集落のお誕生日会とは?
2017/04/24
- 執筆者 横山萌美
- 所 属西会津町地域おこし協力隊
一昨年度より、町のまちひとしごと創生総合戦略会議に委員として参加しています。
福島県内でも高齢化率・人口減少でワースト5に入る西会津町。人口ビジョンや総合戦略を練る会議なのですが、町内で活躍されている町民との貴重な出会いの場でもあります。
特に子育て世代のお父さんやお母さんの意見などを直接聞ける機会はなかなか無いので、情報収集にもなるし、参考になる意見や考えを毎回得ることもできるのです。
そんな会議の中で、教えていただいた集落での取り組みの話で、大変興味深いものがありました。
それは、「集落でお誕生日会を行っている」という話。集落に暮らすひとり一人のお誕生日を毎月のように集会所に集まり、お祝いしているというのだから、びっくり!
大人になると、家族であってもなかなかお誕生日会ってやらなくなるっていうのに。この話をはじめて聞いたときは驚きました。と、同時に集落の仲の良さをうかがい知ることができました。
西会津町に90もある自治区の中で、お誕生日会をしているのはおそらくこの「向原(むかいはら)」集落だけ!(全国的にもたぶん稀な取り組みだと私は思うのですが・・)
そんな向原集落のキーマンである正充さんと町民会議で出会ったことにより、協力隊仲間の荒海隊員とご招待を受けて、向原集落のお誕生日会にはじめて参加させていただくことに。
今回はそのお誕生日会の実態をレポートしようと思います。
このお誕生日会は、今から5~6年前の「歳の神(無病息災を願う会津地方の伝統行事)」を終えた後、慰労会で集会所に集まった際に、あるおばあちゃんから、
「毎月こういう風に集まってみんなでおしゃべりしながらご飯食べられたらいいのにねぇ~」
という一言が。それを聞いた集落の人たちが、
「集落の住民は約20名いるのだから、誰かしら毎月誕生日の人がいるだろう・・」
「だったらそのお祝いを兼ねてみんなで集まって賑やかにごはんを食べよう!」
そんな話から、お誕生日会開催は集落の恒例行事となっていったそうです。この会の中心となっているのが、正充さんです。
写真に写るのが、正充さんです
お誕生日会をはじめた頃は、1品持ち寄りで会費500円というスタイルだったそうですが、高齢者から、
「何を作って持っていったらいいか分からないし、1,000円に会費を上げてもいいから、何か作ってもらえないか」
と、申し出があり、それからは正充さんが一手に料理を引き受けて作ることになったそうです。スゴイ・・!
正充さんの作る料理はどれも手が込んでいてとても美味しいと評判なのです! 写真には無いですが、「このおでんは2日前から大根煮込んで仕込んでおいたんだよ~」と。
正充さんの愛情満点のごはんは格別です。会場に来ていたばぁちゃんたちも、「どれも真似できねぇ美味さなんだよな~」と太鼓判!!
さてさて、正充さんお手製のお料理が完成したら、お誕生日会がスタートです!!!
司会の正充さんから、
「今月のお誕生日は○○さんと○○さんです!」
「○○さんは、11日が誕生日で~。今日は○○さん来れなかったけど、23日が誕生日です!おめでとうございます。」
と紹介があると、一同で「おめでとう~!」と拍手でお祝い。
「なんぼになったんだい?」
と訊かれて、
「○○歳になっちまったわい!(笑)」
という風に、会話も食事も進んでいきます。
この会にお呼ばれした私たち協力隊は、集落の人へ「地域おこし協力隊の活動」について話をしてほしいとリクエストをいただいていたので、先輩方を前に恐縮しながらも私と荒海隊員それぞれが協力隊になった経緯や現在の活動について等を語らせていただく。
お料理に舌鼓をしながら、集落の人との会話も弾んでいきます。集落の共有林のことから、お孫さんの話、猿に野菜を持って行かれた話まで・・(笑)
向原集落は絆が強い集落なんだろうな~と感じる場面も多々ありました。例えば、
集落の相関図のような張り紙が集会所に貼ってある(笑)
苗字を書かなくとも、みんなどこの家庭の誰かが分かるってすごい。隣近所とのコミュニティが希薄な都会では、他人の家族構成(名前まで答えられる)って考えにくいと思う。
西会津町で毎年開催されている「創作かかしコンテスト」で西会津町長賞を受賞
集落のみなさんで作って申し込んだかかしが見事、西会津の産業祭で入賞! 集落で出展しているのは少ないので、やっぱり絆強いよなーと感じる。
集落のおばちゃんたちがお団子を食べていると、
「喉に詰まらせて死ぬなよー」
など、笑い交じりに声かけが自然と生まれ、
「まだ死にたくねーな!あっはっは!」
と、ブラックジョークが飛び交う、この雰囲気も私は好きだ。
はじめて参加した10月のお誕生日会から2か月経ち。12月は集会所の大掃除と集落の蕎麦打ち名人とともにそば打ち会にも参加してきました!
前回とは参加者の顔ぶれも異なるため、今回もまた私の知らないかつての西会津町にまつわるお話しを聞くことができた。次は餅つき大会! 餅つきの会場は集会所ではなく、個人宅で餅つきしてみんなで楽しむのだとか。
向原に来ると毎回思うのは、移住者がこういうコミュニティにまず顔を出すことで、集落に自然と溶け込んでいくことができるのではないかと。だからこそこういう会が途絶えることなく、続いていってほしいと思います。
そして、私は次に向原集落に行く日を心から楽しみにしているのです。