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いなかインターンシップ

鬼の町に、新たな視点を

株式会社森の三角ぼうし代表取締役松本周作さん

株式会社森の三角ぼうし
代表取締役 松本周作さん

 高さ5メートルもの巨大な鬼が出迎えてくれる、風変わりな道の駅があります。それが愛媛県南西部の鬼北町にある「道の駅森の三角ぼうし」。
 鬼北町は、鬼ケ城山系の北側に位置することから、日本で唯一、「鬼」の名を関した自治体。 “鬼の棲むまち”のキャッチフレーズを持ち、そのため道の駅〈森の三角ぼうし〉にも巨大な鬼・鬼王丸(おにおうまる)が鎮座しているという訳です。

鬼王丸

 ちなみにこの鬼王丸、フィギュアや映画の世界で活躍する造形作家の竹谷隆之氏と、フィギュア制作で世界に名だたる海洋堂とのコラボレーションで生み出されており、鬼王丸に会いに来るファンも多いのだとか。
 そんな鬼の町の道の駅森の三角ぼうしで、インターンシップが始まります。

 道の駅館内でひときわ目を引くのが、鬼王丸の恐ろしい形相の写真に“ゲームは夜八時までって決めたやん! 三角ぼうし行くか?”、“時間割は夜やる言うたやろ? 三角ぼうし行くか?”等のユニークなコピーを添えたポスターやクリアファイル。このポスターのデザインやコピーを手がけたのは、なんと代表取締役の松本さんその人。そんな松本さんにインターンシップについてお話をお伺いしました。

株式会社森の三角ぼうし 松本周作さん

鬼北町の魅力を発掘して、データを集めてほしい

―これから、地元の素材を使った新商品開発業務を始められるそうですね。

 地元の人たちが以前、まんじゅうを作るのに使っていた食品加工の設備があるので、そこを使って新しい商品を作りたいんですね。例えばこの辺りでは、誠屋菓子舗さんというお店の『カニもなか』が有名ながよ、ほんとに美味しい、地域に根づいた味。もう80歳を超えたおんちゃんがやってて、俺も小さいときからそこへ行って、アメもらったり、まんじゅうもらったりしよって。この辺で数少なくなったお菓子屋さんのもなか、職人さんのもなかなんよ。
 で、そのおんちゃん、昔から知り合いやけど、いくら“道の駅にも置かせて欲しい”って話しても“お前がなんぼ頼みに来ても、わしはよう作らんけん”言うて、自分の店以外には卸してないの。年とったから、って。だからうち『かに最中』じゃなくて『おに最中』を作って、おんちゃんの餡を使わせてもらえたらな、と妄想していたりします(笑)。

誠屋菓子舗さ

 あと、道の駅だから駅弁という考えもあって。今、高齢者食の弁当が見直されようよね、おじいちゃん、おばあちゃんの。一人分だけを作るのもめんどくさいし、火を使うのも危ないし、って。現在は弁当を業者から仕入れているので、地元のものを使って、地元の人向けに、独自の弁当をうちで作るという妄想も描いたりはしてます。
 なので新商品開発に向けて、インターンに来る人に、地元にどんな良い素材があるかなど、データを集めてもらってもいいかもしれませんね。自由な発想を求めてるんです。鬼北町の魅力も、自分は生まれも育ちもこっちなので、灯台下暗し。来てもらう人に、フレッシュな視点で地域を見て、感じてもらえたらな、と。

松阪牛並のお値段の名産・キジ肉

―鬼北町の特産品としては、キジがありますね。

 鬼北町の人口は約1万1千人やけど、キジは多い時は15,000羽いて、みんなが毎日食うても食いきれんぐらいやったんよね。うちも、調理したキジを出してるけど、キジはほんとに美味しいよ! もう鍋とかフルコース食べると美味しいねぇー、鍋最高やね、日本人に生まれてきて良かった、と思う。ほんっとに美味しい。実際、キジ肉ってグラムで言うと、松阪牛ぐらいの値段するのよ。

キジ肉の商品

 でもね、うちのコンセプトは、近隣の道の駅とは違って、八百屋さんのイメージなんよ。道の駅にも百貨店寄りとスーパー寄りの道の駅があって、例えばこの近くだったら『道の駅四万十とおわ』とか『道の駅よって西土佐』は、観光客のお客さんが多い。おみやげとか客単価の高いものが中心の品揃え。うちは毎日来る人もいるくらい、地元の人が頻繁に来れるような店作りにしてるんよね。産直市もレストランも客単価を低くしてて、地元客が多くて、リピーター率が高い道の駅。それが強み。なので、これまでの色を守るなら、特産品のなかでも価格帯の高いキジ肉よりも、栗とかゆずを使うほうがいいのかもしれない。

 でも、裏を返せば、うちは観光客向けの高めの商品が弱いということ。なので、ちょっと高級志向の、観光客をターゲットとした商品を作るのがいいのか。地元は現状で人口が減りようけん、よそからの外資を稼ぐことも考えないといけなくて。事業を継続するためには、現状維持じゃだめなんよね。

イベントでお客さんの生の声を聞こう

 商品を生み出すにも、いちばん大事なのはね、お客さんの声なんよ。机上で考えるより。なのでイベント等への出張販売にもついていってもらうことも考えています。
 出張販売は、レギュラーでいうと、宇和島周辺に火曜・金曜に行っています。春と秋には、スーパーで4日間の歳事があって、その他にもイベントはあるので、そういうところにも出てます。基本は県内だけど、時々高松や大阪、東京に行くこともあるね。東京だったら新橋のアンテナショップが多くて、あとは百貨店の地下食品売り場とか催し物会場の歳事とか。

 出張販売はマーケティングにいちばんいいの、お客さんの声が聞こえるし。そこ肝だと思うよね。馬路村の東谷さん(※馬路村農協組合長)が、〈ごっくん馬路村〉がまだ売れない時代、イベントに持って行っては売れずに持ち帰り、持って行っては持ち帰り…ごっくん馬路村をヒットさせた裏には、持って行っても1、2本しか売れずに帰ってきよった時期があって、それが商品の改良につながってる。東谷さんは自ら接客して、売れない理由を自分で分析して、商品改良をしてきてるんよね」

店内の様子

気になる人、気にする人に来てほしい

―どんな人材に来て欲しいですか?

 コミュニケーション能力がある人…だけど、落研に入ってるとか、そこまでのスキルは必要なくて(笑)、最低限のコミュニケーションが取れれば大丈夫。マーケティングの話をしたけど、商品開発って、マーケティングを一所懸命とったときよりも、そこの縁石で足つまづいて飛んだとき、ふっとひらめいた、とか、そういうこともあるので。コミュニケーションさえとって、そこに気付きが入ってきたらいいのかなと思います。あんまりデータ化、データ化、とかしすぎなくてもね。

 お客さんやスタッフ同士と、普通に会話して、相槌打って、挨拶して。それからちょっと話を詰める段階になったときに、酒でも飲みながら話したりとか。酒は飲めなくてもいいけどね、極端にいうとそういうこと。
 「何してるんですか?それ」って、隣の人が何をしているか興味を持てる、そういう感性があったらいいと思う。「あのおっちゃん何やってるんだろう」、「あのおばちゃん、いつもと様子が違うな」とか、ちょっとアンテナが張れる感性。気になる人…気にする人?(笑)ですね。

店内の様子

地域のコミュニケーションを残したい

 あとは、この地域になじみながらも、自分の色を大切に、チャレンジし続けられる人。固定した視点に風穴を開けられるような人が来てくれたらうれしいですね。田舎の人は最初は動かなくても“やろうよ、やろうよ”って言い続けたら動くようになるんやと思うんよね。外から入ってくる、システマチックであったりロジカルに、物事を考えるしくみがもっと必要だと思っているので。

 田舎のいいところは、今日はお祭りじゃーっていうときに親戚がみんなで集まってわいわいできる。そういう地域のコミュニケーションを、残したいよね。人口が少なくなった分、コミュニケーションの機会も少なくなって。気軽に集まって飲もうみたいな感じじゃなくなってきてるので、そこは自分も仕事でも、プライベートのランニングとかバイクとかでも、つながりを意識しています。

店内の様子

鬼北町は自然があふれ、文化遺産もいろいろ

 また後日、鬼北町のことをもっと知りたい、という私たちのお願いに松本社長が鬼北町名所巡りツアーを開催してくださいました! 鬼北町は四万十川最大の支流である広見川に沿って広がり、自然溢れる町ですが、文化遺産もいろいろなのだとか。

鬼北町役場

 まず連れて行っていただいたのは、鬼北町役場。登録有形文化財に指定されている貴重な建物は、日本に近代建築をもたらした一人であるアントニン・レーモンドによる設計。カラフルなステンドグラスと、カーブを描いたラインが特徴的です。1952(昭和33)年に建築され、耐震性の問題から取り壊しも検討されましたが、今年2016年に耐震補強を施し、再生されたといいます。

鬼北町役場

 ここで松本さん、ズボンのポケットからおもむろに取り出したのは、自撮り棒(笑)。記念撮影をしながらのツアーとなりました。

記念撮影

興野々橋
次に訪れたのは『興野々橋』

善光寺薬師堂
最後は重要文化財の『善光寺薬師堂』

 鬼北町は、森の三角ぼうしから2キロ圏内に大型スーパーや書店、ファミリーレストラン、コンビニなども集まっており、日常生活に不便はありません。車で5分ほどの場所(お隣の松野町)のぽっぽ温泉も広々しておりオススメです。カニもなかもぜひ! 研修中に住むことになるかもしれない住宅も見学させていただきましたが、広々としてきれいなお家でしたよ。

鬼北町の風景

 

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