高校生が考えたアイディアが町の目玉に!!!
2016/05/22
- 執筆者 荒海正人
- 所 属西会津町地域おこし協力隊
いま福島県西会津町で話題となっているお土産スイーツがあります。地元の西会津高校生のアイディアで生まれたスイーツブランド「フッフッフッスイーツ」の第一弾「車麩ラスク」です。地元の名産でもある車麩を使用したバターシュガー風味のラスクです。
カリッとした食感と、くどくない甘さが売りの新商品です。この車麩ラスクを販売している道の駅よりっせと、製造元の上野菓子店では、販売開始とともに多くのお客さんに購入していただき毎日品薄状態が続いています。
そんな車麩ラスクですが、その誕生は、地元の高校生の一つアイディアから生まれました。
福島県立西会津高校には、「西高魅力発信隊」と呼ばれるグループがあります。生徒の中から有志で集められた総勢10人のグループです。
町の魅力を掘り出し発信していくことを目的とし、それらを達成するための作法であるイノベーション教育(=新しいアイディアにより人々の考えや行動に変化を起こすための教育)を学びながら、地域住民や業者の方たちと連携し活動を行っています。
その作法を教えるのが、講師の小川悠さん(i.club代表)。高校生が地域に愛着や誇りを持つきっかけづくりとして、イノベーション教育を教えています。
他にも町役場や地域のデザイナー、地域おこし協力隊、地元の業者など多くの方々の協力のもと活動が支えられています。
イノベーションを生み出す作法として以下のことを実践しています。
①地域の「いいね!」探し
②起こしたい未来を考える
③類似思考で考える
④試してみる
⑤場面を考える
これら5つの作法をもとにした活動が行われています。
①地域の「いいね!」探しは、地域の中でないもの探しをするのではなく、「いいね!」と思えるものを探し出す作業です。
活動の中では、地元の農家さん観光交流協会の方から話を聞いたり、道の駅や地元のお菓子屋さんに見学に行ってインタビューを行い地域の魅力を再発見しました。
②起こしたい未来を考えるでは、「いいね!」探しで見つけたものの起こしたい未来を考えてみる作業です。
活動では、西会津町の名産の車麩にスポットをあてて考えました。車麩はかつて食卓によく並んでいたり、お土産品として買われたり、身近な存在でした。それが、食文化の多様性によって今日では、冠婚葬祭や給食でしか食べられないという現状を知りました。その現状を知った高校生は、再び車麩が食卓に並び、若い人たちも食べられるという起こしたい未来を考え出しました。
③類似思考で考えるとは、同じテーマの中から数多くのアイディアをだし、掛け合わせるために重要なポイントとなります。
活動では、若い人にも車麩を親しんでもらえるように車麩を使ったスイーツにしたらどうかという意見が出ました。そこからたくさんの意見をポストイットに書きながら掛け合わせアイディアを磨き上げていきました。
そして、磨き上げたアイディアを④試しました。家庭科室で試作を作ったり、地域の業者の方にアドバイスをいただいたりしてアイディアを形にする作業を行います。実際に試してみることで見えなかった課題や特徴などを見つけることができます。
試作づくり
最後に⑤場面を考えることをします。磨き抜かれたアイディアが、形になる中で、起こしたい未来に近づいているのかを確認します。
アイディア発想や試作制作に夢中になってしまうと、つい当初考えた起こしたい未来から逸脱してしまうことがあります。しっかりと起こしたい未来の全体像をとらえながら進めることが重要です。
このような過程を経て生み出されたアイディアがフッフッフッスイーツブランド第一弾「車麩ラスク」です。
ちなみに、フッフッフッスイーツブランドとは、西高魅力発信隊が立ち上げたスイーツブランドで、思わずフッフッフッと笑みがこぼれてしうスイーツと言う意味が込められています。
このアイディアを地元の業者さんである丸十製麩さん、上野菓子店さん、道の駅よりっせさんの協力のもと製造・販売を行えるまでに仕上げました。
上野さん(上野菓子店)
田崎さん(丸十製麩)
アイディアを商品化するにあたっても車麩の厚さや焼き時間、パッケージの性質など多くの課題を一つ一つ乗り越えて完成にまでこぎつけました。発売の数日前まで練りに練った製品は、誰もがフッフッフッと笑みがこぼれてしまうスイーツとなりました。
そして迎えた2月22日(フッフッフッの日)販売開始の日。道の駅よりっせと上野菓子店に多くのお客さんがお越しいただき購入していただきました。その後、多くのメディアにも取り上げられ、イベント等でも販売され今では毎日売り切れに状態になる程の人気商品となっています。お買い求めされる際には、お早めに買いに行かれるか、予約されることをお勧めいたします。
この西高魅力発信隊は西会津高校の魅力として今後も継続されていきます。
地元について考え、アイディアを出し、商品化して販売する。これらの一連の過程で高校生たちは大きく成長し続けています。「日常からいいね!探しをするようになった」「自分の意見を持てるようになった」「人前で堂々と発表できるようになった」など活動を通じて考えることや行動することの重要性を知ることができたと考えています。
また、高校生だけではなく地域の業者さんの意識も徐々に変化してきています。試行錯誤を繰り返し、高いクオリティを目指すことで本来の生業を考えるようになりました。高校生のアイディアが地域経済の貢献にもつながり始めています。
高校生が考えて議論して磨き上げたアイディアが、一つの歯車となり動き始めました。