。
ヤマネコ米5kg 3合袋、佐護ツシマヤマネコ米5kg 3合袋
米の袋を作ってハイおしまい、ではない。まずは佐護ヤマネコ稲作研究会に入りなさいと言われる。人生初の田んぼ道… 米のパッケージを作りにきたのに、最初の作業は泥水に入ること。まじか。
泥んこになって初めての田植え
田んぼに魚道を設置する
カヤネズミの巣
足はここで洗えばいいのだ
そうやって、研究会を通じて田植え、生き物調査、地元の子供たちとの交流、ツシマヤマネコの観察会、稲刈りなどの体験ができたことは、私の対馬暮らしの基盤を作っていきました。ツシマヤマネコという動物の背景を自分の足で知る。商品の背景を知るというのはこういうことだったんだな、と今になって思っています。
田んぼ脇に設置した自動カメラに写るツシマヤマネコ (佐護ヤマネコ稲作研究会 提供)
活動をしながらパッケージの案を出していく。最初は頑張って10個くらいデザイン案を並べたけれど、全て却下。
研究会のメンバーの方が全員一致。気に入ってくれたのは、写真家 川口 誠さんが撮ったりりしいツシマヤマネコの写真を使ったもの。私のデザインいらいないじゃん!へこむわ〜。
佐護ツシマヤマネコ米5kgパッケージ
でも、これこそが「クライアントが欲しているものを探る」という訓練だったのです!そして、写真をどうやって「活かすか」ということ。クライアントの頭の中にある「希望のカタチ」を目の前に出してあげること、それがデザイナーという仕事なのかもしれません。
パッケージリニューアル前
5kgのパッケージを気に入ってもらったのでまたご依頼を頂く。今度はお試しサイズの500gのパッケージ。もともとペットボトルにいれて販売していたのですが、梱包も大変な上に重そうに見えてあまり売れません。そこで、紙の3合袋に変更しようという案があり、その表面をどうしようかという内容のご依頼でした。
米袋を裏にすると、結目のところが猫耳に見える!いや、猫耳にしか見えない!と思って、却下されても提案してみようと消しゴムはんこで想いを再現し提案しました。
消しゴムはんこを押してつくった3合パッケージ
すると、全員のOKをもらえた。やった!米袋をじっと見ていただけでなく「裏面」にしてみたこと。裏面にしたら「猫耳」にみえたこと。それが発見できた時すごく嬉しくて、一人で興奮していました。この発見を研究会の方に早く見せたくてワクワクしながら消しゴムはんこを作った時のことは、島デザイナーとして活動していく中で絶対忘れてはいけない感覚です。
そうして誕生した3合袋でしたが、最初は印刷の予算がなかったので注文が入る度に職場で内職してはんこを押し、袋を製作していました。ヤマネコ3合袋は空港で販売すると瞬く間に売れ、売り上げは約4倍に。売れ行きが好評になって印刷になり、現在のパッケージになりました。
毎晩残業して内職していたのが懐かしい
消しゴムはんこの風合いを再現した印刷バージョン
袋の側面には説明も入った
数が多いと農家さんと一緒になって袋詰めすることも
これが2012年のお話で、ヤマネコ袋の物語はそこで終わると思っていたのですが、去年からじわじわとツシマヤマネコ袋の人気が出てきています。SNSで投稿されたことがキッカケで注目され、注文も増え、長崎県が主催するふるさと割のキャンペーン時ではそれまでの1年の売り上げを約1ヶ月で更新してしまうほどでした。
消しゴムはんこのツシマヤマネコをグッズにしてほしいという声もあり、やっとのことでツシマヤマネコグッズの販売までたどり着きました。2月22日よりMITの通販サイトにて販売を開始しています。どうぞよろしくお願いいたします!
MIT通販サイト『サスティナブルショップミット』
お得なセットもあります!
商品開発ってどういうものなのだろう。商品開発をする、商品開発をしているといった短期間の仕事ではなく、一生をかけてご縁のあるようなそういう商品と出会うことがあります。佐護ツシマヤマネコ米が教えてくれたのは「商品開発って人生そのものだよ」ということだったのかもしれません。