島と山の2拠点生活〜しまぐらし1年生、宅配弁当を始めてみたってよ
- 執筆者 上野仁美
- 所 属Nurse and Craft 合同会社
2020/09/18
配達をやったことある人〜?
宅配弁当と聞くとどんなイメージを持ちますか?Uber Eatsの方が最近ならしっくりくるのかもしれませんが、“いなか”ではありません。
出前や宅配便など自宅に何か届けてもらったことは多くの方があるかもしれませんが、反対に配達した経験があるという方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか。もちろん、私も経験なんてありません。
配達車ごしの瀬戸内海。小回りがきくのでこの車は島には最適!!
お弁当から知り合いになる
私は瀬戸内海に浮かぶ大崎下島(広島県呉市豊町)という島で、7月から宅配弁当のお手伝いをしています。
ずっとやってみたい思いがあったから始めたというより、たまたま島でお弁当の宅配サービスを新しく始めるという声を身近で聞いたから始めてみたというほうが近いかもしれません。
更にその当事者が知人であったことも大きいです。また、以前から自然に地域の方と知り合いになれるツールを模索していたので、今回の話は私にピッタリでした。
島で一番高い一峰寺山から見た眺め。すぐ隣は愛媛県今治市。
島暮らし1年生の配達事情
お弁当を届ける先は、一人暮らしのおじいちゃんやおばあちゃんのお宅、働いている方の職場が主です。
お昼ご飯前の1時間半の間に配達しています。初めて伺うお宅は、まず地図とにらめっこ。島暮らしは新米なので分からないことがまだまだいっぱいです。そのため、どのルートで行き、どこに車を停めるのがいいか、地元のスタッフに教えてもらいながら把握しています。
駐車スペースのあるお宅は数少ないため、空き地に車を置かせてもらってから、歩いてお届けしています。そして敷地が少ない島ならではという感じがするのが、離合できない狭い道。ですが、対向車が来ることはまれなので「今日も車来んかったー!ラッキー!」と思いながら運転しています。
路地を歩きながら、四季の移り変わりを見つけることも楽しみの一つ。
宅配時に運転するのはシルバーの軽バン。会社からは
「全然ぶつけても大丈夫じゃけんね」
と言っていただいているので、身構えることなく運転させてもらっています。
自分の車では、通りたくないような狭い所でも、ちょっと挑戦気味に運転。右後ろの方にある傷や凹みは私の仕業です(爆) 運転が不慣れでも、集落から次の集落までの間の海沿いドライブ、これが最高なんです。
日々変わる海の色やプカプカ浮かぶ船、釣りを楽しんでいる人やすぐ反対の山側では柑橘づくりをされている方、見ていて飽きません。よそ見は禁物ですよ。道草はほどほどにしています(笑)
配達終わりのご褒美は写真撮影タイム。
お弁当やさんという肩書きを手に入れた
お弁当の名前は「ゆたかまち弁当」。ここ豊町でできたものをできるだけ使って、旬の安心したものを届けるとうコンセプトで作られています。作っているのは瀬戸内大好きでIターンされた女性です。
旅好きな方で異国の文化に詳しく、メニューは多彩です。見たことも聞いたこともない料理がよく登場し、
「これは何ですか?」
と聞くことが日常。特徴として、お弁当通信がついていて、毎日この女性がメニューにまつわるエピソードやここ数日の出来事をコラムとして書かれています。
作り手がみえるお弁当になっていて、私が“ゆたかまち弁当”が好きな理由の一つです。
さーて何料理でしょう?答えは、グルジア料理のシュクメルリだそう。
もう一つ好きな理由があります。それは青いエプロンをつけるだけで、“お弁当やさん”になれることです。
この普段とは違う肩書きを持てるこの時間が私の楽しみになっています。配達の回数を重ねるごとに、地域の方との会話がはずむようになってきました。
あるおばあちゃんは、私のもう一つの肩書きのナースということを耳にされたようで、
「ちょっと聞いてみたいんだけど。これは、どうなんですかねぇ?飲んでもいいんでしょうか?」
といったように健康相談を時々されます。
また、別のおばあちゃんは、ある日いつもより足が赤く腫れていたので、お伺いすると
「そうなんですよ。実はここ最近ね・・・」
と様子を話され、受診をお勧めしたこともありました。こんなように宅配弁当がきっかけで定期的にお会いでき、普段の体調の変化に気づくことができています。
以前からこの“会いに行く”在り方が理想的と思っていましたが、実際にやってみて、やっぱりいいなぁと体感しています。日常的にちょっと話すことがお客さんの楽しみにもなっていて、私もとても気持ちがいいです。
ここがお弁当やさんの出発点。
お弁当やさんでいられる日を残したい
そんな楽しいお弁当配達も、残念ながら10月から営業日が短縮されることになりました。私の人件費もカットしたいということも会社から言われ、私の担当は週3回の配達から、1回になりそうです。
地域の方の顔が少しずつ見えてきていたのに、経営的な理由で縮小していく実態が悲しく、なんだかもやっとしています。お弁当屋さんでいられる日が1日でも長く、多くあって欲しいし、その機会をなくしたくないなぁとここ最近考えています。
だったら、そのために、私自身が自分ごととして、やってみるのもいいかなとも考え始めました。お弁当というカタチでなくても、何かしら“食”を通して地域の方と繋がっていたい。「今日はいい天気ですね」って笑いながら日々を過ごすにはどうすればいいのか・・・。
まだまだ模索は続きそうです。この行方はどうなったかは(まだ想像できませんが)季節が変わった頃に報告させてもらいます。
町並み保存地区になっている御手洗。集落によって町の雰囲気もガラッと違うんです。