生まれ故郷へUターン。まだ東京のスーパーで消耗しているの?
- 執筆者 久米可奈子
- 所 属阿南市地域おこし協力隊
2017/06/06
4月から徳島県阿南市で地域おこし協力隊として、東京から移住し、田舎暮らしを始めました。移住と言っても私はUターンで、もともとは徳島生まれ徳島育ち。
18歳の時に上京し、大学卒業後も徳島に帰ることなんて考えもせず、地下鉄にも慣れ、仕事も落ち着き、交友関係も増えて、いち東京の住民のようになってきていたのに、久々の帰省で、祖母の育てたスナップエンドウの塩ゆでのあまりの美味しさに感動し、田舎に帰ろうかなと考え始めました。・・・ただの食いしん坊かもしれません。
東京でおいしいもの、素敵なもの、おしゃれなもの、はたくさん食べてきていたつもりだったのに、採れたて新鮮野菜の贅沢さに気づいた私は、今までの価値観がくるっと変わってしまいました。
「私もシンプルでもおいしい人間になりたい!」
と、考えるようになり(今思うとちょっと意味わからないけど、本気だった)いつでも何でも買えばすぐ手に入る東京よりも、なんでも自分で作り出せる田舎の生活をしてみようと決め、転職をし、13年いた東京を離れ、春から阿南市新野町へ。
生まれ故郷とはいえ知らないことはたくさんあるし、知っていたことでも改めてみると発見があったりします。Uターンでも新鮮なことだらけ!
お遍路さん(四国88カ所霊場巡礼している人)に対して食べ物やお賽銭を差し出すことを“お接待”と言います。四国ではお遍路さんは大師様(弘法大師)と同じと考えるため、もともとは「大師様への功徳」、また「自分の代わりにお参りを託す」という意味がありますが、大変な思いをして歩いているだろう、と思いやりの精神が根底にある文化のようです。
そんな文化を持っている町だからが、みなさん優しくて気さくで温かいです。引っ越してきて知り合ったおじさんは、すぐに竹藪を見せに連れて行ってくれました。
新野町は山に囲まれているのですが、そのほとんどが竹林です。竹って日本人なら誰でも知っているし、私も子どもの頃にたけのこを堀りに行ったことはあったのですが、これが行ってみたら、とっても素敵でした。
青々とした竹は瑞々しく、春風に吹かれて笹が揺れるととても爽やかで、鳥の鳴き声もあちこち。つい、この写真をはがきにして、東京の友達に送ったほどです。
苔もかわいい
そして近所のおばあちゃんおじいちゃん、おじさん、おばさん、よそから来た私を大歓迎してくれました。みんな1人暮らしの私を気にかけてくれて、すぐに町内会にも誘ってくれました。あと、おすそ分けをもらいます。
おすそ分けもらうって、よく聞くけど、仲良い人同士でするものだと思っていたのですが、来たばかりの私にもくれます。
ほうれん草
グリーンピース
豆ごはんのレシピも教えてくれたので、すぐに剥いて作りました。
当然のことなのかもしれませんが、豆の味が濃くておいしかった!
田植え機にも乗せてもらいました。家族みんなの1年間の大事なお米なのに!
曲がっているーーーー!
そして何より、町の人の暮らし方にも驚きました。この町も少子高齢化で人口が減少していますが、少しでも楽しめるよう、お祭りを盛り上げたり、地元の山を登って町の魅力を探索したり、子どもにも子育てしている人にも良くなるよう学童保育を立ち上げたりなど、様々に活動されています。
私の、東京の賃貸マンションでの生活は、家や近所のことはなんでも管理してもらって、新聞やネットのニュースで自分の住んでいる町のことを知る、というようなもの。恥ずかしながら、自分の住んでいる町に関わるようなことはしていませんでした。
ところが、この町の人たちは、ここに住んでいる人たちの将来を考え、より良くなるよう作ろうとし、新野町を大切に思っていると、隣近所のみんなの暮らしから感じます。
何でも作って手に入れる暮らしをしようと決めて移住してきたにも関わらず、私の田舎暮らし能力はまだまだです。始めたばかりの家庭菜園では、水をあげたら苗がちょっとシャキッとしたことに感動しているレベル。
この先、この苗をどうしたらいいか分かってもいないのに、とりあえず日あたりを気にしながら水をあげて愛でています。
こんな私でも、周りのみんなの優しさに支えてもらいながら田舎暮らしデビューできています。田舎の暮らしに憧れていても、なかなか都会からすぐに出てこられるわけでもない。
考えてみたら、田舎は全国にたくさんあって、気候や風土も違えば、文化も違う。仕事も違うし、どんな人たちが住んでいるのかも本当にさまざまです。生活してみないと、自分がどのくらい田舎の暮らしに対応できるのかも分からない部分もありますしね。
実際に私も、決意してから移住先を見つけるまで、数年かかりましたし、自分の田舎暮らし能力がこんなに低いとも思っていなかったくらいです。
ただ、引っ越してきて町のことを知り、町の人たちと接して思うのは、新野町はこの田舎暮らし能力が未熟な私でも暮らし始められるような、移住してきやすい町なんじゃないかなということ。
憧れの「シンプルでもおいしい!」は、野菜も自分自身もまだまだ道のりは長そうですが、なんとかやっていけています。
こんな新野町の魅力を発見、再発見しながら、近所のおばあちゃんたちをお手本に修行していきます!