母乳が出ない②搾乳、乳腺炎編
母乳が出ておらず子どもを飢餓状態にさせてしまった前編に引き続き、搾乳と乳腺炎と帯状疱疹と睡眠不足で死にかけたお話です。
母乳が出ていないことに気づいた私は、産後3日目から「搾乳」をはじめました。思ったように母乳がでない、赤ちゃんがオッパイを吸えないなどにあてはまる人は、自分の手で搾乳することで母乳の必要性を脳に覚えさせ、母乳の分泌に繋げていくのだそうです。「搾乳」のイメージは牛の乳搾りのようなもんで、メモリの入った哺乳瓶を乳首の下に固定し、乳頭から2cm離れた場所を親指・人差し指・中指でつまんでひっぱって押して、母乳をせこせこためていきます。ただ、母乳の分泌を促す一番の方法は赤ちゃんに直接吸ってもらうことなので、自分で搾乳をしつつ、オッパイも吸わせながら(1日に8回以上吸わせることが分泌に繋がるそう)、お乳が出るようトレーニングしていきます。
搾乳のイメージ図。が、こんな風にうまくは絶対にいかない…
しかーし、この搾乳がたいへん面倒で泣きたくなります。私の場合は、左右15分づつ合計30分絞っても、最初はほんの20mlしかたまりません。赤ちゃんの胃の容量が30~50mlくらいなので、足らない分は粉ミルクを追加して飲ませていました。
赤ちゃんが母乳をどれだけ飲んでいるかは、mg単位で計測できる乳児用の体重計で計測するそうです。それは母乳をあたえる前とあたえた後の体重の差で飲んだ母乳の量を計測するものらしく、「授乳室」に置いてありました。全ての産院に「授乳室」があるかは分かりませんが、日赤にはこの部屋があって、子どもが泣きやまず相部屋の人に気をつかう場合や、子どもの体重をはかったり、おっぱいをスタッフに見てもらいたい時などにこの部屋を利用できるんです。夜中にママさんたちがよく徘徊していて頭がおかしくなったのかと思っていたのですが、この部屋を利用していたんですねぇ。
そして一番大変なのが、この搾乳作業や体重の計測は3時間ごとにやらないといけないので、睡眠時間がさらに削られひどい寝不足になることです。しまいには乳首に亀裂が入り痛みはじめ、痛いからといって搾乳や授乳をさぼっていたら母乳がつまってオッパイがカッチカチになり、乳腺にしこりもできて、炎症がおき発熱、そして乳腺炎とフルコースです…
切れた乳首には母乳×ラップで処置を。メデラのピュアレーンも良かったです。ニップシールドは全く使えなかった
実際、産後のスケジュールはこんな感じでした。
::::::産後ママのスケジュール:::::::
AM8時:母親の朝食
9時:授乳×オムツ交換×寝かしつけ
10時:搾乳、赤ちゃんお風呂と検診
11時:母親の検温
12時:授乳×オムツ交換×寝かしつけ
13時:搾乳、母親の昼食
14時:来客
15時:授乳×オムツ交換×寝かしつけ
16時:搾乳
17時:
18時:授乳×オムツ交換×寝かしつけ
19時:搾乳、母親の夕食
20時:母親のシャワー
21時:授乳×オムツ交換×寝かしつけ
22時:搾乳
23時:
0時:授乳×オムツ交換×寝かしつけ
1時:搾乳
2時:
3時:授乳×オムツ交換×寝かしつけ
4時:搾乳
5時:
6時:授乳×オムツ交換×寝かしつけ
7時:搾乳
産後ママの毎日は、以上のような時間軸で1週間、さらに退院後2ヶ月ほど続いていきます。どうですか? 大変でしょ? しかも退院して家に帰れば、この流れに家事が加わります。突然の来客や病院出産関係の支払い手続きがあります。私なんてゲストハウスの仕事まで加わりました。一体いつ寝ていたのでしょうか。両親なり旦那さんなり、誰かの手助けがないと確実にウツになるか、DVを行ってしまうかもしれません。でもその可能性は充分にあると私は思います。
とにかく子育てと自分の体をラクにするコツは、やっぱり「母乳」なんですよね。母乳がチャーチャー出るようになれば搾乳の時間を睡眠にあてられるので、ママさんはとってもラクになります。また、授乳しながら子どもを寝かしつけられるので、抱っこで寝かす負担も少なくなってさらにラクになります。もちろん栄養も満点、免疫物質まで含まれている優れもの! だからこそ、病院も「母乳育児」に取り組むし、助産師さんも厳しく指導するし、ママさんたちも頑張るんです。産後は優しくしてくれる、いたわってくれるなんてのは甘い話で、産婦人科はむしろ教習所のようなもの。家に帰って助産師さんがいなくても一人で判断できるよう、育児についてしっかり勉強する場所なんです。
なーんてことは経験した今だからこそ分かりますが、この頃の私は母乳育児の本質を全く理解していませんでした。それは産後に渡されたテキストやタマゴクラブを読むだけでは想像しにくいことで、理解がまったくできないんです。なぜ子どもが泣くのか、なぜ3時間おきに授乳するなのか、なぜ1時間でもズレたらいけないのか、なぜ私のオッパイはでないのか、なぜこの病院はそうまで母乳にこだわるのか、なぜ担当の助産師さんが時間ごとにコロコロ変わるのか… 母乳育児に力を入れている病院なら、座学の1つや2つくらい行った方が良いとも思いますが、私みたいに「なんで? なんのために?」なんてつべこべ言わず、とにかくやるしかないのかな。とにかくやってやって、全てはやりながら徐々に分かってくるのでしょう。
粉ミルクの種類もたくさん。散々迷って私はアイクレオをチョイス!
ただ、母乳がベストなことは確かだけど、やってみて本当に母乳がでない場合もあるので、その時は粉ミルクに頼っても良いと私は思います。母乳で育てるために最大限の努力をしたのなら、残念がったり罪悪感など感じず、堂々とミルクを使ったら良いのです。私はきちんと母乳が出るようになるまで2ヶ月もかかりました。その間、母乳ではなく粉ミルク一本で育てていこうかと何度も迷いました。でも、母乳は粉ミルクよりも赤ちゃんの感染症や将来的な肥満のリスクを軽減するほか、母親が将来、関節リウマチや乳がん、糖尿病などになる確率も低下させてくれます。そのうえ経済的だし、簡単で便利だし、親子のコミュニケーションがより深まるなど、あらゆる面でメリットがあります。それに、「どうしても母乳がでない」人は2%ほどらしいので、私のように母乳が出なくても、時間はかかりますが、くじけず、諦めず、粉ミルクを上手に使いながら、トラブルを乗り越えて母乳育児を成功させて欲しいと思います。
ただ、粉ミルクを使うことになっても、それはそれで全く問題はありません。母乳が一番いいのは確かだけど、粉ミルクで育てても母子の絆は育まれるし、十分な栄養分が配合されているし、なによりパパが授乳を手伝える、ママがビールを飲めるなどメリットだってたくさんある! 粉ミルクを使うことに罪悪感や劣等感など持たず、自信をもって、上手に使いながら、ストレスフリーで子育てを楽しむことがベストです!!!!!
あと大事なアドバイスが一つ。多くのママを悩ます「乳腺炎」についてです。「乳腺炎」になると、以下のような症状があるそうです。
①おっぱいが熱を持ち、しこりができる
②おっぱいが赤みを帯びる
③おっぱいを押すと痛む
④熱、寒気、頭痛、関節痛
⑤腕を上げる、赤ちゃんを抱っこすると胸のあたりが痛む
⑥半透明の白い色ではなく、黄色っぽい母乳が出る
ちなみに私は②と⑥以外の症状がでました。
「乳腺炎」にならないコツは、搾乳を続けることはもちろんのこと、早い段階でオッパイマッサージに通うことが一番だと私は思います。これは母乳外来がある産婦人科で対処してくれるので、お乳がはって痛みが続くようならすぐに通って欲しいです。乳腺につまった母乳が気持ちよく開通するのはもちろん、助産師さんの搾乳テクニックを学べるので、とにかく炎症を起こす前の早めの受診と訓練がオススメです。
私の場合は最悪で、オッパイがカチカチにはって脇までズキズキ痛むようになったので母乳外来を受診したところ、「乳腺炎」にくわえて「帯状疱疹」だったというオチでした。一度でも「帯状疱疹」を経験した人なら分かると思いますが、これがめーーっちゃ痛い。例えるなら「痛風」。風が吹くだけでブスブスと針で刺されているような感覚。帯状疱疹は極度のストレスや疲れからおこるようなので、育児中のママさんはお気をつけくださいね。頭の中に帯状疱疹ができたという友人もいましたよ。
また、乳腺炎も帯状疱疹も薬を飲めば治るのですが、授乳中は薬が母乳を通じて子どもに移行するので、薬を飲む間は粉ミルクを代用するとか、弱い薬を処方してもらうとか、漢方で治したりと、完治するのに時間もかかります。なので、やっぱり炎症を起こす前の早めの受診がオススメです!
10ヶ月で卒乳した我が子。歯もはえて離乳食の美味しさに夢中♪
そんなこんなで、我が子の誕生は、大きな喜びと共に、言いようのない不安と、身体的な疲れと痛みをもたらしました。それでも、出産、育児という経験は、私の人生に想像以上の学びと喜び、新たな価値観、そして人間らしさを芽生えさせたように思います。独身時代も刺激的で楽しかったですが、結婚・出産・育児は、たとえばドラクエの経験値を仲間と共にあげていくような感じで(もちろんそんな簡単なは話ではないですが)ハマルと面白いんですよね。今は、戦士の私と、舞踏家の主人と、魔法使いの子どもが力をあわせて人生の経験値をつみ、人間力というレベルをあげていく楽しさに夢中のような気がします。
というわけで、「出産・育児」という新しい教科書を開いたばかりの私たちですが、子どもを通じてたくさん学ばせてもらい、家族みんなで楽しく成長していけたらと思っています。
子どものまわりにはかつおゲストハウスのお客さんもたくさん♪ おかげで人見知り知らずの子どもに♪