海苔のソダテカタ~ちょっとおおきくなったよ編~
2017/05/08
- 執筆者 鈴木陽子
- 所 属一般社団法人 ピースボートセンターいしのまき
昨年の夏に書かせてもらった「海苔のソダテカタ~赤ちゃん海苔編~」の記事を、なんと一年ぶりに更新です!(去年更新できずみません。去年の記事の1ヵ月半後と思って読んでください。10月の出来事です。)
ちょっと長めですが、綺麗な海の写真とカッコいい漁師さんの写真に癒されながら、是非最後までお楽しみください。
「陸上採苗」から約一ヶ月間、大海原へ繰り出す日を今か今かと冷凍庫の中で心待ちにしていた海苔の赤ちゃん達が、いよいよ海に飛び出しました!
飛び出した先は石巻の海ではなく、お隣にある松島湾。陸上採苗は石巻の「万石浦(まんごくうら)」という湾のそばで作業しますが、その湾は海底が牡蠣などの殻で埋め尽くされています。
牡蠣の養殖棚は鉄パイプを組んだものを、鉄などの重しをつけて海底に固定するのですが、海苔の養殖いかだは竹を海底に挿すというとてもシンプルなもの。牡蠣の殻だらけの海底では竹を挿すのが大変です。
一方松島湾の海底は、竹を挿しやすくなおかつ抜けにくいという程よい硬さの泥でできているため、石巻の漁師さんたちも養殖いかだを使う作業の時期は松島まで車で出かけていってお仕事をするんです。
さて、石巻から車で1時間ほどかけて松島湾へ到着。海苔の漁場を見学させてもらうのは初めてだったのでドキドキワクワク。合羽と長靴を装着して、いざ海へ!
以前から話は聞いていましたが、海苔の漁場ってすごく綺麗…。湾の中なので波がほとんどなくとても穏やかで、海に挿さったたくさんの竹が鏡のように水面に映るその景色は、なんとも神秘的。
ちなみに2枚の写真のうち1枚目の竹をたくさん使った養殖いかだを「固定いかだ」、2枚目の写真の竹を端っこにしか使っていないいかだを「浮上いかだ」と言うそう。あとで出てくるので覚えておいてくださいね!
そうこうしているうちに前回に引き続きお世話になった相澤さんの漁場に到着。ついたと同時に作業開始です。
この日の作業は3日前に海に張った、陸上採苗により海苔の赤ちゃんがくっついている網を、水の上に出し乾かす作業。海苔はずっと水の中に沈んでいると弱くなってしまったりくさってしまうのだそう。そのために、網を張っているポールの上まで引っ張りあげてフックを引っ掛けておくんです。
フックの部分、分かりますかね?黒いわっかをポールの先端付近のフックに引っ掛けています
さて、ここで早速出てきます、「固定いかだ」と「浮上いかだ」。
上に書いたように、手作業で網を水の上に出すことで乾かすのが「浮上いかだ(竹ちょっと)」。自然の潮の満ち引きに任せて行うのが「固定いかだ(竹いっぱい)」です。
一見、自然に任せた方が手間が少ないように思いますが、実は逆。なぜかと言うと、網が水の上に出ている間に網を洗わなくてはならないんです。そうなると、「浮上いかだ」なら漁師さんの好きなタイミングで網を洗いに来られますが、「固定いかだ」だと例えば潮が引くのが午前1時の日はそれに合わせて海に出なければならないんです。
それが午前10時のこともあれば夕方のことも、早朝のこともあります。その時雨が降っていたら網は乾きません。「浮上いかだ」なら、「今日は午後から雨だから午前中に乾かしちゃおう」ということができちゃうんですね。これは漁師さんたちにとってかなりの負担軽減です。
海苔を洗っているところ
だったらみんな「浮上いかだ」にしたらいいのにと思いますよね? そこがまた奥の深いところ。ちゃんと、「固定いかだ」のメリットがあるんです。
潮の満ち引きというのは、一日に2回あります。だから「固定いかだ」の網は自動的に1日2回乾かされます。でも「浮上いかだ」の漁師さんたちは1日に2回網を上げたり下ろしたりしていたらさすがに手間がかかりますよね。
もともと水中で生きている海苔にとっては水の上に出ているのはある意味試練です。だからこそ、「固定いかだ」で育った海苔の方が強くて良い海苔に育つんだそう。
相澤さんの言葉を借りると『浮上いかだで育った海苔は「温室育ち」』ってことだそうです。だから相澤さんは、「固定いかだ」と「浮上いかだ」両方の海苔を作っているとのこと。
さぁ、一通り網を洗い終わったら乾くまでしばしの休憩タイム。この日は晴れでしたが風がなく乾きづらい気候だったので2時間海の上で待つことに。
その間に、相澤さんが自分の「固定いかだ」のところや他の漁師さんが作業しているところへ連れて行ってくれました。
みなさん一生懸命作業中。ちなみに白い合羽を着ている彼、震災ボランティアで石巻に来たのがきっかけで海苔漁師さんと出逢い「漁師さんたちが手間暇かけて生産している海苔をもっとたくさんの人に食べてもらいたい」と石巻に移住してきたんです!
当時はまだ未成年だったはず。ガッツありますよね。現在は海苔漁師から乾物・鮮魚を仕入れる卸売業を開業し、現場を見るためと人手不足に悩む海苔漁師さんたちの力になれればと、毎年海苔養殖のお手伝いも請け負っています。
そしてこれが「固定いかだ」です。
竹の中をゆっくり船で進んでいく感覚は、なぜか南の海を連想しました。このときは潮が満ちていたので網は完全に水の中に隠れています。
これまた神秘的…。
顔を水面ギリギリまで近づけて「固定いかだ」の海苔の様子をみる相澤さん。
相澤さんの教えてくれた通り、温室育ちの「浮上いかだ」よりもグングン成長していました! 何で私は写真を撮り忘れたのか!……ごめんなさい。
ちなみに網は一枚ずつ張られているのではなく、12枚ずつや24枚ずつまとめて張られています。横から見るとこんな感じ。
さぁっ2時間が経ちました! 網は相澤さんの予想通り乾いています。
そうしたらここでもう一仕事。成長状態が良い網を、持ち帰ってまた冷凍庫で保管するために選別して取り外しにかかります。そして残す網は引っ掛けていたフックを外してまた水の中へ。
こちらは超ベテラン漁師さん。船に「横乗り」しながらすごい速さでフックを外し網を沈めていきます。船を自在に操っているかのようなそのロックな?姿と言ったら! めちゃくちゃかっこ良かったです。彼こそ「匠」ですね!
そんなこんなで約3時間の海での作業見学もそろそろおしまい。また車で1時間ほどかけて石巻へ帰ります。お昼ごはんは14時。
相澤さん、海苔漁師の皆さん、いつもお疲れ様です。海の上で体を張っている漁師さんたち、本当にめちゃくちゃカッコいいです!
こんな小娘を船に乗せてくださり、ありがとうございました!! またよろしくお願いします。
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