大学生のいなかの就職活動事情〜いなかインターンシップ体験記〜

2022/05/17

 3月のいなかインターンシップに参加してくれたふじさん。

 大学3年になり都会で就職活動をしていたけど、自分は田舎で暮らしたいと思うようになり、いなかインターンシップに参加してくれました。

 1ヶ月田舎で暮らすことが彼女の人生にどう影響を与えたのか聞いてみました。

 

いなかインターンシップ

 

Q)どうしてインターンに応募したのですか?

 大学卒業後は田舎で暮らし、働きたいと思っていたので、田舎暮らしが体験できるインターンシップを探していました。大学に置いてあるチラシを見たり、検索エンジンを使用して調べると、多くの団体がインターンシップを開催していることが分かりました。

 ただ、田舎暮らしをしたいといってもどこでも良いわけではなく、希望する西日本で開催されていて、且つHPに参加者の体験談が掲載されているところに参加したいと考えていました。いなかパイプのHPを見つけて隅々まで読むうちに、「このインターンシップになら参加出来る」と思うようになり、参加申込をしました。

 

 そもそも何故田舎暮らしをしたいのかというと、理由は2つあります。

 1つ目は、大学進学とともに都会に出たのはいいものの、都会暮らしに疲れていたからです。何処の誰が作ったか分からない野菜を消費し、心の充足を得るためにお金を支払う。空を見上げれば星は建物に隠れ、季節を感じる余裕もない。そんな暮らしが嫌で仕方ありませんでした。

 もちろん都会は物が揃っていて便利ですし、住むには困らない場所だと思っています。けれど、心が踊るものが何もないのです。あったとしても、それは一時的なものでしかありません。私にとって田舎は、その場にいるだけで気持ちが穏やかになる場所でした。

 

いなかインターンシップ

 

 2つ目は、子ども頃に住んでいた場所が忘れられないからです。十数年も前のことなので曖昧な部分がありますが、山に囲まれた自然溢れる場所で暮らしていました。夏には家の前の用水路でサワガニを捕まえて遊び、秋には家族とコスモスを見に行ったことを覚えています。

 小正月にはとんどさんという行事がありました。しめ縄や破魔矢と一緒に竹に刺したお餅と蜜柑を焼くのですが、そこは地域の方々が集まる交流の場となっていました。子どもも大人も一緒になって楽しむのです。

 このように四季を慈しみ、伝統行事を大切にする姿勢は都会ではあまり見られないと思います。変わらない景色の中で暮らしていくよりも、小さな変化に感動し、自分らしく生きていく方が私に向いていると思いました。

 

いなかインターンシップ

 

Q)最初の一週間の「いなかドア」をどのように過ごし、何を感じましたか?

 実は大朝に来る前、というより申込をする前から「いなかドア」でやりたい事を考えていました。ホームページには参加者の体験記が掲載されていたのでそれを参考に。四万十川で釣りをしたい、山があるらしいから登山をしたい、川沿いを自転車で走ったら楽しいだろうなと想像していました。

 ところが訪れることになったのは北広島町大朝。私にとってもコーディネーターの方にとっても初めての場所です。大朝に何があるかも分からなければ、四万十のように道具が揃っているわけでもない。長距離の移動と緊張で疲れていたこともあり、積極的に活動することが出来ませんでした。「休む」という選択肢が浮かばなかったのは何故なんだろう・・・。

 

 周囲にレジャー施設がなかったので、料理のために時間を割くことが多かったです。魚を食べたいとドライブがてら浜田に行ったり、午前中に作った料理を持って野外で食べることもありました。土居田屋の裏山で火起こしから始め、ダッチオーブンでパンやスープを作った時はとても楽しかったです。

 また、車で色々な場所に行きました。神社、史跡、温泉、石見銀山、お魚センター、出雲大社等々。その都度「楽しい?」と聞かれたことを覚えています。本当に楽しいと思っていても表情や言動に表れなかったり、自分よりも楽しそうな人を見ていると冷静になってしまったり。嫌だと言っても相手が行きたそうな時や、興味があるけど今は気分が乗らない、くらいの事だと流されてやってしまう。そんな感じで1週間が過ぎてしまいました。

 

 1週間で感じたことをチェックアウトミーティングで話し合ったことで、やっと自分を出す事が出来ました。それは対話の機会があったからで、もしなかったらお互いに分かり合えなかったのかもしれません。チェックアウトミーティングを終えてはじめて口にした言葉は、「あと1週間あれば良かったのに」です。しておけばよかったと後悔するのはあまり好きではありませんが、対話の後に同じように1週間過ごしたら、もっと楽しめたのではないかと思います。

 

いなかインターンシップ

 

Q)現場研修はどこで何をしましたか?また、なぜその体験をしたいと思いましたか?

 「有限会社 大朝交通」さんと、「福光酒造株式会社」さんです。

 大朝交通さんはその名の通り、交通事業を中心に運営されている会社です。ただここの社長さん、「NPO法人 INE OASA」の理事長をされている方でもあり、大朝のためなら何でもされる方なんです。私もインターンシップ中に鳥小屋製作、取材同行、サイクリングのモニターツアー、古民家改修、畑仕事など様々な事をさせて頂きました。

 

 大朝交通を選んだ理由は偶然というか直感なんです。福光酒造さんでは2週間しかインターンシップの受け入れが出来なかったので、最初の1週間はどこかで研修を受ける必要がありました。その時に現場体験の話を進めていた大朝交通さんで研修しないかとメールを頂きました。研修内容にDIYと書かれていたのを見て面白そうだと思い、承諾しました。

 大朝交通さんでは、日によって業務内容が変わるため、毎日が新鮮で楽しいことばかりでした。毎日動きまわって身体は疲労していましたが、充実した1週間になりました。

 

いなかインターンシップ

 

 福光酒造さんは現在どぶろくとワインを製造販売されている酒蔵です。一度廃業になった酒蔵を再興すべく2015年に現蔵元の福光さんが戻って来られました。

 福光酒造さんを研修先に選んだのは、お酒造りに興味があったからではありません。お酒は好きなのですが、日本酒は飲めなかったのです。

 他の酒蔵の見学をしたことがあるのと、テレビで杜氏に密着した番組を見たことがあり、業務内容を知っていたため選びました。

 初日にお酒の仕込みが終わったため、2日目からはラベル貼りや瓶洗いという作業をしていました。福光さんは製造から販売までの過程を全て1人でされていて、その姿を見ていると自分の手で物を作ることに興味が湧いてきました。

 

いなかインターンシップ

 

Q)インターンシップ全体を通して、学んだこと・気づいたこと・得たことを教えてください。

 田舎には、いろんな人がいます。大朝で1ヶ月暮らして驚いたことは、まさにこれでした。

 この記事を読んでいて、「都会の方がいろんな人がいるんじゃないか?」と思った人もいるかもしれません。私も最初はそう思っていました。だって普段テレビを見ていると、本当にいろんな人が出てますから。

 都会には信じられないほど沢山の人がいます。そしてそれぞれが異なる職業に就き、異なる価値観を持って生きています。得意なことも苦手なことも人それぞれ違います。しかし、都会で暮らしているとその事実に気付きづらくなってしまいます。知識として知っていても、実際はどうでしょうか? 気付けば自分と似た性格の人とばかり友達になっていたり、人と比べて落ち込んでしまうこともあると思います。

 

 田舎では、そうはなりません。人が少ない分好き嫌いで関わる人を選ぶことは出来ません。自分と似た性格の人はそうそう見つかりません。だからこそ対話する機会が増え、自分とは全く異なる考えを持っていたり、自分では思い付かないような発想をする方がいることに気付きます。それがとても面白いんです。

 私は結構人と比べて落ち込んでしまうのですが、大朝に来てからそういうことは少なくなりました。人と比べなくても、自分らしく、ありのままで良いんだと思えるようになりました。

 

 あとは、学び続けることの大切さに気付きました。正直勉強はしんどいので、大学を卒業したら勉強しなくてすむと思っていました。というかしたくなかったです。

 地域の方々、特に受け入れ先の堀田さんと福光さんを見ていると、次々と新しいことに挑戦されていて、そのために積極的に学んでいくという姿勢が見て取れました。しかも楽しそうに。自然と自分もそうありたいと思うようになりましたね。

 強制された勉強は面白くないので、自分が興味のあることからで構わないと思います。専門的に深くまで学ぶ必要もないと思います。気が向いた時にちょこっと学ぶ、くらいでも。知っていることで話の引き出しが多くなるし、今後絶対役に立ちます。

 

いなかインターンシップ

 

Q)これから参加する人や参加を迷っている人へメッセージをお願いします。

 「行動こそがメッセージ」私が尊敬する方の言葉です。

 自分で考え、行動することに意味があります。たとえそれが間違っていたとしても、誰かに笑われても、自分が思ったことを好きにやればいい。誰も正解なんて分からないから。

 私なりの解釈を追加すると、特別な理由がなくても行動することが誰かに影響を及ぼすのではないかと考えています。

 私がいなかインターンシップに参加した理由は、田舎で暮らし、働きたいからです。田舎で何をしたいとか、田舎のために何かしたいとかは考えていませんでした。だから最初は大朝のために行動している人に対して失礼なんじゃないかと思っていました。けれど、大朝の方々は私を受け入れて下さいました。そこにいるだけで、話をするだけで気付きや学びがあると仰って下さいました。自分が認められた気がして嬉しかったです。

 だから、どんな理由でも構わないんです。少しでも参加したいと思ったなら参加したらいいと思います。

 そうは言いつつも私もすごく不安だったので、そんな時は色んな参加者の体験記を読むことをおすすめします。

 

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