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生産者と消費者のつなぎ役
はちきんの店
店長 岩佐敏代さん
「はちきんの店」の店内をのぞくと季節の野菜や果物、地元のものを使ったと分かる手作りのお弁当やお惣菜、プリンなど加工品もずらりと並び、本当に地域に根付いているお店だなと思いました。
ここは、直売所が今のように一般的ではなかった時代、女性の視点から、農家の良心を売ろうと考えて集まった83人の「はちきん」な女性達がお金を出し合って、建物も借金をして自分達で建てた直売所です。
農産物をお金として見るのではなく、安心・安全で、子供のためを思い、運営する。作り手の良心に恥じないものを提供するため、色々な学習活動を行い、今では、高知市内や東京、大阪へも品物を卸すようにもなりました。
店長の岩佐敏代さんは、勤めて26年目。ずっと「はちきんの店」と共に歩んできました。この岩佐店長に直売所で働くことについて伺いました。
※「はちきん」とは・・・「男勝りの女性」を指す土佐弁。ならびに高知県女性の県民性を表した言葉。
一番忙しいのは朝の出荷
お店に出てくるのは、本当は7時半でいいんですけど、7時半に来てたらもう間に合わないので、
7時ちょっと過ぎに2人出てきて、7時半に1人出てきて、あとの人は8時というふうになります。
7時半から8時半くらいの1時間の間にいいものがありますのでね、
お客さんもそれを知って朝は忙しいです。生産者が入るのと、レジが開くのとが同時です。
生産者がその時間に搬入して、その帰りに別のものを買っていったりするわけです。
それもうちの大事なお客さんになりますので、売れる体制がとれたらすぐ売ります。
レジは2つありますが、1人だけで売るようにして、あとは個人や病院、
学校や保育所の給食を請け負ってますので、その手配をします。
昼の1時半くらいになったら、お店も3人体制になりますので、
ちょこちょこ片付ける準備をします。雨が降ると売れ残りが多いです。
牛乳なんかも売れ残ったり、お天気の日と雨の日で売れ行きが違うんです。
そういうバランスを見たりして、あくる日の商品の量を調整をしています。
あと、高知市内からの連絡もありますね。
- 高知市内にもお店があるんですか?
高知市内にも4店舗あります。
明日、こういう品が残っているからストップしてもらいたいとか、
こんな品が欲しいと連絡が来ますので、掲示板に店ごとにストップの品と欲しい品とを書き上げて、
残品を取りに来た生産者に分かるように連絡するわけです。
野菜は毎日、朝出しに来て夕方取りに来てもらっています。
痛んでいない品は値引きをして1日は置きますけど、
決して3日も4日も置かないようにしています。
- 商品の管理とか、結構難しそうですね。
難しいです(苦笑)
県外に、月、水、金と大阪と東京に野菜を送ってますけど、
契約したら、ある程度よいものを送りたい気持ちと、
県外にばっかりいいものを送って、地元にあまり野菜がないっていうような問題があります。
けど、もう送ると決めたからには向こうにもある程度納得してもらう量を送らないと。
次、今度これを買ってもらいたい。というようなものがあったときに話になりませんのでね。
うちも無理してるので、なす、きゅうりが多いときはこれをとって下さいというような感じで やらんといけません。
- 生産者の方に直接会って、消費者とのつなぎ役として直売所はやりがいのある仕事だろうなぁと思いますね。
そうですね、生産者とコミュニケーションをとっていると、
べつの時に、こういうもの作ったよって、加工品なんか出してくれたり、
教えてくれたりしますのでね、そういうところは大事にしていきたいと思っています。
- はちきんのお店が出来たのはいつ頃?
もう27年前です。昭和61年にお店ができました。
勤め始めて26年目くらいです。1年たった頃に入りましたので。
- すごいですね、このお店の歴史をずっと見てこられた?
最初は本当のパートでしたけど、今では長老です(笑)
お店をやり始めた人は、偉いと思いますね。
ずっと同じ販売スタイルやってきましたので、遅れている部分もあると思います。
でも、逆にこういう古臭いのもいいのかなと思います。 先駆者の方のことを考えるとね。
ローテクでもありながらやるところはやらないといかんのも事実
でも、徐々には変わってきてるんです。
最初は誰が出しているのか分らないような野菜でしたけど、
責任持ってもらわないといかんから、「これに名前いれようや」なカタチから、
最初は名前だけ入れたり、「品物名を入れよう」とかね。徐々には変わってきてます。
最近はバーコードもつけて、レシートも出さんといかんでっていうようになって、レジも入れました。
最初の頃は、商品にラベルを付けて、そのラベルに値段を書いて、
ラベルを外して、そのラベルをまた整理して生産者に返して、
またあくる日そのラベルを付けてきてもらう…みたいなカタチでやってましたけど、
すごい大変(笑)
バケツに100番台、200番台……700番台までラベルが入ってて、
順番に出してって、ぱっぱぱっぱ個人別に分けていくんです。
それを生産者へ返して、またそれを付けて持って来てもらうという様なやり方をしていました。
そのやり方をね、よその直売所の方がバスで見に来てましたね。
そのラベルの前には、伝票を使っていたときがあって、
生産者が朝持ってきたときに、品物の数と伝票の数が合ってるかどうかチェックします。
返すときは、どのくらい残ってるか全部伝票に書いて家に持ち帰って夜伝票計算してましたからね。 大変でしたよ。
それがラベルになって、ああよかった思ってね(笑)
野菜を作るときは生産者、出すときは商売人。にならんといかんと思うんです。
野菜へのバーコードの付け忘れなんかはもう論外だし、荷造りの仕方ね、
折角、上手につくったものでも、きれいに袋に入れていなかったり、
水切りがよくなくて野菜を痛めたり、商品を売るとき、
そういうところは大事だということを分かってもらいたいです。
あとね、りっぱな白菜を作ったとしても、よう使い切らんのですが、
お客さんが買いやすいようにと、小さめの白菜ばっかりつくる人がいました。
それを見て「あぁ、上手やなぁ」と思いました。
このようなことがこれから農業をやる人にいい勉強になるんじゃないかと思います。
消費者の言葉と行動は違う
それと、無消毒の問題もね。
同じ白菜でも、レースのように食べるところがないくらい虫が食ったようなのを出してくる人、
お客さんは口では、無消毒がええとかいいますけど、見たときはやめますから。
多少の虫食いくらいだったら、
虫が食ちゅうくらいのほうがええとか言ってお客さん買って下さいますけど、
私らも最初は、消費者のほうも、考えんといかんでね。て言ってましたけど、
買うときは虫がおったらちょっと怖いので(笑)
やっぱりそれは何年たっても同じことです。ある程度は許されても、
やっぱり商品としていい品を出さんといかんというところはありますね。
生産者もいろんな人がいる。 ストレートにガーンといわないといけない人もいるし、 遠まわしに言わないといけない人もいる。その阿吽(あうん)が難しい。
- 質をあげていく面でも生産者とうまくコミュニケーションしないといけないですね。
そうですね、このレースのような虫食いの白菜は、
『無消毒なのはわかるけんど、お客さんはやっぱりあんまり買わんよ~』みたいなのを、
生産者に伝えてあげることも大事になってきますしね。
ここに入ってからすぐでしたかね、この人の品はちょっと高いなぁ思って、
『もうちょっと安かったら売れるんやけど、50円高いんやないろうか?』みたいな話をしたら、
『もう怖い、もうここへはよう出さん』言われて怒られましたね。
そんなつもりじゃないのに~って(笑)言って失敗したこともあります。
よかれと思っても考えて行動しないと駄目なところも多々あります。
逆に安い値段で売る生産者には、
『売れたら少しは嬉しい思いもせんといかんきね、 それだと楽しみもないろ?』
ていうアドバイスをしたりもします。
-逆にお客さんに対してのアプローチは?
特段これといっては無いです。
おいしいですよと売りたいがために美味しくするように生産者の方にアプローチしていく。
でも、たくあんなんかはスーパーの品と違って、防腐剤なんかも入ってないし、
「昔の田舎漬風のお漬物がありますよ」と言ってますし、お客さんも知ってます。
うちの加工品は、よそと比べてかなりいいと思います。
『加工品、どこっちゃぁに負けてないでね』って言いながらやってますよ(笑)