助けを求める人の光となる
株式会社ビザライ
勝連美香さん
沖縄県宮古島市は面積が204平方km、人口約55,000人の市。飛行機の直行便で東京から約3時間、沖縄本島から45分ほどのところにあります。
海がきれいで何もない離島というイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、病院やスーパー、飲食店などは数多くあります。その中でも、平良という地域が中心街となっていて、仕事の8割~9割がこの地域にあります。30分あれば自転車でもほとんどの用事をすませることができます。
ここで障がい者就労支援や児童発達支援などの福祉事業をしているのが株式会社ビザライです。
「ビザライ」という名前は、Be the lightから来ていて、助けを求める人の希望や光となれるようにという意味です。
ここでは、家族のような長期的な視点から、障がいのある方を手助けし、いずれは自立し自分で生活を営めるように支援しています。
そんなビザライでは、保育士さんや資格を持っていなくても保育士の補助として働く人を募集しています。
障がいのある子とない子を同じ施設で生活させる意味
ビザライの特徴的なところは、障がいのある子とない子が同じ施設で生活しているところです。
施設の名前は「みやくるる」。「みやく」の意味は、「み」は自分、「や」は住んでいる、「く」は場所という意味の宮古島の方言だそうです。
「くるる」という音は、円・縁・繋がりを連想させ、ここでみんなが明るく楽しく生活しているイメージだそう。
利用する方にとって「私たちの場所なんだ!」とか、縁や温かい何かを感じさせてくれる愛される場所・建物であってほしいという願いをこめたそうです。
障がいのある子とない子が同じ空間で過ごせる施設は全国的にもめずらしく、2021年に「県福祉のまちづくり賞バリアフリーの施設設備部門」で「県知事賞」を受賞しました。
社長の勝連聖史さんにお話を伺いました。
「うちでは、保育園の卒業式を障がいのある子もない子も一緒に行うのですが、いろいろな管や機械が体と繋がっている子が来ると保護者はザワザワするんです。でも子どもたちは、たとえ人工呼吸器を使用しているような子でも、お友達として普通に接します。
また落ち着きがなくて長時間椅子に座れないような障がいのある子の保護者の中には、会の間中申し訳なさそうな顔をする方もいるのですが、『それでいいんだよ』ということを伝えたいです。これが本当のインクルーシブなので。
ここで共生社会ができているんだなーと感じたときが一番うれしいですね。ここで育った子たちは、障がいのある方に変な遠慮をせずに普通に接することができると思います。」
※「インクルーシブ」は、「ソーシャル・インクルージョン」(社会的包摂)という言葉から来ており、これは「あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないよう援護し、社会の構成員として包み、支え合う」という社会政策の理念を表します。(出典:ヒューライツ大阪 )
全くの未経験から立ち上げた福祉事業
そんな勝連さんは会社を立ち上げるまでは、福祉とは全く関係のない職場で働いていたそうです。
「この会社を立ち上げたきっかけは、前職で障がい者雇用を始めたことです。前職は不動産会社だったのですが、担当役員として新卒で障がいのある方を採用して職場定着させるようにとの話になったので、まずは特別支援学校に行きましたね。
学校訪問して『この子たちの親は自分の人生の最後の瞬間にも絶対にこの子たちのことを考えて死を迎えるんだろうな・・・死にきれないな・・・』と思いました。
県内では有名な会社にいたので、安定は捨てられんよなーという葛藤があって、子会社で福祉事業をやればいいかなと思ったのですが、代表に『福祉はやらない。これから先は不動産に特化してM&Aとかで会社を大きくする』という話をされたので、『あ、これがやめどきだな』と思ってこの会社を立ち上げました。
今ではいろいろな事業を立ち上げ、開業当初に比べると会社はずいぶん大きくなりましたが、福祉の根っこからはずれることは今も一切やってないです。
障がいを軸にした事業展開の構想図を作って、業界の先輩たちに見せたら全員に不可能だと言われたので、逆に燃えましたね。そうして本気で取り組んだら3年でほとんどの構想を形にすることができました。」
今年でビザライができて10年目。それまでは宮古島には重度障がいのある子どもたちを預かる施設はなく、生活のために仕方なく島を出て行く家族も少なくありませんでした。でも今では頼るところが出来たので、里帰り出産や両親の介護等で重度障がいのあるお子さんを連れて帰ってくることもできるようになりました。
福祉にも必要なサービス精神
「会社が大きくなった理由の1つは、全く異業種からの参入なので業界の常識がなかったことです。
私はホテルで6年間、不動産会社で10年間働いていたので、そこでは当たり前のように行っていた顧客満足とホスピタリティの提供を軸にした事業運営をおこなった結果、利用者が集まりました。
福祉では、利用者に自己決定させると言いながら支援者側の思惑通りに利用者をコントロールしようとする方が少なくありません。ですが私たちの会社では、『利用者と私たちは対等な関係だから彼らをコントロールするのはやめよう』と話してます。
だからうちでは、ビザライで働いている障がい者のことを利用者さんではなくパートさんと呼んでいます。同じ仲間ですよねということで対等に扱うようにしたんですよ。
保育園の子の家族に対しても同じで、私は家族と直接LINEのやりとりをするんです。
子どもがリハビリをやっている風景とかを写真に撮って、『今頑張ってますよー』とLINEで送ります。写真だと様子が伝わりますから。そういう細かいところをしっかりやることがサービスだと思っています。
でも職員によっては、帰りに親御さんに1日の出来事をまとめて話そうとする人もいるんですよ。でも写真の方が伝わるでしょ。
今、一気に保育園に通う子どもたちが増えて、そういうことがおざなりになっています。ですから原点に帰ろうということで、みっちりミーティングをしています。」
「私が今、課題だと思っていることはクレームが少ないことです。ポジティブな要素でクレームが無いならいいのですが、おそらくネガティブな要素だと思っているんです。
言いたいことを言って利用を止められたら困ると思って、お客さんが声をだせていない状態。だから、職員には『お客さんがぼそっとしゃべったこと全部報告して』と言っています。
また、私はこの部署だから他の部署のことは関係ないという職員も多いので、その部署の人ではなく、みんなが株式会社ビザライの一員だということを自覚してもらえるよう伝えています。
うちで求めているのはおせっかいな人です。資格がなくても未経験者でもかまいません。
僕は親から『困っている人を助けなさいよ』と教えられてきたものが福祉だと思っています。そういうことをちゃんとできる人に来てほしいです。」
福祉というと「専門家ではないから」と関わろうとしなかったり、特別なものとして認識してしまったりしていましたが、勝連さんのお話からは他の業界と同じようにサービス精神が大事なのだと気付かされました。
目の前の人が何に困っていて、何をすれば喜んでいるのかを考え、行動することが大事。それは相手が保育園児であろうと保護者であろうと同じなのだと思いました。もちろんスタッフであっても。
固定概念を持たず、楽しそうなことをやってみる
続いて、障がいのある子のための保育園をサポートしている作業福祉士の濱田さんにお話を伺いました。
「元々地元の病院に勤めていて、その後海外を2,3年放浪していました。海外で幼稚園建設のボランティアをしてから子どもに関わる仕事をしたいと思うようになり、この会社に出会いました。
説明会で社長がフラットな世界を作りたいと言っていて、自分もその世界を見たいと思って入社しました。
この仕事に向いている人は、あまり固定概念のない人だと思います。『こんなのはどうかな?』と楽しそうなことをやってみる人がいいと思います。
以前僕は、おもちゃのボーリングをするために、肩が少ししか回らない子に対して、肩が痛いにもかかわらずボールを投げさせて、『できたね』という感じのことをしていたことがありました。なんか違うなと思いながらも、そのやり方を崩せなくて辛かったです。
その後、その子が親指だけで動かせるおもちゃを作って、倒せたときにその子が嬉しそうな顔をして、僕もうれしかったです。
今後はもっと子どもや他のスタッフのことも笑顔にしたいです。あの人たち楽しいことやっているな。私達もやってみようと思ってもらえるように。
人それぞれ固定概念を持っていると思うので、そこを崩して『こんなんでもいいんだ』ということを広めていけば会社全体が創造性の高いサポートができると思っています。そうなったときに障がいのある子とそうでない子が一緒に過ごしているこの施設の意味がでてきてくるのかなあと思います。」
濱田さんの言葉からは、子どもたちのためになることを自らも全力で楽しんでやっているのが伝わってきました。
保育士さんのサポートという形になるので、資格を持ってない方でも実務未経験者でも大丈夫です。もちろん保育士、看護師、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士などの資格保持者は、それを活かした仕事を体験することも可能です。
さらに、農業もしたい!という方は関連会社である「宮原果樹園」の仕事と組み合わせ、週3回保育園、週2回果樹園でというように体験することもできます。
宮原果樹園の記事はこちら
自転車で出社できる距離に社員寮もありますので、自動車免許を持ってない方にもオススメです。
畑ときれいな海が見える宿舎です。
部屋は2部屋
ロフトもあります。
※どの宿舎に入れるかはタイミングや家族の人数などによって変わります。
福祉施設というと身構えてしまう方も多いかもしれませんが、大切なのはおせっかいな精神だと今回の取材で気付かされました。
体験したことがないこと、わからないこともたくさんあると思います。まずは29泊30日間のいなかインターンシップにご参加ください。お待ちしています!