いなかインターンシップで知った様々な生き方 ~とのちゃん体験記②~
2022/10/11
初めまして。東京生まれ東京育ち、いなか未経験、現在大学4年生の”との”です。いなかインターンシップには、大学4年の5~6月に、休学をして参加しました。
インターンシップで多くの学びや気づきを得たあまり、伝えたいこと・残したいことが膨大にあり、3回に分けて記事を書くことにしました。前回はいなかインターンシップに参加するまでの経緯を書きました。
●就活に行き詰まり、いなかインターンシップに参加するまで ~とのちゃん体験記①~
いなかインターンシップで達成したかったこと
このインターンシップで私が達成したかったことは「将来やりたいことの方向性を見つけること」でした。
就活でよくわからなくなってしまった「自分のやりたいこと」。
「これ!」というものが見つからなくてもいいし、たった1ヶ月で見つかるとも思えない。けれども、ずっと都会で生まれ育ってきた自分にとって、全く新しい環境である「いなか」という場所で色々な経験をしてみることで、なにかしら「自分はこういうことが好きなんだな」「こういうことに興味があるのだな」という気付きが得られたらいいなと思っていました。
インターンシップでなにをしたか
1)「やりたい」を実現させる、いなかドア
そんな目標を抱いて臨んだインターンシップ。30日間で、本当にいろいろなことを体験しました。
まずはいなかドア。はじめの1週間に行われるプログラムで、毎朝自分の「やりたいこと」をホワイトボードに書き出し、それをもとにしてその日のスケジュールを組みます。
そのようにして、とにかく「やりたい」を実現させていく、そんなプログラムです。
いなかドアの期間中は、川で魚を釣ったり、
草原でパンを焼いて食べたり、
カヌーをしたり、
馬や牛と触れ合ったり、
「いなかに来たらやってみたい」と思っていたことを、とにかく実現させていきました。
端から見れば、遊んでいるだけと思われるかもしれません。実際、毎日遊んでいることは事実であり、いなかドアの初めの方は
「せっかく安くはないお金をかけて、休学までしてインターンシップに参加したのに、こんなに遊んで、好きなことばかりしていて良いのだろうか」
という戸惑いと言いますか、罪悪感のようなものさえ感じていました。
ですが、日を重ねるにつれて、自分が「やりたい」と思ったことを実現させる楽しさや、「やりたいことって、自分さえ行動すれば現実にできるのだな」という感動があり、当初感じていた罪悪感も段々薄れてきました。
おそらく、いなかドアの期間中にどういったことをするのか、というのはあまり重要な問題ではないのだと思います。
「自分の思いを現実化させること」「そのためにどうしたら良いか考えること」を実際に体験することこそが、いなかドアの意図なのではないかと、私は解釈しました。
また、言うまでもありませんが、高知県は広いです。そのため、いなかドアでは、(行く場所にもよりますが)移動時間がとにかく長く、1日のおよそ半分が移動という日もしばしば。
ですが、移動中にスタッフの方のお話を聞いたり、意見を交わしたりするのがとても楽しく、車中の会話から得た学びがたくさんありました。
きれいな景色や、おいしい食べ物にもたくさん出会いましたが、意外にも車の中でのスタッフさんとの会話が、一番多くの気づきや学びをもたらしてくれた気がしています。
2)食べ物のありがたみを感じた農業
いなかドア後の現場研修では、「しまんと流域野菜」という有機農業を行っている農家さんにお世話になりました。
研修先に農業を選んだのは、普段自分が口にしている食べ物がどのように作られているのか、身をもって学びたいと感じたからです。
また、農業に対して、なんとなく抱いていた「体力的にきつそう」「同じ作業をひたすらやっていそう」というイメージが、本当にそうなのか、自分の目で確かめたいという思いもありました。
研修では、ズッキーニの受粉をしたり、(ズッキーニは人工授粉しないと実がならないということを初めて学びました)
収穫し、重さごとに仕分けたり、(一つ一つ、汚れを拭き取ってから仕分けをします)
生姜の出荷準備をしたり、 (泥汚れを拭き、食べられない部分をナイフで落としていきます) 道の駅やJAの直売所に出荷に行ったりしました。
道の駅や直売所では、バーコードを発行し商品に貼り、店頭に陳列するところまで、全て生産者が行っているということも初めて知りました。
トラクターを運転させてもらった日も!人生で最初で最後かもしれない貴重な経験をさせていただきました。
実際に農業をしてみて、食べ物は一つ一つ人の手で作られているのだなということを、当たり前のことではありますが、改めて実感しました。
収穫したズッキーニを手にとって、これがどこかの誰かの食卓に並ぶのかと思うと感慨深い気持ちになりました。
それと同時に、こんなに手をかけて作られているのに、なぜお店では野菜があんなに安い価格で売られているんだろうと、疑問も感じました。
生産者の立場を体験したことで、食料を生産することや、自然や天候に左右される農業によって生計を立てていくことの難しさを実感し、食べ物を作り出し、自分たちの日々の食を支えてくださる方々へ、感謝と尊敬の念がよりいっそう深まりました。
収穫したズッキーニで作ったポテトチーズ焼き
また、一つ一つの作業は、あまり難しくはないものの、その一つ一つの積み重ねが、野菜の成長や出来栄え、売り上げに直結するのだなということも感じました。
例えば、ズッキーニを収穫する際、注意しないとハサミの先や、茎の小さなとげでズッキーニに傷をつけてしまうことがあります。
また、ズッキーニの受粉は、おしべについた花粉をめしべに擦り付けるだけという簡単な作業ですが、しっかり受粉ができていないと、実が良い形に成長しないそうです。
自分の行う作業の一つ一つが、野菜の出来栄えや、出荷量、売り上げにそのままつながると思うと、単純作業とはいえ全く気を抜くことはできず、作業中は常に責任感のようなものを感じていました。
また、現場のスタッフの3人それぞれに、農業をしていて、どういう時にモチベーションを感じるかという質問をしたところ、
「みんなでわいわい作業している時が楽しい」
「農業関連の会社を起業する。その目標があるからモチベーションを保てる」
「どうしたら作業が効率よくできるか、自分なりに考えて工夫することが楽しい」
と、三者三様の答えが返ってきたことも面白かったです。
仕事に何を求めるか、どんなことに楽しさを感じるか。人によって様々な考え方があるのだなということを改めて実感させられました。
3)色んな生き方を知った、人との出会い
インターンシップの期間中に、本当にさまざまな経験をしましたが、その中でも最も楽しかったこと、かつ、自分に大きな影響を与えたことは、人との出会いです。実に、インターンシップ期間中には20人以上の人との出会いがありました。
これまでは、就活において「会社で働いている大人」とばかり出会っていた私。
話をする人が、大学を卒業し、正社員として会社に雇われ一つの仕事に従事しているという人ばかりだったので、自分も、無意識のうちに「良い会社の正社員になるしか、自分が生きる道がない」と囚われていたことに気がつきました。
宿舎のみなさんと花火をしました
でも、こちらで出会った人にお話を聞いてみると、そもそも会社に雇われている人や、一つの仕事だけに従事しているという人が少ないのです。
いなかパイプのスタッフさんも、人手が足りない仕事を季節ごとに転々とし、1年間に非常にたくさんの仕事を経験するという働き方をしています。
他にも、サラリーマンをやめて旅に出た人、10年間ショーダンサーとして働いていた人、瞑想の修行をしていた人、山の上であえて非効率的な塩づくりをしている人など、これまで出会ったこともないような人たちにたくさん出会い、色々な考え方や人生をお聞きしました。
大学を卒業し、良い会社に正社員として就職し、会社に雇われることは、あくまでも選択肢の一つに過ぎなくて、それ以外にも生きる道はいくらでもある。色々な人との出会いによって、それに気がつくことができ、自分の生き方の選択肢がグッと広がった気がしました。
また、「いなか」と聞くと、「人と人の繋がりが強そう」というイメージを(良くも悪くも)持っている方が多いかもしれません。
人と仲良くなったり、うちとけたりすることに時間がかかる私は、インターンシップへくる前は、地域の人と仲良くできるだろうか、よそものとして扱われないだろうかと、地域の人との交流に少し不安を感じていました。
ですが、宿舎のある地域の方々は、本当に温かい方ばかりです。初対面の私に対しても、
「たくさん食べなよ〜」
「どこから来たの?」
とみなさんたくさん話しかけて下さりました。
ある食事の席で、たまたま隣に座っていたおじいちゃんとは、いまや木を伐採するところを見せてもらったり、干し椎茸をおすそ分けしていただいたく仲です。
東京に住んでいるときは、お隣さんの顔さえ知らないという、ご近所付き合いの欠片もない暮らしをしていた私ですが、こちらに来てから、すれ違う人と挨拶をしたり、ご近所さんのお食事の席に呼ばれたりと、人の温かさに触れる機会がとても多くなりました。
次回は、インターンシップを通して起こった変化について、お届けします。