立春を過ぎると、厳しかった寒さも和らいでくるように思います。土佐町は山間の町のため、冷え込む日は朝霧が立ち込めていたり、視界を取り囲む山の頂に白い雪が被っていたりします。
今年の1月は朝カーテンを開けたら銀世界という日も多かったです。
朝出勤時、自宅の裏山
さて、こんな山間の町では農業は閑散期ですが、林業は繁忙期です。木に水分が少ない冬の間に木を伐り出すのだそうです。それに伴って林業のインターンなどイベントごとも冬の間に集中します。
1月に土佐町の石原という集落にて〝地域密着型のインターンシップ″が開催されました。そのお手伝いをしてきたのでレポートします。
石原集落ってどんな場所?
石原集落は土佐町の西にあり、高速のインターから行くと土佐町のかなり奥の方にあります。土佐町は国道沿いに生活機能が集中しています。その国道上のトンネルを一つ抜けた先にある集落です。
そんな立地のせいか、石原はほかの集落に比べて独自の地域性が色濃く残っている気がします。
石原集落には地域行事がたくさんあり、地域に住む方々も元気です。近年、地域おこし協力隊の方々が地域に入るようになった経緯もあり、行事の様相も変わってきました。昔ながらの盆踊りやアメゴつかみ大会、バイキング形式のパーティー、クリスマスイルミネーション(!)など。
かつて旅館だった建物。イベントの際に使われています。写真は七夕まつり
夏祭り
高峯神社
そんな石原集落、平素より交流人口が多い地区なのですが、もっと積極的に地域に人を呼び込んで盛り上げていきたいという思いがあり、また自伐林家さんが多い地域でもあるということで、地域の資源を活かした林業のインターンシップを主催することになりました。
今回のインターンの拠点&宿泊施設だった、石原コミュニティセンター
今回の石原林業インターンシップは、13日間での実施。林業のインターンシップにしては少々長い期間かも知れません。
最初の5日間は、高知県立林業学校(香美市)の出張講習としてチェンソーと刈払機の授業が受けられます。そして残りの期間で石原の自伐林家さんの現場実習を行います。免許も習得できて現場実習もできるなんて、かなり盛り沢山の内容です。
今回の参加者は全部で12名。高知県内から様々な年代の方が集まりました。下は10代から上は70代(!)まで。また女性はうち3名いました。
人となりが見えてくるチェンソー操作実習
現場実習では土佐町の森林組合の現場にお邪魔し、組合職員の方に伐倒を教わります。初心者の方はチェンソーや伐倒の勢いを恐れて不安そう。
この日一日で一人当たり3~4本は伐倒の実習をしました。怖さに慣れない人、物怖じせずに軽々作業できる人、とても上手な人など、一日でその人らしさが垣間見えてきます。これがチェンソーの面白さだなぁといつも傍から見ていて思います。
現場実習で講師を務めて下さる林家さんもそう言っていました。「あの人は見ていて危なっかしい」「あの人は慎重すぎる」それはチェンソーの扱いに関する所感のはずなのですが、同時にその人自身に対する助言でもあります。
道具というものは一度慣れてしまうとマスターしたかのように思えますが、「使えば使うほどチェンソーは奥が深い」と、ある林家さんは言っていました。
免許取得したところで、本格稼働
このようにして5日間の講座が修了し、研修生の皆さんは晴れて免許を取得することができました。
で、さっそく次の日から現場で地元の林家さんと現場に入って間伐の体験(というかほとんどお仕事!)をします。
この日お邪魔したのは石原地区の林家さんの持ち山。普段は別の場所で伐り出しているそうで、この場所は20年前に間伐して以来です。
作業するにあたってまず処理しなければならない下草もボーボー。さっそく皆でチェンソーを担いで下草をやっつけていきます。
午前中の作業で皆徐々に大胆さが出てきて、急斜面をずんずん登っていくし、作業スピードも上がっていく。間伐も思った方向に伐倒できるようになってきました。
林業で危険とされる「掛かり木」(伐木した木が別の木にもたれかかること。地面に倒すのに別の作業を要し、危険度が高い)が何度か起こりましたが、その都度、林家さんの適切なアドバイスで対処することができました。
こうして現場実習一日目は無事に終了。
続いての現場は竹林
その二日後、同じく石原地区にある竹林に皆で行きました。隣接した敷地に家を建てるのに備えて、密生している竹を片っ端から伐っていく作業を行います。
伐った竹を枝打ちしていく
ところで皆さん、竹伐りの現場って見たことありますか? 私は恥ずかしながら今回初めてでした。正直私は、「樹木の伐木よりもラクにできるのかな」と思っていましたが、そうでもなかった。
確かに思い返せば、これまで同じ竹林で同じ作業をしてきた地域の人たちが「あれはしんどい……」と口を揃えて言ってました。今回その意味がわかった気がします。
竹は木に比べて(※)重量は軽く、径も細い。そのため、チェンソーであっという間に伐れてしまいます。また、軽いので倒れるのも早い。要するに作業のピッチが速い。そして竹は密生している。伐っても伐ってもまだある。
また、軽い分倒れるときに想定外の方向に倒れやすい。今回一度だけそういう場面があり、私の立っている方向に向かってきたことがあります。普通の伐木に比べて倒れるのが速く、必死で逃げました。
(※竹は植物の分類で言うとイネ科の草だそうです)
そんな大変な竹伐り実習ですが、午後になって山がスッキリしてきたのが目で見てわかりました。また竹林の中から、外から見えなかった古いお墓が出てきたりしました。
Before 土手の際まで竹!
After まだかなり竹はあるけど、陽光が透けて見えるようになりました
こうしてインターンシップの全日程が終了しました。
打ち上げ(かなり出来上がってます)
まとめ:みんな楽しそうだった
今回はチェンソーの免許取得から地域の林家さんとの現場作業までを行うということでしたが、チェンソーの免許を取得してから現場の作業に参加するという流れはすごく良かったなぁと思います。
チェンソーは林家さんたちがおっしゃるように「奥が深い」道具ですが、免許取得後にこのようにして本格的な現場体験できるというのは、鉄を熱いうちに打つ如く、深い学びになるのではないかと思います。
あと、傍から見ていて、皆慣れないチェンソーに怯えながらもすごく楽しそうでした。
女性陣3名。楽しそう!!
地域の人たちと一緒に作業したときも「皆で一緒に成し遂げた!!」という感覚がありました。
今回私はスタッフとして見ているだけでしたが、機会があったらチェンソー免許、取得しようかなぁ。