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いなかインターンシップ

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楽しく「ひらひら」でコミュニケーション

西村優美さん

NPO砂浜美術館
西村優美さん

黒潮町入野海岸、約4kmつづく白い砂浜と青い空と海。この海岸は全国的にも有名なサーフィンスポットでもあり、海上に点々とサーファーが浮かんでいる。そんな太平洋の出迎えにいつ来ても圧倒されます。毎年ゴールデンウィークになると、この海岸に1,000枚以上のTシャツが気持ちよさそうにひらひらと泳ぐ光景が恒例となっています。それが「Tシャツアート展」。

1年に1回の開催で今年25回目を迎えるTシャツアート展は今やほかの町でも開催されるようになり、モンゴルの草原やハワイのビーチなど海外でも開催され、単なるTシャツを展示するイベントではないことが伺えます。このTシャツアート展を運営しているのが、NPO砂浜美術館。このイベントから立ち上がった団体で、現在17名の常駐スタッフで運営されています。Tシャツアート展以外にもスポーツ大会やイベントの企画・運営、ホエールウォッチングの窓口や、商品開発・販売なども行っています。

ボランティアからこのTシャツアート展に関わり、現在事務局をしている西村さん。実はこの方がモンゴルでTシャツアート展を開催したい!と言った発案者であり実行者なのです。そんな西村さんと、理事長の村上さんにお話をうかがいました。

 

Tシャツアート展

しっかりした考え方がないと続かない

 

― 1個のイベントが組織になってるというのも、すごいと思うんですよね。
  そもそも、Tシャツアート展が始まるきっかけって何だったんですか?

― 村上さん
 まず、北出さんという写真家さんが「写真をTシャツにプリントして、砂浜に展示したい」というアイデアを高知のデザイナー梅原さんに話していました。それを、畦地さんと松本さんというイベント立ち上げのコアな2人がたまたま聞かされたのです。2人は別件で梅原さんに仕事を頼みに行ったのですが、「こういう話があるんだけど、やってみないか」という提案に押され、やることに。でも、一過性で終わるイベントをパッとやるのではなく、やるからにはしっかりした考え方をもとうということで、梅原さんを含め、地元の人達で話を進めました。その中で、砂浜の波の模様や漂流物など自然の被写体たちも「作品だよね」という話が出た時に、梅原さんがひとこと「でけた!」と。今のコンセプトができたのです。Tシャツアート展はやることが目的じゃない。このコンセプトを分かりやすく伝えるための手段として、やっていこうというとで始まりました。

 

「無いなら作りだせばいい」。結果それがいいことになっている。

 

― お二人は、県外出身ですよね?いつからこちらに?

― 村上さん
神奈川県出身です。まだ10年なので、Tシャツアート展でいえば15回目からですね。最初に砂浜美術館の話をきいた時、その取り組みはもちろんですが、そこで関わっている人がすごく良かったというか、楽しそうだったんですよ。ある先生とその話をいろいろしていたら、たまたま求人募集しているよ、と聞いて。それがこちらに来るきっかけですね。

― 西村さん
私は大阪出身です。Tシャツアート展は18回目、2006年に初めてボランティアに来ました。当時は香川で教員をしていたんですが、たまたま四万十川周辺の観光情報を調べたサイトで、「四万十川を下って海側からTシャツアート展を見よう」というツアーを発見したんですよ。「何だTシャツアート展て?」と。「砂浜美術館」を発見して、「ほー」っとなりました。

早速Tシャツの作品を応募して、Tシャツボランティア(Tボラ)にも応募したんですが、仕事で全日程の参加はできないと書いたら、選考で落とされまして(笑)。当時はTボラの応募が多く、選考が厳しかったんですよ。

翌年、今年は絶対に行く!と思い、「全日程」でTボラに参加しました。当時も教員だったのですが、しかも一カ月の期限付き。初日に新任の挨拶、次の日から年休を使って休む、みたいな・・・。

― そうまでして行きたかったんですね~。応募に落とされたのが悔しかったから?(笑)

― 西村さん
いや、砂浜美術館のコンセプトとやっていることが本当に好きで。自分がもともと好きだった感覚と似てるんですよね、だからこそスゴイはまったのかな。

― その感覚って、どんな感覚ですか??

― 西村さん
「なくても頭の中で作ればいい!」みたいな感覚ですかね。
楽しいことやおもしろいことは、自分たちで作り出せばいくらでもできる。限られたところにしか無いんじゃなくて、作り出せばいいやん、という感じ。それを自分ひとりじゃなくて、たくさんの人と作り出す。さらに、自然や環境にやさしいとか、結果的にイイことになっている。イイことをしようとがんばりすぎているわけでは全然なくて、自分たちは楽しんでいるんですけど、結果的にはイイ、という感じ。
こういうのが、すごい好きなサイクルですね。

― なるほど、まずは自分が楽しむことですね。

西村さんと村上さん

モンゴルで「ひらひら」させたい!

 

― Tボラに10日間参加してみて、どうでしたか?

― 西村さん
みんなで作り上げて、最後はまた何もない状態に戻すところを経験させてもらって、Tシャツアート展は、こうやって作り出すものなんだなーっと実感しました。ゼロからあの風景ができるわけで。人の手で作り出せるんだなと。

これを他の場所でもできたら楽しそう、と思いました。その時、青年海外協力隊でモンゴルに行くことが決まっていたので、漠然と、モンゴルでもできたらいいなと。

― もうその時すでに思ってたんですね!
青年海外協力隊の活動として、Tシャツアート展をやったんですか?

― 西村さん
はい。協力隊の活動に見せかけてました(笑)。いや、小学校教諭として活動したので、本来の活動では無いといえば無いんですけど。でも、分野がちょうど図工でもあったので、活動目的と関連させていました。

― どんな活動をしていたんですか?

― 西村さん
モンゴルの図工は技術を学ぶ時間のようなんです。お手本通りに描いたり作ったりすることが求められる。今は、子どもの発想や表現を大切にと目標は変わっていますが、具体的にどんな授業をしたらいいのかを迷っている状態。実際に授業をしながら、こんな教え方をしたら子どもたちがこんな風に取り組むよっていうのを先生たちに伝える、そんな活動をしていました。

― 例えば、どんな授業を?

いつも考えていたことは、子どもたちが自分なりの表現を出せるように、うまい下手が出にくい授業、全員100点にしてあげられるような授業をしたいということでした。そのひとつが、紙のTシャツ作りです。紙をTシャツ型にする。ただそれだけで、すっごく楽しく描けるんです。絵だけじゃなくて、ボタンや襟をかいてもいいわけで。全部がかわいく見えます。その作品を全員分ひらひらさせて、校内でTシャツアート展もやりました。「いろんな作品がある」「全部いいんだよ」っていうのを伝えるたくて。

― おー。Tシャツアート展が出てきましたね。

そうなんです。この、うまい下手や垣根がなくなるところ、これもTシャツアート展の好きなポイントの一つですね。Tシャツになって、しかも砂浜でひらひらすると、ほんと全部が絵になります。

 

モンゴルの草原でTシャツアート展

 

モンゴルの草原でTシャツアート展

― 本物のTシャツアート展の方はどうだったんですか?

― 西村さん
あれは、完全に自分の範囲を超えていましたね!!
規模も枚数もすごすぎて。展示作業も、あの大変さはもう・・・。あと、全貌を知らなすぎました。Tボラとして展示や取り込みの作業は経験したんですが、その前準備などは全く知らず。ここに入ってその綿密な準備を知った時、「そりゃあできんわなー」と本当思いましたね。2~300枚だったらできたかもしれないけど、1,300枚は。やれどもやれども展示作業が終わんなかったですねぇ。しかも自分に余裕がなさすぎて、協力してくれたたくさんの仲間たちにも、大変なおもいをさせてしまいました。

― 村上さん
でもこのモンゴル開催がなかったら、たぶん今の流れは無かったんじゃないかという気がします。この企画を梅原さんに伝えた時、梅原さんの中にTシャツアート展が「草原に行く」というイメージは全くなかったようです。「やっと面白くなってきたな」って言われましたね。毎年毎年同じ場所で同じように開催していたのが、「ひらひら」でコミュニケーションしていくっていう新しい動きになり、すごくワクワクしました。

 

Tシャツアート展チラシ

 

― 西村さん
翌年からも、規模と手段をかえて継続しています。町の小学生の国際教育の一環として、モンゴルTシャツアート展を行っているんです。特別参加した子どもたちのTシャツを、砂浜でひらひらした後、モンゴルの草原でも展示して、草原の匂いをつけて返して。世界を身近に感じる体験、がねらいです。

 

モンゴルの草原にて

 

― 村上さん
これは今、きちんと教育プログラムになっていて、西村さんが授業に行く時は講師料もつきます。ビジネスとはまた違うかもしれないけれども、半分仕事、半分自分の想い、のような感じで継続してるんです。

― そうやって自分ででもできる、どこででもできるってなると、そういう人が増殖していく可能性もありますよね、

― 西村さん
小布施という町で、今年6回目かな、開催してますよ。
他にもいろんな形でTシャツアート展がありますが、それが、それぞれ個別にやるのではなく、もっと交流できる形でやっていきたいなと思っています。

 そこで今年は、小布施町のTシャツも、まずは5月に砂浜美術館でひらひら、その後小布施に旅をするというような流れを作っています。旅も、楽しんでもらえたらいいなと。ただTシャツを作るだけの目的であれば、今は他にもいろいろな手段があります。「砂浜でひらひらすること」だったり「旅をすること」だったり、ここにしかない価値をもっと発信していきたいと思っています。

私個人的には、風景作品をみんなでつくりだすという楽しさにハマっていて、Tシャツをただ作るという考え方とは全く別の価値観ですが。

 

笑顔の素敵な西村さん

やりたいことっていつも先にあるわけじゃなくて、その場のひらめきや臨機応変さが重要

 

― これから目指す目標などありますか?

 

― 西村さん
やりたいなと思ったことをやりたいですね。
自分だけじゃなくて、誰かと一緒でも、何かひらめいて「いいね!いいね!」となったことが、ぼんやりしたまま終わっちゃうのはもったいないと思うんです。せっかく思いついたんだったらそれを形にしたい、ということをいつも思っていますね。

― エンドレスな感じですね。何かのために、何かを目指しているわけでなく、思ったまんまやってみようと思って、やれちゃう、それがすごいところですね。また、そうさせてくれる砂浜美術館という環境がいいんでしょうね。

― 村上さん
「言ったらやれ」みたいなことはよく言われますけどね(笑)。
協力はするけど、言ったらちゃんと責任もってやれ、みたいな。

 

― インターンシップに来た研修生が、主にやることは何でしょう?

― 西村さん
 今の時期なので、Tシャツアート展準備、展示など。男性なら力仕事もあります。開催中はTボラと一緒に活動してもらったり、Tボラをまとめたりすることもあります。でも、自由度も高くなると思います。そんな時に、その状況の中でやりたいこと、やるべきことというのを、見極めたり作り出したりする力というのが、すごい重要だと思うんです。「思い描いていたのと行ってみたら違った」というのはよくある。その時に、「自分にやれることがない、あーあ」と思っちゃうか、「じゃあ、こうやってみようかな」と思えるかどうか。この違いはすっごい大きくて、後者なら、どこへ行っても「できる人」になると思います。

やりたいことっていつも先にあるわけじゃなくて、その場にいて、その状況になった時に生まれてくることが多い。ただ計画性が無いんじゃなくて、その状況だからこそひらめいたりとか。こういう臨機応変さが、生きる力には必要だと思いますね。この環境で、それを試してみてほしいです!

 

Tシャツボランティアのみんなで

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やりたいこと・やるべきことを見つけるところも含めて、いろんな活動をしたい人。自由にできることを楽しめるような感じですかね。

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