実際に田舎で生きて働くという1ヶ月〜 参加者インタビュー 〜

2021/05/12

 いなかパイプでは、2020年5月から、新型コロナウィルス感染防止対策を行いながらもいなか暮らしの体験ができるステイホームプログラム (現・いなかドア)を行っています。いなかインターンシップに参加を希望する方も前半2週間のステイホームプログラムを経て各自の希望に応じて地域の現場へインターンへ行きます。

 2021年2月にいなかインターンシップに参加した大学3年生の岡崎みかさん(通称みかぽん)にインタビューしました。高知出身で大学進学を機に高知を離れ、現在は広島で暮らすみかぽん。彼女にとって自分の故郷の良さを再発見し、これからを考える時間になったようです。

 

みかぽん

 

Q)どうしてインターンに応募したのですか?

 

 「私って高知、そしていなかに帰ってきたいの?」をじっくり考えたかったからです。

 私自身、小学生3年生から高校卒業までの約10年間を高知県四万十市で過ごし、「いなか」に囲まれた学生時代でした。昔から好奇心は人一倍強かったので、地理的な要因で活動が制限されることへの不満から、当時から高知が大嫌いでした(笑)。

 高知県は人口減少問題や、高い災害リスクを持つ地域であることから、この場所はいつかなくなってしまう地域なのではないかという不安感もあって。高知という地域に期待感を持ちたくなかったんだと思います。

 

 でも、大学生になり地域活性化や農村研究に興味を持ち活動していく中で、

「将来は高知に帰るの?」

という質問されることが増え、自分でもどうしたいか全く分からなくなったんです。

 地域と関わることが好きな自分がいる一方で、大嫌いな高知に帰りたいのか、また帰ってきたとして何がしたいのか、何が出来るのかともやもやする自分もいました。

 

 そんな中、このいなかパイプのインターンシップを見つけ、地元、しかもいなかでインターンをするという違和感と、地域との繋がりづくりを大切にしていることに惹かれ、応募しました。

 指定された活動があるわけではなく、自分でインターン先を選び、自分がしたいことを優先出来るという点がとっても魅力的に感じたんです。

 これなら、就職を目的にするのではなく、単純に高知は帰りたい場所なのかを考えることが出来るなと。1か月間、地域の人との出会いや会話の中で、高知で生きていく理由やその価値を考えるための時間を作ろうと思いました。

 あとは正直、面白い人達と出会えそうだなという直観もありました(笑)。実際、面白い人に沢山出会えましたよ。

 

参加者

 

Q)前半2週間の「いなかドア」をどのように過ごし、何を感じましたか?

 

 とにかく楽しくて、充実した2週間でした。具体的には、幡多地域周辺を巡ったり、畑作業をしたり、川や海に行ったり、花見をしたり、星を見たり、料理を作ったり、本当に自由でした。動きたくない日は、ご飯作って、ジェンガやUNO、あと話して終わりの日もあったりして(笑)。

 

参加者

 

 朝、今日したいことをみんなで共有して、大体の計画を立てて、一日をゆるっと過ごす。こんなに自由でいいのか、と戸惑うこともありました。

 普段の生活では割と予定を詰めてしまうことが多くて。特に去年は、コロナの影響もあり家に帰ってもパソコンで常に作業している日々だったので、久々にリアルの楽しさを体験出来て幸せでした。

 

みかぽん

 

 2週間で感じたのは、高知では日常の一部だったことが、県外に出たら遠い存在になってしまっていたことですね。

 山や川が身近にあること、採りたての食材をすぐ食せるという環境が以前は自分の身近にあって、そこに特別を見出すことが出来なかったんだと思います。

 もう一人のインターン生がいたことも本当に良かったです。県外の方だったので、そんなことに驚くの!と逆に私が驚かされることが多々ありました。

 でもその方が、高知の自然や文化一つ一つに感動している姿を見て、自分自身では発見出来なかった高知の価値を感じることが出来たんです。

 一番印象的だったのは、川の水が流れる音。水が流れる音は、高校までは普通に日常生活の一部だったんですよね。住んでいたのは山の中ではなく街でしたけど、それでも四万十川が身近にあって、毎日川の音を聞きながら登下校していました。私自身、その音がとっても好きだったことを思い出したんです。

 

滝

 

 自分の当たり前が、他の人にとっては特別なこと、その当たり前が自分にとって心地いいものであることに気づきました。

 頭の中では田舎は嫌だなあと思っていたけど、体や心はいなかだから過ごせる日々を、心地が良いものとして捉えていたのかもしれません。大学生になって地域により興味を持ったのも、もしかしたら同様の環境を求めていたのかも。

 

Q)後半の現場研修はどこで何をしましたか?また、なぜその体験をしたいと思いましたか?

 

 十和の有機農家である桐島畑さんに10日間、そして道の駅よって西土佐さんに計12日間、受け入れていただきました。

 

【桐島畑】

●耕運・植え付け・収穫・袋詰め・発送のお手伝い・しょうがの種割り等

 

桐島畑

 

 参加前は、農業体験をしたいという軽い気持ちはあったけど、インターンに行きたいという強い意志はありませんでした。2週間のいなかドアで「いなか」の良さを再確認する中で、いなかに根付く一次産業に興味を持ったので、桐島畑さんでのインターンを希望しました。

 

【道の駅】

●道の駅でのレジ作業の補助、値段品出し、出品する生産者さんの値札張り、食堂のお手伝い

●道の駅のテナント店である「鮎市場」「ストローベイルSANKANYA」での業務

●集荷に連れてってもらう、畑巡り

 

 道の駅は参加前から希望していた場所でした。よって西土佐は地元でも有名で、実際にお客さんとして行ったこともありました。

 高知にはたくさん道の駅がある中で何が特別なのかを知りたかったこと、また道の駅ならたくさん地域の人と話すチャンスがあると思いインターンを希望しました。

 

Q)インターンシップ全体を通して、学んだこと・気づいたこと・得たことを教えてください。

 

 「生産するって面白すぎる!」が、桐島畑でのインターンでの感想です。

 実はこれまで一次産業の分野って本当に興味がなかったんです。理由は、単調で驚きがないイメージがあったこと。品種は変わっても日々同じ作業をしているという勝手な印象がありました。

 予想に反して、桐島畑でのインターンは日々驚きの連続でした。桐島畑では多品種少量生産を行っていて、同時に色んな野菜を生産・出荷しているんです。

 品種によって育て方も違うし、天候によって左右される。有機農業だから農薬や化学肥料には頼らないし、上手くいかない時もある。だからこそ経験や知識が重要であることを学びました。生産の分野は全然単調じゃなくて、私の知らないことだらけじゃないかとワクワクが止まらず、、

 

 野菜の流通に関してのイメージも変わりました。スーパーの野菜って、箱から取り出され、綺麗に袋詰めされてて、土も虫も取り除かれている。だからその背景に生産者さんがいることを知識としては分かっていても、人と野菜が全然結びつかなかったんです。

 今回桐島畑で働かせてもらうことで、生産者と消費者という人と人との繋がりの中で野菜が循環していることを意識しました。

 私が収穫して袋詰めした野菜が誰かの元に届いて食べられている、その事実がなんだかとっても嬉しくて。何よりも良かったのは、野菜に触れることがとても好きになったことですね。これは道の駅でのインターンでも役に立ちました。

 

桐島畑

 

 道の駅よって西土佐では、地域に人が集まる拠点があることの重要さを学びました。

 これまで道の駅って、観光客のためのものってイメージがあったんですけど、よって西土佐は全く違ったんです。野菜やお弁当を買いに来る地元のお客さんがたくさんいて、道の駅には地域の生産物が循環する中間地点としての役割があるのでは?とワクワクしました。

 特に印象的だったのは、生産者さんとの距離の近さ。値札張りのお手伝いを毎日してたんですけど、野菜の話から何気ない地元の話まで、色んな話を生産者の皆さんとすることが出来る環境が本当に楽しかった。

 急遽畑に連れてってもらえたり、他の業務をしている時も話かけてもらえることもあったりして、働いている中でその距離感が嬉しくなる機会が何度もありました。

 道の駅の駅長さんに話を聞く中でも、地域の皆さんと共に道の駅を作っていくんだという強い意志を感じたんです。道の駅に関わる全ての人が主役となり、地域をみんなで守っていくための拠点を作っているのだろうなと。

 

 この高知の山の中で生きている人ってたくさんいるんだという事実を再確認できました。

 インターン最終日がちょうど道の駅の周年祭で、小規模ですがイベントが行われたんです。そこでの人の賑わいを見て、いなかってまだまだ可能性あるよなあ、と考えさせられました。

 どうしても、人口減少などの負の問題に目が向きがちだけど、いなかに生きていいる人達は実際たくさんいるんです。外からの視点や数値だけでは分からない人々の繋がりもあって、ここはこれからの将来を考える価値のある場所だと実感出来ました。

 

Q)これから参加する人や参加を迷っている人へメッセージをお願いします。

 今後地域で仕事をしたい、暮らしたいと考えている人にとっては、このインターンはとても価値のあるものになると思います。

 1か月という短い期間でしたが、「田舎暮らしを体験させてもらっている」いう感覚ではなく、「実際に田舎で生きて働く」経験を少しすることが出来たので。また、すでにいなかで暮らしたことがある人でも、いなか暮らしの価値を再確認する、またこれからの人生のヒントを見つけるための時間を過ごす良いきっかけになると思います。

 私自身、これからどう生きていきたいかのヒントを、いくつか見つけることが出来ました。

 

 面白い人達にもたくさん出会えました。いなかパイプのスタッフさんは勿論ですし、ここで出会う地域の人々、また他のインターン生、全員面白いと思います。その人たちに相談にのってもらったり、これからの話をするだけでも、とても価値のある時間を過ごせるのではないでしょうか。

 私が大嫌いだった高知を、いなかインターンシップを通して好きになる人が増えれば嬉しいです。

 

ジップライン

 

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