地域おこし協力隊を上手く活用するために必要なこと
- 執筆者 多田朋孔
- 所 属特定非営利活動法人地域おこし
2016/05/14
先日メールで、某県の移住相談員の方から質問を頂きました。質問の内容は箇条書きで整理すると以下のようなものでした。
【質問内容】
●地域おこし協力隊の任期後の生活について起業、NPOと選択肢を設けているが、生活が成り立つには、かなり時間と様々な面でハードルが高く、苦労している現状がある
●起業でなく真剣に地域のために何ができるかを考えている人が、任期後の生活に苦労している
●役場主導になると、必ず地域住民のニーズがなおざりとなってしまう
●十日町市では地域おこし協力隊を導入する際に集落の人々が手を挙げるようになっているのがすごいと思うが、どうしてそういう状態になったのか、ポイントを教えてほしい。
●地域おこし協力隊の募集、任期後の生活についての取り組みを教えてほしい。
これに対して回答したのですが、十日町市で地域おこし協力隊の受入体制が良くなっていくまでの経緯を整理し、地域おこし協力隊を上手く活用できてない人にとっては役に立つ内容になっていると思ったので、一部加筆修正をした上で今回記事として公開することにしました。
【回答内容】
十日町でも最初は市長のトップダウンで地域おこし協力隊の制度が始まりました。初年度に5名の隊員を受け入れ、その翌年度に10名近くの隊員を受け入れ、その翌年度に5名ぐらいの隊員を受け入れる中で20名近くの隊員が活動しながら、その後は隊員が抜けた後に補充をする形で15名~20名を推移しています。
この間、正直なところでいうと、地域のニーズがないところに隊員が配置されたところもあります。その後、協力隊員の受け入れを辞めた地域もあります。
そういう中で当時の協力隊員が市役所に現状を報告し、改善の提案をした事で、隊員を採用する際の面接に地域の人達との顔合わせが行われるようになりました。
さらに、前回の面接では顔合わせだけでなく、夜に飲み会もするようになりました。
また、最近では地域おこし協力隊はいいものだ、という認識がある程度広まってきた事もあって、地域の側から協力隊員を受け入れたいという手が上がるようにもなってきています。
これはひとえに初期の隊員が、行政と地域の認識のギャップを捉え、きちんと行政に実情を元に改善の提案をした事や、行政が提案を前向きに受け止めて対応した事、地域の人達の中によくわからない地域おこし協力隊を暖かく迎えてくれる人が、何人かいた事だと思います。
つまり、ポイントとしては地域の人、行政、協力隊員がもしトラブルがあったとしても、前向きにみんなで協力してよい地域を作っていこうという風に物事を進めていくことだと思います。
また、最初から人数が多かったので何人かは上手くいく人がいて、何人かは上手くいかない人がいるという状況だったため、良い場合と悪い場合のサンプルを数多く経験する事が出来、行政としては地域や隊員を比較する事でどういう受け入れ方が良くて、どういう受け入れ方が悪いかという事を具体的に体感できたのではないかと思います。
また、地域おこし協力隊の募集については、正直十日町市も全体としては決して上手くできているというわけではありません。募集人数に満たない人数しか、応募して来なかったという時も何度もあります。おそらく募集面では、他の自治体で特色あるやり方をしているところがありますので、それらの色んなやり方を参考にしていただいた方が良いと思います。
私としては、どちらかというと、募集に関しても行政主導よりも、地域が自分たちで週末の体験イベントやお試し移住を受け入れるなどして、一本釣りできるようになるのが一番いいと思っています。実際、私自身が、地域おこし協力隊として今住んでいる池谷集落に着任する前に、何度も田植えや稲刈りなどの農作業体験に参加していましたし、十日町市内の地域おこし協力隊員の中には、1年や1ヶ月のインターンシップ(お試し移住)を経て、地域おこし協力隊に応募したという人たちも何名かいます。
このような形で、事前に地域との接点を持っている人に対して、地域おこし協力隊への応募を進める事で、事前にお互いにある程度知った関係からスタートできますので、地域と協力隊員のマッチングが上手くいかないという事は、ほぼなくなるでしょう。また、ピンポイントでスカウトするので、人が集まらないという事もなくなります。
また、地域主導でやるためには、地域の中に数名は必ずいる熱い想いを持った人を見つける事が第一歩だと思います。
そういう人が、地域を将来どういう状態にしたいのかという事をしっかりと引き出し、そしてそれを実現するために行政がどのように関わり、地域おこし協力隊員を受け入れるとしたら、協力隊員がどのように関わるのが良いかという事を、密にコミュニケーション取り合うというのが本質であると考えています。
【回答には書かなかったが今回の記事に際しての追記】
協力隊の任期終了後については、以外と若い人手が足りない状況でもあり、地域の人と良い関係を作る事が出来ておれば「こんな仕事があるよ」というような話を地域の人が持ってきてくれたりしますので、取り立てて行政として特別な支援をしているわけではないです。
田舎に仕事がないというのは、十日町市ではあまり感じません。私が移住してきたばかりの2010年頃は、ハローワークの求人の給与は14万円とかも多く、20万円台はほとんどなかったですが、最近は団塊世代の大量退職の影響で若い人手が不足しており、20万円台の求人もざらになってきました。十日町市は、5つの市町村が合併して現在人口が5万6000人台ですが、これぐらいの規模の自治体であれば、仕事は選ばなければあるというのが実情です。
統計的にも、全国的に有効求人倍率が高まっており、バブル期並みの状態であるため、多くの地域で仕事自体はあると思います。
こうした事は、あまり都会の人には知られていませんので、書かせていただきました。