道に迷い込んだ先で・・・
2012/07/04
- 執筆者 岩崎年浩
- 所 属一般社団法人いなかパイプ
どうも、いなかパイプスタッフのとっしーです。
いなか暮らしで、自分が好きな点の一つは、年長者の威厳があるところです。
ただでさえ、大型スーパーやホームセンターが近所に無い地域で、
家から離れた畑で作業をしていると「アレが無い」「コレが足らんくなった」なんて事が発生します。
そこで、さらっと代用品を用意してくれるのが経験豊富な年長者だったりします。
金槌がなければ、手ごろな石を、
杭や支柱が足らなくなれば、木や竹を削り、
針金やヒモが足らなくなれば、
ちょっと茂みに入っていってツルを用意したり、
そのアイデアが生まれる速さに、自分の機転の悪さと、年長者の知恵を思い知ります。
さて、まだまだ機転が利かない自分は、
便利な道具を探しに行ったりするのに、片道40キロ以上ある市街地に買い物にいきます。
その道のりは普段、四万十川沿いの国道で景色を眺めながら小一時間走らせます、
ですが、ものすごく蛇行している四万十川に沿って走るのは、
随分と遠回りをしているような気になり、
地図でしらべた市街地まで山を越えて一直線の道を選んだ時の事。
こんな道を30分くらい走り、上り坂が下り坂になり、傾斜も段々と緩くなり、
“このペースでいけば、近道はっけん!”と思っていた矢先、
まさかの通行止め。仕方なく車を転回させていたら。
「こーんなとこで、なにしゆうが?」
と話しかけられて、そのおじいちゃんとは出会いました。
このおじいちゃんの住む家は、通行止め箇所の唯一山側にあり、
集落から孤立した状態。寝たきりの奥さんの為に通う病院にも、
以前は30分で行けたのが今では1時間半かかるらしい。
復旧工事も崩落が大規模なので、すでに一年近く保留になっているのだとか。
苦労が多いであろう状況を聞き、
どんな風にその境遇を励まそうか考えていた自分を、
おじいちゃんが「ちょっとこっち来い、見せたいもんがある」と呼んでくれた。
連れて行かれた先にあったのは、木工機械や大工道具がそろった広い作業小屋。
「通行止めになって暇だから、この作業小屋を建て直し始めてんだ。
すごいだろ」と、案内してくれた。元大工のおじいちゃんは、
図面を書いて、裏山から木を伐って製材し、
基礎工事だって1人でやっているというから驚いた。
「大工の経験しかないからわからんけど、この後はこれに挑戦しようと思っている。」
と見せてくれた、歯車のようなもの。
「これで、発電機できるとおもわんか?」
耕運機のホイールに、塩ビのパイプを縦割りにして固定したこの道具は、
テレビで見た水力発電の水車を、身近なもので作ってみたのだそう。
家の裏に、ちょうど良い沢があるらしく設置の計画を楽しそうに話してくれた。
とりあえず、今は寂しさというのは感じてない様子。
ここの通行止めは、さらに一年近くは復旧しないだろうと言われているらしいのに、
「まぁ、しょうがいない」と、今ある状況を受け止めたうえで様々な事に挑戦しているおじいちゃん。
御年75歳でありながら、少なくともあと2軒は建て直す計画。
「できんかもしれんけど、できそうなのにやらんのは勿体無い、だろ?」だそうです。
あの挑戦する姿勢が機転やアイデアの源なのだろうと、おじいちゃんが残したと思われる轍の上を走り帰りました。