田舎の冬の過ごし方「冬は何したらええが?!」〜その① 原木しいたけのコマ打ち〜
- 執筆者 吉田晶子
- 所 属フリー
2023/03/24
この記事が出る頃は桜も咲いてすっかり春かもしれませんが、今回はお題のとおり、初めての冬の山暮らしから、田舎の冬仕事をテーマに数回のシリーズで書いていきたいと思います。
あまりにもスローペースだった年始
夏は草刈りと夏野菜の収穫、秋は冬野菜の植え付けと収穫と時々DIY。昨年は目まぐるしくバタバタと終わってしまいました。
それに対して、年明けはあまりの寒さからか、野菜や草花は休眠。苦行のごとくの仕事だった草刈りも、草刈り機にすら全く触らない日々の中、やっていたことと言えば薪割りと焚き火くらいのものでした。
1日おきの仕事。着火剤の代わりになる杉の枯れ葉、雑木集めや調達後の薪を小さく割く。この作業、地味にしんどくて面倒です・・・。
会社勤めをしていた頃とは違い季節労働もなくて、おまけに今年の冬は寒すぎて外に出る気がせず、編み物などしてのんびり部屋で過ごす日々・・・。
天気が良く乾燥した日はサツマイモやしいたけスライスの干し物作り
スローライフと言えばそうなのかも知れません。
コロナ禍の自粛期間もそうでしたが、家に引き篭もっていると、なんだか罪悪感に苛まれる貧乏症な性分でして・・・
そんな中田舎で冬にやるべき仕事を調べてみると、あった!あった!あれも、これも・・・
先ずは原木しいたけのコマ打ちからご紹介したいと思います。
原木しいたけの生産者はこの地域のキーマンだった!
原木しいたけのことを書くのにいきなり何?! というような展開ですが、先ずは今回原木しいたけのコマ打ちを習った、香美市で農作業の類に従事している人なら、絶対ここを知らない人はいないと断言できるお店とその店主を紹介させてください。
「勇にぃの店」(ゆうにぃのみせ)と読みます。
ほら!Google mapにも出てるんです。
このお店の存在を知ったのは、まだ香美市で会社勤めをしていた時でした。上司から場所の説明を受けた時に出た、『ゆうにぃの店』というワードに思わず、
「はい?なんの店ですか?」
と聞き返したくらいインパクトあるネーミングです(笑)。
その数年後に、まさかこのお店がある集落に住むとは、思いもよりませんでした。
今では自分の住んでいる地域の説明をする際、
「“勇にぃの店”の近くです」
と言っています。
で、このお店なんの店かというと・・・
農作業や山仕事に欠かせない草刈機や耕運機、チェンソーなどの販売や修理をしてくれるお店です。
そしてこの店の店主である、「ゆうにぃ」こと、公文勇吉さんは原木しいたけの生産者でもあるのです。
作業中の勇吉さん。農器具のことならなんでも教えてくれます!
山小屋風の可愛らしいお店にはいつも入れ替わり立ち替わりお客さんが絶えません。
飲み屋でもないのに、こんな風なお客さん同士の団らん風景がこのお店のデフォルト。
山暮らし初心者マークの新参者のわたしには到底入っていけない山仕事や機材についての四方山話に花が咲いています。
この地域で創業20年以上の貴重なお店
元々森林組合の職員だった勇吉さんは、定年退職後しいたけの生産と並行してこのお店を始められました。
どこの地域にもこのようなお店はあるのかと思いますが、ここの雰囲気と存在感がとても印象的で、このお店のこといつ記事にしようかと考えていたところ、原木しいたけのコマ打ちのおかげでお店の紹介と大好きな原木しいたけのことを書く機会に恵まれました。
お客さんは香美市全域〜県境の徳島県木頭にもおよびます。
小さいお店ですが頼れるお店。村で唯一の診療所のような・・・。そう、例えるなら農機具の診療所ですね!
この地域になくてはならないお店です。
原木しいたけのあれこれ
話を原木しいたけに戻します。
このWEBマガジンを読んでる方がどのくらい『しいたけ』についてご存知なのか不明なので、まずは原木しいたけとは?!というところから始めます。
これらは菌床しいたけと言いハウスで栽培され、スーパーなど全国に流通しているのはほとんどこれです。
対してこちらが原木しいたけ。
ほだ木に穴を開けて、そこに椎茸の菌を埋め込み自然環境下で育てます。
生の状態は消費期限が短いため、生産地内でしか販売できません。旬が過ぎたら天日干しの袋詰めが売っていたりします。
今回なぜ原木しいたけを作ろうとしているのか?
それは、原木しいたけが本当に美味しくて大好きだからなのですが、高知に来るまでは原木しいたけを食べることはおろか、存在すら知らなくて初めて食べた時はその美味しさに、とても衝撃を受けたものです!
四万十在住時にもらった原木からできた椎茸。
子どもの頃の最も嫌いだった食べ物が椎茸だったのが信じられません。
原木しいたけは全国各地で栽培されていますが、上記のような理由によりほぼ産地のみで消費されるため、都市部に居た頃はなかなか食べる機会がなかったのでした。
コマ打ちスタート!
ここからは勇吉さんの指導のとおり、順にコマ打ちのやり方を紹介しますが、実際やってみたい人にとってはYouTube等の動画で見た方がわかりやすいかと思いますので、ここではサクっといきます。
①ほだ木のお掃除。苔や汚れをブラシできれいにする。
汚れがあると菌がまわりにくいそうです。
本来は木の伐採からが仕事ですが、ほだ木は勇吉さんが調達してくれました。
ほだ木に適しているのはクヌギかコナラ。これはクヌギです。
②ほだ木にドリルで穴を開ける。
間隔は約17cm、そして2列目は斜め下6cm程度ずらした位置から下です。
③穴に菌を入れて金づちで埋め込んでいく。
以上です!単純作業ですがこれが何十本というまとまった量だとそれなりに大変です。
あとは置いておくだけ。期間は来年の秋まで。な、長い〜!さてどうなることやら〜
来年の秋には「しいたけが出来ました〜!!」という記事が書けることを願っております!
散歩中のニャンコのいい足場になっています。
おまけ・しいたけを使ったおすすめレシピ
①しいたけのたたき
道の駅とおわのバイキングで有名な四万十川流域の郷土料理ですが、県外から高知に遊びに来た友人に振る舞うとほぼ全員、「作ったよ〜!」と写メをくれるほど、簡単なのに意外と知られていないお料理です。
本当に簡単なので作ってもらえると嬉しいです!
◆材料(二人分)
●しいたけ(大サイズで5枚)
※原木しいたけが手に入らない場合は菌床でもOK。
●薬味
玉ねぎスライス、小口ネギ、もみじおろし、ニンニクのスライスなどお好みで。
●タレ ポン酢またはしょうゆ・柚のす(柚子の絞り汁)・砂糖
◆作り方
原木しいたけを厚さ1~2cm程度スライス切りにし、片栗粉をまぶして揚げるだけ。
薬味はお好みで。タレをかけていただきます。
しいたけ以外の味付けはカツオのたたきとまるで同じ。
ちなみに高知県東部には特産品の茄子のたたきもあります!
②しいたけのクリーミーリゾット
本格イタリアンのリゾットは生米から作りますが、今回は時短家庭料理ということで、雑炊と同じ手順で作ります。
◆材料(二人分)
●炊いた米(1合)
●水 400㏄
●しいたけ(大サイズ5枚)
※菌床でも可。干ししいたけを水で戻してもOKで戻し汁はスープにも使えます。
●ニンニクひとかけら
●ホイップクリーム 100cc
●粉チーズ 大さじ4
●ローリエ1枚、無い場合はコンソメ
●パセリまたはイタリアンパセリ少々
●オリーブオイル 大さじ3
●塩 小さじ2 黒胡椒少々
◆作り方
1 しいたけを約1~2cmをスライス。
2 ニンニクはみじん切り
3 鍋にオリーブオイルを熱してニンニクのみじん切りを炒める。
いい香りがしてきたらしいたけを投入。
うっすら焼き色が入るまで火を通す。
4 3に水とコンソメを入れてスープを作る。塩、胡椒で味を調えたら米を投入。
5分程度中火で煮込む。とろみができ水分が少なくなってきたらホイップクリームを投入。
雑炊で例えると丁度卵を投入する状態になるとホイップクリームの入れ時
5 焦げないように時々かき混ぜながら、中火で約3分煮込んだら粉チーズを入れ、火を止めて混ぜる。
6 盛り付け・・お椀に盛ったら追いオリーブオイル、黒胡椒をふりかけて、パセリを置いたら完成!
本格イタリアンの場合は、ポルチーニというトリュフと同じくらい高級なキノコを使いますが、田舎の直販所でも簡単に手に入る原木しいたけで、家庭でもなんちゃってイタリアンが楽しめます!
今回仕込んでできたしいたけで、早くお料理を作りたいなぁ~!!