過疎でも起業はできるという仕掛けとは?

2015/10/13

 

 こんにちは。ソシオデザイン(徳島県上勝町)のおおにしです。早いもので、第二回目の原稿。

 秋で山菜がおいしいとか、まったけがおいしいとか、鹿肉の焼き肉がおいしいとか、そういうグルメな情報はさておき(笑)、今回は、前回の続きです。前回、起業家を育てるために、手軽にゆるい移住を可能にさせるシェアハウス、初期投資をこちらが行い、模擬起業ができるシェアカフェなどの仕組みを作ったというお話をさせてもらいました。

 

徳島 シェアカフェ いちじゅのかげ

 

前回の記事の最後にこう書いて締めくくりました。

 

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 交番なら注目を浴びやすいし、面白いのではと最初に手掛けてみました。3部屋あり、すべての部屋にピストルを保管できる場所があるなど、なかなかおもしろい作りでした。

 シェアカフェのほうは、とても初めての人は来られない山頂手前に作りました。この古民家は築250年(古い梁だけが当時のまま)という由緒あるおうちで、空き家になっていたのをリノベーションしました。看板も景観に配慮して小さくしたものですから、いろいろ迷う人が続出しました。こういった仕掛けをもとに最初はスタートしていきました。
 次に、どういうふうにやっていったのか。いやそもそも、このシェアハウスもシェアカフェもうまくいったのか。次号に続きを載せる予定です。

 

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 シェアハウスのほうは、約120万ほどの改装費をかけて、風呂場などの水回りなどを除いた7割がた自分たちでDIYしました(キッチンと風呂場にお金がかかりました)。この物件は、3年で投資分の減価償却が終える(満室想定)ので、3年ごとに新物件をリノベーションし、シェアハウスビジネスを展開していくのはおもしろいなという着想からでした。遊休資産である物件を修繕し、貸し出していく手法は、高松時代に学ばせてもらった「ひだまり不動産」の手法が役立ちました。

 ひだまり不動産は、古い物件をリノベーションし、デザイン性の高い物件に仕上げていくのが上手な会社で、空き家が増える過疎では、このリノベーションの手法しかないなというのは頭にずっとありました。ただし、過疎の物件は取得するにも賃貸するのも、非常に安い相場のため、設定できる家賃もそれなりの価格でしかできない。そのため、ビジネスとするには厳しい部分もあり、「低コストでリノベすること」、これしかないというのが実情でしたが(笑)。

 

 次にシェアカフェですが、起業家を育てる装置としては、うまくいったといえば、うまくいったとも言えます(数は少ないので成功とまではいえないですが)。参加してもらった日替わり店長さんも4年間で約40人ぐらい、起業も町内外合わせれば、飲食4事業その他1事業(町内2事業)と、スモールビジネスを生む場にはなりました。また、この2015年4月からシェアカフェは事業譲渡し、株式会社上勝開拓団として生まれ変わっていますので、起業孵化器(インキュベーション)としては一定の成果を上げることができました。

 

徳島 シェアカフェ いちじゅのかげ

 

上勝開拓団 シェアカフェ いちじゅのかげ

 <上勝開拓団>

 

 もう少し仕組みをオープンにしていくと、こんな感じで運営していました。

 

<最初の頃の話>

 

 最初から、集客から管理まで一元化したかったので、facebookをベースにしようと考えていました。町内のお客様を呼ぶには少なすぎるし、顧客単価も上げられない。徳島県内でSNSをしているような、情報感度の高い層=口コミしても信用される層に狙いを定め、観光型カフェにしつらえを考えてました。

 そうなると、都会というか、街中ではぜったいにできないもの、環境にこだわる必要がありました。ほんとうは、カフェ向きの物件がほかにもあったのですが、ぜんぜん借りることがかなわず、偶然2年ほど空いていた古民家を借りる方向で進めていきました。この古民家を借りるにあたっては、本当に偶然の出会いで、まあ、外灯もなんもないところで山頂に近い場所。集落数7戸という場所。案内するにも一苦労する場所、まさにこれは秘境な感じがあるなあということで準備に入りました。
 たまたま大家さんが大工さんで、水回りはすでに修繕されていて、屋根も直すところもなく、最低限必要なカフェ用のキッチンをしつらえ、厨房機器と什器などをそろえて、約70万ぐらいかけて改装しました。保健所に申請し、「シェアカフェいちじゅのかげ」で屋号を登録。あっというまの3か月ほどで形ができました。

 

徳島 シェアカフェ いちじゅのかげ

 最初のスタートアップメンバーも、フェイスブックをやっている町内外のメンバー。これは、フェイスブックの日記を見ていて、「うずうずしているんだろうなあ」、「やりたいことがあるんだろうなあ」というメンバーを事前にチョイス。そしておおよそ3人をリストアップしていて、フェイスブックにスタッフ募集の声掛けをすると、予想通りのメンバーを中心に5人ほど集まってきました。みんな料理や菓子、パンなどができる人たちで、万全のスタートでした。日替わり店長さんとは、場所代として使用料をもらう仕組みにしましたが、あくまで模擬起業の場なので、低コストで気長にできる仕組みにしました。また、日報を共有することで、各自の献立、工夫、広報などがオープンで、週1回の日替わり店長でも、残りの5日間のノウハウも手に入れることができます。

 

 これが2012年11月(シェアハウスは9月に完成)。こうやってみせると、うまく「成功している」ようには見えます。が、その裏では、いろいろ綱渡りをしたり、争いがあったり、救われたりと様々なドラマが待ち構えていたのでした。

 

次号後半に続く^^

 

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