生い立ち話続編:海外滞在歴2年、31歳でニュージーランドに会社設立
- 執筆者 ホディー愛
- 所 属リアルニュージーランド
2020/12/29
もともと前編後編の2部構成の予定だった私の長い長い自己紹介。
探検部で自分の「大好きなこと」に出会い、ニュージーランドに来ることを決意。
日本人にとって無名の田舎ネルソンにある怪しい会社リアルニュージーランドに出会い、今の夫との縁に恵まれました。
そして、現在私はリアルニュージーランドの旅行事業の代表をしています。恥ずかしながら2部に収めきれなかった私のストーリー、最後にこの経緯と思いをお伝えします。
当時31歳。海外滞在歴も短く、英語にも自信がなく、旅行業界での経験も皆無だった私が・・・ニュージーランドで会社を新規に登録し、事業を引き継ぎ、代表になりました。
エイベルタズマン国立公園でカヤック(お仕事です)
きっかけは、豊富な経験でも、燃えたぎる野心でもなかった。
1年限りのワーキングホリデーが終わり、一度日本に帰った後今の夫と暮らすためにネルソンに戻ってきて、家族や農園関連の仕事を手伝いながらのんびり暮らしていました。
そんな中ある時、リアルニュージーランド創設者藤井さんのお友達がネルソンに雑誌の取材に来るということで、私はディナーに呼ばれて彼らにお会いしました。
自然写真家の柏倉陽介さん、ライターの櫻井卓さん。おふたりとも自然やアウトドアを愛し、リラックスした人達で、とても居心地が良かったのを覚えています。
この日は2人とも日本からネルソンに到着したばかり。これから藤井さんがエイベルタズマン国立公園でのカヤックキャンプ、南島最北端ゴールデンベイへの絶景ドライブ、そしてネルソン市内の見所の数々をご案内するということでした。
そして取材旅行が終わり、彼らが日本に帰るタイミングで、「すごく気持ちの良い人達だったからまた会いたいな」と思い、ネルソン空港に見送りに行きました。
そこで、チェックインを済ませてから「コーヒーでもどう?」と言われテーブルにつき、取材であった楽しいハプニングの話などを聞いた後に3人に言われたことは・・・
「愛ちゃん、リアルニュージーランドの旅行事業の代表になって運営しない?」
というのも、
「せっかく素晴らしい記事になりそうなんだけど、旅のコーディネートとガイドをしてくれた藤井さんが、もう旅行の問い合わせは受け付けないと聞いて、同じような旅をしたい人にとって問い合わせ先がないことに困ってる。」
と。(それって2人が取材に来てくれてから伝えたんですか、藤井さん!? と突っ込みたかった・・・。けど聞けなかったので真相は分かりません)
そこで、
「今後同じようにネルソンの良いところを案内してもらうなら、愛ちゃんが1番だと思って。だからさ、愛ちゃんがリアルニュージーランドの旅行事業を運営したら良いんじゃないかな。旅行の仕事、やりたかったんでしょ?」
ただ2人に手を振って見送るだけだと思って空港に来たのに、旅の話のついでに、という軽〜い感じで、事業譲渡の提案を受けたのです!
その際の取材の記事が掲載されているマガジン『HOUYHNHNM Unplugged(フイナムアンプラグド)』
Magazine for Hip – ヒップなファッション、カルチャー、ライフスタイルなど幅広く掲載しているファッション情報誌。講談社から年2回のマガジン発行とWEBマガジンもあり。
※掲載は#4(2016年秋冬号)でした。 ネルソンのことだけで12ページも!
自分で会社やる?私で出来るのか?どうしよう?
それまでは会社員として働くことしか考えていなかった私。事業譲渡は、自分でニュージーランドで企業登録をして、リアルニュージーランドの事業を代表として運営するということ。急な提案に戸惑い、すぐにYESとは言えませんでした。
見送りまでの間に、柏倉さんと櫻井さんは、<自分のやりたい事をして生きる事の楽しさ> を語ってくれ、藤井さんは <もし旅行事業を私が引き継ぐなら最初は分からないこともあるだろうから、出来る限り協力をするよ> と言ってくれました。
ひとりで真剣に考え始めてみると、私の脳の怠け者サイドは、早く答えが出したくて、
「いや無理でしょ、旅行業の経験もないし、いきなり会社経営するには若すぎる」
と言います(この時点で31歳)。
しかし過去にばりばり働いていた時の私を覚えているエネルギッシュな方の脳は、
「今が若過ぎるとしたら、いつなら若過ぎないの?」
例えば35歳でようやく会社運営に踏み切って1から始める場合、今31歳で始めるのと比べて利点はあるのか? その時に自信を持って起業に踏み切れる自分になっているのか? その時には同じようなチャンスがないかもしれない。
「今始めたとしても、精一杯誠意を尽くしてやれば、出来ないことなんて何もないはず」
これは日本での前職での経験から得られたもの。
役職があるわけでもなく、もちろん重要な案件には部長や社長が同行してくれていたものの、一社員として常に責任感を持って営業をしてきました。
まったく畑違いの食品業界での経験ですが、例えば短い商談での会話からバイヤーやお客様が必要としているものを汲み取ること。自分の知識やコネクション、生産現場での経験などから役に立つ情報や商品を提供することなど。どれをとっても、きっと遠く離れた日本でニュージーランド旅行を計画してくれているお客様のお手伝いをすることに活かせる、十分な経験をしてきたのではないか。
「私にはニュージーランドでのビジネスをよく知るパートナー(今の夫マット)と、経験豊富な藤井さんという最強の協力者がいる」
と、怠け者サイドを言いくるめてくれました。
演説してるみたいな、海鵜さん。エイベルタズマン・コーストトラックにて。
それから約数ヶ月後。ニュージーランドで会社設立の登録をしました。
申請はオンライン上。会社名を取得して、代表者(DirectorとShareholder)の情報を入力しただけで、審査もなにもなかったと思います。当時まだ永住権もありませんでしたが「ニュージーランドに住んでいますか?」の問いには、住んでいるので「Yes」。パスポート情報を入力する欄もありません。
翌日には会社設立の証明書がメールで届きました。かかった費用は、会社名の取得に約$10、会社登記に$150ほど。ニュージーランドは最もビジネスをしやすい国、と聞いたことがありますが、ここまで手続きが簡単だとは・・・。
※2016年8月時点の体験です
経験豊富なわけでもない、英語がペラペラなわけでもない、そんな私が会社の代表として旅行業界の様々な会社と取引をするのも、最初は勇気がいりました。
しかしニュージーランドの人達は本当に心が広く、心底フレンドリーで、ミーティングなどをしていてもあまり「ビジネス」を感じさせず、「協同する仲間」という感覚で、事業規模や人種を問わず私を温かく受け入れてくれました。
最強のパートナーである夫や藤井さん、地元ネルソンとニュージーランド各地の協力企業やガイドさん達、たくさんの人に支えられて、私のやりたい事を好きなだけ出来る今があります。
スチュワート島ラキウラ・トラックにて
事業開始から4年余り
今分かるのは、仕事への自信というのは、お客様に感動体験をしてもらうことで得られるものだということ。
仕事のクオリティーは、多種多様なお客様ひとりひとりと常に真剣に向き合うことで、言い換えればお客様の協力によってこそ、向上していくこと。
経験を積めば積むほど、自分のスキルを活かしてより良い体験をしてくれる人が増え、アイデアが湧いてきて、どんどん楽しくなっていくこと。
決断を先延ばしにするほど、ネガティブな感情がまとわりついて身動きがとれなくなってしまうこと、多くの人が経験していると思います。
事業譲渡の話を頂いたときに、あのタイミングで受ける決断が出来て本当に良かった。
「チャンスは掴みに行くのではなく、向こうからやってくる。その時に受け取る準備をしておくことが大切。」
これは私が新卒で就活中に出会った企業の社長の言葉。その会社の社員になることはありませんでしたが、なぜかいつまでも心に残っていました。
自信を持ってチャンスを掴みに行く方が格好良いような気もしますが、本当に絶好のタイミングで自分に向かってやってくることもあるようです。
それを受け取ることが出来たのは、周囲の人々や環境に恵まれていたこと。そして自分の可能性を信じることが出来たからです。
今は新型コロナウィルスによるパンデミックの影響でほぼ事業休止状態ではありますが、まだまだやりたいことがたくさんあります。
あのタイミングで始め、4年間で多くのものを得たからこそ、なお今後の可能性の大きさを信じて疑わず、再開したときが楽しみでなりません。
これで私の生い立ち話は終わり。今国境が封鎖している間には、今しか出来ないことに色々と取り組んでみようと思います。
そしてまたニュージーランドで日本からのお客様を迎えることが出来るようになったときには、以前よりもさらに一風変わった面白い話が出来るようになっていられたらいいな、と思っています。
12月のニュージーランド
日本でも師走と言われるように忙しい12月。ニュージーランドは何に忙しいかと言うと、「クリスマスパーティー」です。
友人同士や家族とのクリスマスパーティーがあるのはもちろん、多くの企業が、役員側が従業員のためにパーティーを企画し、そのパートナーや子供達も招かれます。
南半球のニュージーランドは夏に入り、12月下旬の日本の冬至の日にはこちらでは夏至。1番日照時間が長くなります。そのため、クリスマスパーティーもレストランだけではなく公園やビーチで開催されることも。
2020年12月12日撮影:遊具をレンタルして遊び場を作ったり。子供達の社交性が磨かれますね。
パーティー後半には、この通りみんな友達
さらに、簡単なミニゴルフや、海でのクルーズなど、スタッフ全員でちょっとしたアウトドアアクティビティに参加することも。
友人の務めるブリュワリーでは(アクティブな独身男性が多いからか?)昨年は全員でスカイダイビングをしていました!社長、太っ腹。
ピクニックパーティーでは、ケータリングの食事。(写真は一部。デザートもあり)
サンタが子供達へプレゼントを配られたり、役員からのスピーチも、まずはスタッフを支えてくれている家族へのお礼から始まります。
常に家族が生活の中心であると考えが根付いているニュージーランド。りんご農園の仕事は、労働時間や日数が季節や天気に左右されます。そのため、特に忙しい時期に向けて、家族の理解を得ることが不可欠なのです。
ニュージーランドのクリスマス。他の国の都市と違い、イルミネーションなどは比較的少ないように思います。夏のため、夜が短いのも理由のうちのひとつかもしれません。
この写真は、ニュージーランドでクリスマスツリーと呼ばれる木、ポフツカワの花。海岸線沿いに多く見られ、毎年クリスマスの頃に満開になります。
さて、旅行会社の私自身は、ネルソンの地域観光局のクリスマスイベントで、地元企業との交流を楽しみました。
実は現在のニュージーランド、新型コロナウィルスの市中感染がありませんので、国内旅行がとても盛んです。そのため世界的に大打撃を受けている旅行業でも、小規模でサステイナブルなビジネスの多い田舎町ネルソンではコロナの影響を理由に廃業する会社もなく、逆にアクティビティや宿泊施設の形態によっては例年以上の満席率のところもあるようです。
もともと繁忙期のみ雇用されるガイドさんが多いのですが、やはり今年は全体としては雇える人の数が減ってしまっています。その体力のありあまったガイドさん達には、この夏にはりんごの収穫の仕事を進めてもらうように、こっそり営業をして回りました。(海外からの季節労働者の方達の入国制限が厳しいので、代わりに・・・)
2020年12月3日撮影:りんごの実はみるみる大きくなり、りんごらしくなってきました。
このまま全て育ってしまうと大きくなれない&接している部分に日が当たらないので・・・
一枝に2個ほど(品種により異なる)残し、余分な実を摘み取ってしまいます。もちろん、形が悪いもの、傷が付いているものを優先して落とします。
最後までお読み頂きありがとうございました。