会津の新春の風物詩
2017/01/16
- 執筆者 横山萌美
- 所 属西会津町地域おこし協力隊
福島県会津地方では、1月に新春の風物詩として「初市(はついち)」という文化があります。
西会津町では、毎年1月13日に開催されます。平日であろうと13日というのがお決まり。JR磐越西線 野沢駅からのメインストリートである“野沢駅通り商店街”に屋台が立ち並び昼間からお祭りのような雰囲気が町にも漂う一日。
30~40年ほど前までは、初市の日には早めに授業が終わり、午後からはおこづかいを握りしめた子どもたちが、初市を訪れ商店街や屋台も賑わっていたそうです。
しかし現在は、そういった光景も減り、かつてのような賑わいや活気が失われているのも、この町の現状です。それでも未だにこうした初市(はついち)という文化を大切にしている地域の方の姿を見ると、なんだかホっとします。
雪の吹雪く中、車を持たないおばあちゃんたちはわざわざバスに乗って、初市を訪れ縁起物を買い求めたりする姿を見ると、この地域で暮らす人にとって欠かすことのできない文化であると気づかされます。
さて、この地域で呼ばれる初市(はついち)とは、「商売繁盛」を祈願する神事が執り行われ、会津地方に伝わる縁起物の「起き上がり小法師」※1や「風車」※2を買い求めるお客さんで賑わいます。
今年は寒波の影響で、雪に見舞われていましたがお客さんはめげずに買い物に来ていました!
地元の方に聞いた話では、「初市の日は天気が荒れる」というほど、悪天候に見舞われることが多い、「野沢初市」。今年は例年通りの光景だったのですね。
※1:<起き上がり小法師>
“転んでも何度でも立ち上がる”という会津の伝統的な縁起物の張り子。初市で家族の人数+1個を購入して、神棚などに各家庭では飾り、子孫繁栄を願うという習わしがあります。
ちなみに赤青黄と3色ある小法師は、
赤→火の神 青→水の神 黄→金運
それぞれの願いをこめて購入するとよいのだとか。
※2:<風車>
●くるくる回り、「仕事がうまく回る。
●「元気よくまめに働ける」等、商売繁盛に縁起が良いとされているそうです。
ちなみに風車の真ん中には黒豆が付いていて、「マメに」という意味はこれから来ているのではないかということ。
初市で毎年行列ができているこの屋台への違和感・・(笑)
違和感というか・・関東出身の私にとっての「大判焼き」が、会津では「きんつば」と呼ばれていること。私の中のきんつばって、和菓子のきんつばなんだよな。でも会津ではこれをきんつばとみんな呼びます。じゃあ和菓子の方もきんつばって呼ぶのかな?むしろ大判焼きって使うのは関東だけなのか???みなさんの地域では何と呼ぶのでしょうか。
あと、面白いなと感じたのが起き上がり小法師を売っている屋台のおばちゃんの動作が、まるで占い師だったこと(笑)
まずはこうやって両手で小法師たちをすくいあげて、
トレイの上にばらっと投げて広げる、その中から起き上がるのが早いもの(?)などをおばちゃんが購入希望分を適当にチョイスするんです。
それをお客さんは購入していくのですが、私にはまるで占い師さんに1年を決めてもらっているように見えて仕方なかったです(笑)
それから前年の縁起物や御守り・御札などは、それぞれの自治区で行う「歳の神(サイノカミ)」とよばれる無病息災を祈る年中行事の中で、お焚き上げします。(歳の神は小正月の1月15日と決まっています)
私が生まれ育った地域では、「どんど焼き」と呼ばれる同様の行事が近くの神社で行われていました。
歳の神は、萱・藁・竹などを組んで写真のようにつくりあげ、夕方に火入れをして燃え上がる炎によって縁起物などは燃やし、するめやお餅を炙ってその場で味わうというのも恒例です。甘酒やコーヒー、お神酒なんかも振る舞われます。
歳の神の形や高さなどは、集落によって異なりますが火入れは年男・年女が担当することもあるようです。
ちなみに年男・年女を雪の中に投げ出すという文化もあるというからビックリです(笑) 私はまだその雪の中に投げこまれた人をみたことありませんので、分かりませんが本当なのでしょうか(笑)
会津ならではの縁起物がならぶ初市文化や歳の神を味わえる、冬にこそ西会津町を訪れるのも良いのではないでしょうか。西会津には温泉もあるので、初市や歳の神で冷えた身体を温泉で温めるのもおすすめですね。
都会で暮らしているときは地域の行事とか、年中行事というのはそんなに興味もなかったし、行事の意味も知らなかったし、調べようともしていなかった私が地方で暮らしてみて、はじめて意味を教えてもらったことや地域を知ることで年中行事と暮らしというものがつながってることを感じるようになり、興味を持ち始めることができました。
こういう感覚になれたのは、移住したからこそ。移住して3回目の会津の冬に改めて感じています。