『くらしのシルエット展』イベントレポ!〜「プロジェクト同志求ム!」のお知らせ
新潟上越からこんにちは、ソーシャルデザイナーでSeikitzza(セイキッツァ)主宰の池田なつ記です!
お待たせしました、前回から続きましての、本題・イベントレポートです!
くらしのシルエット展|GMS「アート町家」プロジェクトvol.0
主催は一般社団法人 雁木のまち再生(昨年の記事のなかで少しご紹介しています)。今回、私・池田なつき(Seikitzza/ソーシャルデザイナー)はキュレーターとして企画・運営を担当させていただきました(ささいな補足ですが、池田なつきが本名で「池田なつ記」はいなかパイプ用のペンネームです。笑)。
イントロダクションにも書かれている通り、雪国の「雁木町家」は越後高田が発祥と言われているのですが(※諸説あるようです)、時代と人々の生活様式の変化につれ、今、現在進行形でどんどんその姿を消していっています。
しかし雁木町家というものはただのハコ(建物)ではなく、気候風土や地域住民〜コミュニティの歴史とともに築かれてきた「生活文化」そのもの。また、1軒1軒は住民個々人の私有財産ですが、ぴったり並んで連なることでその特性を発揮する建築構造なのです。
それが少子高齢化と若い世代の郊外・都市部への流出により、空き町家が増え、取り壊され、今、連なりはどんどん抜け歯状態に・・・。
「雁木町家は、雁木通りは、このまま消滅の一途で良いのだろうか?」
と立ち上がり活動されている人たちがいます。上越高田ではその筆頭の一角が(一社)雁木のまち再生であり、私はその理念に共感を持ってお手伝いしています。
今回、私がキュレーターを務めさせていただくことになったのはそのあたりが発端で、事の経緯は諸々あるのですが、それは今ここでは割愛。
ああだこうだの説明よりも、実際に開催された企画展の様子をどうぞご覧ください。「雁木のまちに暮らす若者たちのまなざし × 明治町家の光と陰」というテーマで開催した、〈体感する写真展〉です。
町家の両脇はお隣の建物と密着しているため、窓がありません。玄関や裏口からはもちろん光も風も入るよう造られていますが、人の背丈よりも雪が積もる冬には、それらもほとんど塞がれてしまいます。
そのため採光のための天窓が必ずあるのですが、この高さ、そして開放感は玄関の外(外観)からは想像のつかないスケール感です。この空間を利用して、梁と2階の部屋に企画展タイトルの垂れ幕(3.2m)を渡しました。
写真は私がお声掛けした5人の方から提供いただき、この町家のなかにそれぞれの展示場所を作って5つのゾーンを作りました。ゾーンごとにアイキャッチとなる1点だけを大判プリント(紙)で掲示し、他はすべて透明フィルムに印刷、掲示。
ただ写真を眺めるだけではなく、古い町家の持つ陰影、部屋ごとに異なる表情が一体となって目に飛び込んでくるよう、あえて透明フィルムをメインの媒体としてチョイスしました。
入口受付で配付する展示ガイドの1ページをあえて白面にし、写真細部をよく見たい場合にはフィルムの背後に白面を差し込むと鮮やかに鑑賞できる、という仕掛けにしました。
5人の写真提供者は5人とも、上越・高田の町家エリアで仕事や生活を営んでいる30代以下の皆さんです。
前述の通り、若い世代は都市部(県外)や、地元であっても郊外の新興住宅地などへ流出する動きが今も絶えず続いており、かつての中心市街地だった高田のまちなかで暮らす若者は今、“少数派” です。
しかし、今回、私が写真提供をお願いした5名の皆さんは自発的な意志をもって、高田のまちで働き、あるいは暮らしている人々。
そんな5人のまなざしを通して、明治から残る町家を会場に、これまで町家と関わりのあった人も・無かった人も、見て、知って、感じてほしい──。願わくば、消えゆかんとしている雁木町家をこれからどうしていくか、同じ地域に暮らす者同士、ぜひ、共に考えてほしい。
会場としてお借りしたこちらの明治町家は、通称「こうじや」。かつてこちらにお住まいだった方が糀店を営んでいらしたことに由来します。町家独特の長い長い通路(通り庭)の奥には、味噌室・糀室が残っています。
住む人がいなくなり空き家となっていたこの家をサルベージしてくださったのは、埼玉から上越へ移住された一級建築士・北折佳司さん。「アートのある歴史まちづくり」をコンセプトに、『雁木・ぱとぺ』という構想を立ち上げておいでです(詳しいご紹介は、また別の機会に)。
(一社)雁木のまち再生の目指すところと方向性を同じくする、地域づくりの“仲間”として、今回の企画展に快くこの町家を貸してくださいました。
開催2週間前には新潟県は新型ウイルス感染症への「特別警報」が発令されるやら、1週間前には台風直撃の予報が入ってくるやらで、ハラハラヒヤヒヤの出来事がそれはもう色々とありました。
・・・が、不安を振り払い準備続行。
蓋を開けてみれば、開催2日前に警報は解除され、台風は大きく太平洋側に進路を変えて直撃を免れ、準備もどうにか間に合い、私の頭の中にしかなかったイメージが100%以上のイメージ通り(!!!)に会場設営が進み、、、
一言でまとめてしまえば「大好評!!」の「大成功!!」に終わりました。ご来場くださった皆様、関係者の皆様、本当に本当にありがとうございました〜〜!(嬉涙)
しかし県の警報は解除されていたとはいえ、まだまだ収束とは言えない感染症禍下、あまり広範囲に「どうぞご来場ください」と元気に呼びかけるわけにもいかず・・・。無事終了を果たした今、ご報告だけは大々的にできる! ということで、前回・今回とこのレポートをお送りしております。
写真提供者のおひとり・吉田恵理さん(左)と。
この『くらしのシルエット展』は(一社)雁木のまち再生の来年度以降の事業展開につなげるため、告知と提案の場=プレ企画という位置づけで「vol.0」として企画されました。私は今回のこのイベントの中身の企画運営について(一社)雁木のまち再生からご依頼いただき、お引き受けした格好です。
人口減少社会において、住宅や店舗・事業所としての空き家活用には限度があります。「住宅や店舗・事業所として使う」=必ずそこに居る「人」が必要、だからです。
今すでに、人間の頭数に対して建物が過剰になっている、だから空き家が問題になっている。それなのに、移住者を呼び込んで住んでもらおう、企業を誘致しよう、という話に終始していては事は解決/改善に向かいません(もちろん移住したいという方がいらっしゃれば、それは諸手を挙げて大歓迎!ですが)。
そしていくら町家の保存と言っても、どんな建物にも寿命があります。今回の会場「こうじや」も、実は住宅とするにはすでに限界を迎えている状態です。写真ではあまり分からないかもしれませんが、木の壁面などは虫食いや風化で穴だらけ、網目のようになっていたりします。
でもこれを、たとえば「町家自体をアート作品にしてしまう」のならどうか?
住むのは無理でも、アート作品=「アート町家」に創り変えるのなら、水回り工事や基礎工事など大掛かりな補修なく、やれることがあるかもしれない。
「アート町家」ならば、常時そこに人がいなくても、時々、スポットのイベントに合わせて公開するなどで保全が可能になるかも・・・。
「アート町家」がひとつの通りに3棟、4棟くらいあれば、それだけで人の回遊が生まれるかも・・・。
そんな発想で、今後は(一社)雁木のまち再生が保有している空き町家などを使い、「アート町家」製作に取り組んでくださるアーティストや、趣旨に賛同いただける事業者さん(建築会社さんや不動産業者さん、あるいはアートギャラリーさんなどなど)を募っていく計画です。雁木町家、雁木通りの持続可能性を追求する雁木のまち再生「アート町家」プロジェクトです。
今この記事を呼んでくださっている読者さんのなかに、「町家」という素材を使って創ってみたい! というアーティストさんがいらっしゃいましたら、ぜひぜひご連絡ください。グループでもOKです。真面目な募集です。
いきなり上越に移住しろ、住め、と言うつもりは全然ありません。アートを通じた、いわゆる“関係人口”に、まずはなっていただけませんか? 上越を気に入ったなら移住大歓迎ですが、これからは多拠点の時代、往還・連携の時代。関わり方は色々あっていいと、個人的には思っています。
「アート町家」プロジェクトについては今後、(一社)雁木のまち再生からも情報(公式)が発信されると思います。ぜひチェックなさってみてください。
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私は告知と提案のお手伝い、プレ企画である今回の企画の無事終了とともに一旦、ひと区切りですが、今後もあれこれと“関係”し続けると思います。そのつもりです。
至らぬ点も多々ありましたが、やれること&やりたいと思ったことなら何でもやってみるSeikittza、そして一方ではソーシャルデザイナーとして、久々の全力投球の『くらしのシルエット展』でした。楽しかったです!
それではまた次回~~!