家 まち 暮らし、カコ 今 ミライ ③いい家って何だろう 〜冬の日〜

顔の写真
執筆者 池田なつ記
所 属株式会社 桐朋

2020/12/09

 新潟・上越からこんにちは、ソーシャルデザイナーの池田なつ記です!

 それでは今回も参ります〈〈上越マメチシキ〉〉〜〜! ドンドン!✧٩(^ω^*)و✧

 おさらい! 新潟県「上越地域」と言った場合に含まれるのは、上越市だけではなく糸魚川市・妙高市も合わせて3市です。

 

新潟について

 

 さてここで問題、クイズ番組などで難読地名として時折上がる「糸魚川」は、なんと読むでしょ〜〜うか!

1 いおかわ
2 いといがわ
3 しおがわ

 

 正解は、・・・の前に(勝手に)CMで〜す♪

 高橋桃太郎侍「正解は、越後製菓!

 越後製菓さんは、新潟県長岡市(中越地域の中心的都市です)に本社を置く食品メーカーさんです。

 お察しかとは思いますが、お米県・新潟には米菓やお餅の会社がたくさんあります。ハッピーターンばかうけサトウのごはんも全部、新潟県のメーカーさんです。みんな大好き柿の種もね!(←柿の種の圧倒的シェアは亀田製菓さんですが、“元祖”は浪花屋さん。マメチシキならぬタネチシキ)

 でもたぶん、米も餅も尻目にブッちぎり最強はブルボンだろうなーきっとなー。ブルボンは新潟県柏崎市、こちらも中越。上越市のすぐ東隣です。

 地元ではすでに語りぐさになっているのですが、コロナ→ステイホーム→家庭でのおやつ消費量増加で、今年、ブルボンさんの売り上げは爆上がりしてるんだとか。なるほど納得(笑)のオハナシですし、庶民の味方はこういうとき最強ですね〜ホント。

 

 勝手にCM、おわり♪(笑) それでは難読クイズ『糸魚川』の読み方は!?

 正解は2番『いといがわ』でした〜! ハイおわり。・・・中越情報のほうが多い上越マメチシキとは、これいかに??

 

前回までのあらすじ

 この『家 まち 暮らし、カコ 今 ミライ』は計5本か6本立て(ざっくり)でお送りするシリーズ記事です。

 前回までのお話は、

私のお友達
上越高田発祥の雁木町家をリノベーションして一家で暮らす吉田エリさんのご紹介

天才・オオハシあらわる
テレリレリレレレテレリレリレレレデッデッデッデッデッデッデッデッ げんじゅつしがあらわれた!

・・・という感じでお送りしてまいりました!(お時間あればご一読いただけたら嬉しいです)

 

 げんじゅつしとの約1時間半におよぶ戦闘(嘘)の末、半笑いで『佇まい展』を辞去した私&エリさん&エリ次女ちゃんのカシマシパーティは

「腹が減ってはナントカカントカ!」

とランチに繰り出すのであった──(大橋さん、その節はありがとうございました!)

 

初めての冬の日・・・の前に

 ランチのため移動を開始した車中、

 

私「大橋さん、うわさ通りの濃いキャラで(笑)」

エリさん「ふふ、でも、どうも憎めない方なんですよね〜」

エリ次女ちゃん「ダ〜!」

 

とか何とか言いながら、走ること約15分。エリさんから

 

「ランチはあそこにしませんか」

 

とご提案いただき、一も二もなく

 

「行きたいです!」

 

と連れて行っていただきました。やった〜〜初訪問『Farmer’s table 冬の日』さんです!嬉しい嬉しい♪

 

 以前から冬の日という飲食店さんがあるということは存じ上げてはいたのですが、Webサイトがなく、SNSもなく、登録されているGoogleマップもなんだか微妙な・・・え、ホントにこれ?? みたいな状態だっため(笑、余談ですがGoogleマップの情報はその後、私が修正しました)、いずれいずれと思いつつ訪問(というか所在確認)を先延ばしにしていたお店なのでした。その名の通り、農家さんが営むカフェレストラン!

 住宅地というよりも集落と呼ぶほうがしっくりくる、住人しか往来しなさそうな細い道を入って行った場所・・・いわゆる“隠れ家的”なお店です。

 2〜3台しか入らない小ぢんまりした駐車場、そこから数歩でたどり着くコージィな玄関ポーチ、そしてこの入口ドア! 軒先に立っただけでもう

 

「す! て! き〜〜!」

 

と目がハートになっちゃうこの雰囲気・・・小雨さえも良い演出になる、素朴で素敵なお店が私たちを迎えてくれました。

 

「Farmer’s table 冬の日」入口

 

 するとハート目になっている私の横を

 

「わ、久保田社長! お久しぶりです〜!」

 

と、お店とは別のほうへ小走りで駆け抜けていくエリさん・・・え? え?

 

「なつきさーん、こちら、うちの工事でお世話になった久保田建築の久保田社長です! 社長、今日はどうされたんですか? あ、こちらは池田さんと仰って・・・」

 

なるほど、先ほど大橋さんとこで話題にのぼった久保田建築さん!

 

リノベーション町家2

再々掲:エリさんは高田のまち並みの特徴である雁木町家をリノベーションし、4人家族でお住まいです。

 

 これは本当に偶然の対面だったのですが、久保田社長はこの日、冬の日オーナーの石黒さん夫妻が生活されているご自宅(カフェレストランとは別の建物)の修繕打合せでこちらへお越しになっていたのだそうです。

 出迎えてくださった冬の日の石黒理奈さんと農夫の石黒直樹さん、直樹さんと打ち合わせをされていた久保田社長、そしてエリさん。そこへ混ざって私もご挨拶させていただき、なんとその流れで

 

直樹さん「自宅もすぐそこなので、良かったらどうぞ」

理奈さん「ランチのご予約時間のことはご心配なく。どうぞごゆっくり」

 

え、え、ランチしに来ただけのつもりだったのに?? 皆さんのご縁に完全に便乗する形で、赤の他人の私までご自宅を見せていただけることになったのでした。

 

直樹さん「さすがに15年以上も経つと、電気系統で修繕が必要なところが出てきてしまって・・・今日は久保田社長にはその下見にお越しいただいたんです」

エリさん「そうなんですか〜。私、『住みつぼ衆』で石黒さんのお宅のことも存じ上げてはいたんですけど、拝見できるなんて嬉しいです。お邪魔します」

私「え、え、初対面でいきなり自宅に上り込むなんて、そんな、え、よろしいんですか・・・? お邪魔します!」

 

私は心の声が口からダダ漏れでしたが、ふふ、上がり込む歩調には口ほどの惑いがなかったよね私。「今日は建築づいてる日だ〜♪」とウキウキ上がり込ませていただきました。

 

 そうしたらば、まあ、なんということでしょう・・・!(脳内BGMはあの曲です)(安直)

 建坪はさほど大きくはなさそうなのですが(目測)、天井が高くて、回廊の構造になっていて・・・コンパクトなのにとってもゆったりとした間取り。窓からの眺望はパノラマではないのですが、丁度良く小ぢんまり、それでいて開放感。床も壁も天井も木材が基調で、薪ストーブがあって! わぁぁ〜こんな家、憧れる!

 そこへ、不意の一言。

 

久保田社長「この家は大橋さんに図面を引いてもらったんです」

私「えっっ(◎▽◎;)」

 

大橋秀三さん

 

_人人人人人人人人人人人人人人_
> 大橋さんの仕事だったー! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

大橋さん・・・げんじゅつしとか言ってすみませんでした・・・めっちゃ素敵やん・・・!

 石黒さんのご自宅はプライバシーのためここでは写真は控えますが(偶然、便乗で見せていただけただけだったので撮りませんでした)、大橋さんのお仕事ぶりについてはぜひともこちらの大橋建築設計工房 worksページから写真をご覧ください。

 さすがに直樹さんに面と向かって

 

「この家ハウマッチ」

 

と訊ねたりはしませんでしたが、家を建てる時、いちばんお金が掛かるのは基礎工事とよく言われますよね(上物のほうが掛かる場合もあるでしょうけども、、それこそ壁紙に1万円札を貼るとかすれば)。

 建坪からして、つい数刻前に大橋さんが仰っていた通り“それなりの予算”に収める形で設計されたんだろうな、というのが何となく伺えました。しかし、だからと言って決して狭苦しくはないのです。

 

大橋さん手書きメッセージ

 

 大橋さんの謳うこの理念に 偽 り な し !! だけど私の知っているよくある“普通の家”より格段に上等な、素敵なお宅です。こんな家に住みたい・・・!

 

私「はぁ〜、そうなんですね・・・この竹のお庭も素敵ですね・・・」

直樹さん「そこはお隣さんの庭なんです(笑)」

久保田社長「“借景”というやつですね。大橋さん、それも計算されたんでしょうね」

 

 どこまでも大橋さん、いい仕事をしてなさる・・・プロすごい・・・!

 この時、私のなかの大橋さん評価インジケータが爆上がりしたのは言うまでもありません。

 『変なおじーちゃん』から『すごい建築士さん』にラベリングが変更されました。『こんつらジサマ』とか言っちゃってすみませんでした。数時間のうちに評価が大ドンデン。百聞は一見に如かずとは正にこのことですよーー! ・・・!!

 

建築談義 〜 Farmer’s table冬の日にて

 思いもよらなかった素敵なひと時をいただき、そしてようやくランチへ、冬の日さんへとふたたび移動しました。

 “お手元のお料理以外はお写真ご遠慮ください”のお店でしたので、店内写真は無しです。ご興味のある方はぜひいずれぜひ、直接訪ねてご自身の五感でお楽しみください!

 お店のほうは大橋さんの設計ではなく石黒さん夫妻と久保田建築さんで相談しながらつくられたそうですが、やはり同オーナーさんですのでどこかご自宅と通じる雰囲気がありました。外観の印象を裏切らない、とても素敵なお店です。

 

「Farmer’s table 冬の日」ランチセット

季節の野菜のお料理と雑穀入りごはんのランチセット(税込1,000円)。こういう、こういうご飯が食べられるお店が欲しかったんですぅ!! なぜもっと早く来なかった私・・・!

 

 8席だけの小さなお店、そして平日だったこともあって、シェフである理奈さんも交えてのおしゃべりが続くゆっくりとしたランチでした。

 そのおしゃべりからわかったのが、エリさんは久保田社長からのお話と、久保田建築さんの季刊誌『住みつぼ衆』を通じて石黒さんの家のことをご存知だったこと、そして冬の日さんには来店したことがあり、石黒さんとは面識があったこと。

 そんなつながりがあり、しかもこの日こちらに伺う前に大橋さんの企画展に寄らせていただいたという流れでもあったので、おのずと会話は建築(家)や暮らしの話題で盛り上がりました。

 

理奈さん「17年も経つと、今日みたいに電気関係だとか、どこかしら修繕は必要にはなるんですけどね。でも、家そのものは時が経つにつれてどんどん馴染んで、新築の頃より味わいが出てきているように思うんです」

エリさん「ホントに、美しい家ですよね。木の感じも素敵ですし、自然光がちょうどよく入って、落ち着く明るさで」

私「先ほどお宅を拝見して『経年美化』ってこういうことなんだ!と実感しました。」

理奈さん「そんな風に言っていただけると嬉しいです。建ててすぐの時は、たとえば床の板材の赤っぽいところや白っぽいところがどうも目立つ気がして、気になっていたところもあったんですけど。でも年々それが目立たなくなって、飴色というか、今ではすっかり馴染んで落ち着いた色に変わったんです」

エリさん「はい。悪い意味での“古い感じ”は、全然、しませんでした」

 

デザート

ランチセットに飲み物&小菓子をつけると+600円。“小菓子”と書いてあったので小さな焼き菓子か何かが付いてくるのかと思っていたら、すごい立派なの出てきた〜! シフォンの手前はさつまいもクリーム。優しい・・・優しいお味でした(感激)。

 

理奈さん「ああいう変化は自然の素材だからこそですよね。家が完成して引き渡しの時に、大橋さんからは『10年後にしみじみと良さを感じる家を目指しました』という一言をいただいたんです。実際に暮らしてみて、その意味がよくわかりました」

エリさん「私も自宅を工事するとき、自分なりに調べたり、久保田社長にも色々教えていただいて・・・、いわゆる新建材とか、組み立て式の安くつくれる“今時の家”って、建てた時がいちばんきれいで新しくて、10年、20年と経つともうただただ劣化していっちゃうんですよね」

私「建築関係の知人に『家はゴミ』と言い切っている方がいます。極端な言い方ではありますが、つまり、だからこそ、きちんと将来を考えて建てなきゃいけないと言いたいんだろうなと。」

理奈さん「本当にその通りだと思います。私たちも、できるだけ全てが自然に還る素材にしてくださいとお願いして建てていただきました。大橋さんにはバッサリ却下された要望もたくさんあったんですけどね(笑)、もともと私が持っていた民芸調の家具を置きたいと言ったら『すべて白ペンキで塗装するなら置いてもいいですよ』とか、古民家風にしたいと言ったら『長野の蕎麦屋にするつもりですか』とか」

私「その言い方(笑)、大橋さん節ですね。」

エリさん「そういう、あの家にまつわる色々なエピソードを、“小野みさ”さんというペンネームで『住みつぼ衆』に書いてくださってるんですよね。『いい家って何だろう』というテーマで、すごく深くて面白くて、勉強になりました」

 

 ・・・女性3人+エリ次女ちゃん(元気なお返事がじょうず☆)のおしゃべりは止まることを知らず、話題は家(建築)のことから家族や地域の話にまで、どんどん膨らんでいくのでした(次回に続きます!)。

 

理奈さんのエッセイ「いい家って何だろう」

 この日の夜、エリさんがお手持ちの『住みつぼ衆』を画像で送ってくださいました。そのなかから、冬の日さんでの理奈さんのお話とリンクする部分を一部抜粋でご紹介します(発行元である久保田建築さん、書き手の小野みささんこと理奈さんからはご了解いただいています)。

 

住みつぼ衆

ペンネーム「小野みさ」さんは、石黒さんのお宅の門名(かどな)「おのみさ」をもじって付けられたものだそうです。古い家はどこも皆ありますよね、門名!

 

〜〜住みつぼ衆「いい家って何だろう③」より抜粋〜〜

 (前段略)・・・ですので、収納の多さやプロペラファン、民芸調の家具などの要望は、単なる思いつきの要望で、本当にもとめていることとは違うのだということが、大橋さんはわかっていたのです。大橋さんからは、なぜ収納は少ない方がいいのか、民芸調や古民家風ではないほうがよいということについてひとつひとつ説明がありました。

自分が本当に求めて
いることに気づいていく

 例えば、古民家風の家について、古い材、建物を活かして家を作ることはいいけれども、新しいものを古く見せようとするのがよくないということ。民芸調や古民家風の、白黒のコントラストがはっきりとした、強い印象のあるものを意図的に作ってしまうのは、店舗としてはふさわしいかもしれないけれども、毎日の生活の場である場所には、なんでもない、普通の家がいい、ということでした。

 このように、自分では、単なる思いつきの要望なのか、本当の希望なのかがわからない状態から、大橋さんとのやりとりを通して、十年後、二十年後も変わらない「本当に求めていること」を見つめるきっかけになりました。 (つづく)

〜〜抜粋おわり〜〜

 

 この理奈さん(小野みささん)による寄稿『いい家って何だろう』は⑦まであり、理奈さんのご経験や探究的思考に基づき展開していく内容は、本当にじっくり考えさせられる素晴らしいものでした。こういう季刊誌を発行されていること、そしてこういうお客様や建築士さんとお仕事をされている久保田建築さんも素晴らしい会社さんだなぁと感心、感服です。

 聞けば、『住みつぼ衆』は協力業者さんや顧客の方にしか配布していないということなのですが、今のこの世の中にもっとひろく読まれる価値のある内容だと感じています。全文ご紹介できないのが歯がゆいくらいです。久保田さん、ぜひ紙だけでなくサイトかSNSで公開していただけませんでしょうか〜〜!(笑)(本気)

 

 それではまた次回! 最後までお読みいただき、ありがとうございました♪

 

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