第4回 自信をつけるまでのセーフティーネット
- 執筆者 古川智恵美
- 所 属一般社団法人いなかパイプ
2019/07/16
今年の3月に突然行われた『「いなかパイプが求める「いなか求人」~ない人って何!~トークライブ」。いなかパイプとも関わりの深いおふたり(青木将幸さん、岡田拓也さん)とササクラレオで話をしました。テーマは「ない人」について。
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テキスト連載第4回。いなかパイプはどんな役割なの?という話に。1年間いろんな仕事やってみたあとは、フリーランスになる、どこかの会社に就職する、いなかパイプで働き続ける、という選択肢がある、と伝えています。最近、自分に合う働き方、生き方を模索している方からの相談を受けることが多くなりました。
第4回 自信をつけるまでのセーフティーネット
岡田:農業の場合、繁忙期だけ働き手がほしい。以前はその瞬間だけバイトやパートさんを募集していたので、結局働き手が離れていってしまう。でもこれだと閑散期は他の場所で働けるのでずっとこの地域に居られることが実現出来そうですよね。
レオ:そうなんですよ。いなかパイプがここで暮らす人たちのセーフティーネットになれればいいな、と思っていて。そんなに高くない給料ですけど(笑)、固定給をもらえて、仕事の波はあるかもしれないけど頑張って働いて、自分の給料分は稼ごうねっていうルールはありながら。
1年2年やってくると結構みんな自信がついてくるんですよね。最初から働く人たちにはフリーランスになった方が稼げるよと伝えています。自信をつけてフリーランスになって今までやっていた仕事をやってもらうのはOKなので。もちろんいなかパイプで働き続けるのも大歓迎ですけど、そういう選択肢もあるよってことです。自信をつけるまでの期間、いなかパイプがセーフティーネットになって雇うよというスタンスです。
岡田:いいですね。一番ハードルがあがる瞬間は独立するとき。食べていけるのか、保険料は大丈夫かな、とかあるじゃないですか。だからそこを担保してくれつつ、セーフティーネットを張りつつ、田舎で暮らしていけるような段取りをしていけるよってことですよね。
レオ:そういうことです。それを実現していこうよと!
岡田・マーキー:素晴らしい。
レオ:田舎ベンチャーです!
岡田:そうですよね。いなかパイプはベンチャーですよね。
レオ:ベンチャーですよ!危なすぎてもう。よく生きているなと思いますよ(笑)四万十に来て早10年経ちました。
マーキー:おめでとうございます。
レオ:四万十へ移住してきて10年。よく生きてきたなーって。僕が生きてこられたわけだから、生きられないはずがない。
岡田:どんな仕事でもあるんだなって。単価とか、その仕事ひとつあたりの給料はグッと下がると思いますが。元気だったらいいよ、とか立てたらいいよって話があるんだったらどうとでも生きていける。懐が深い。
マーキー:田舎の方が生存しやすいんだね、都会だと自分の家賃・食費を稼ぎ出すだけでもある程度以上のビジネスが必要だと思うけど、田舎は固定費が下がるのでとりあえず生きていける。それって大事よね。
レオ:僕はそういうところでしか生きてきてないので、都会のそういう厳しい暮らしがわからない。都会の人からそういう相談があると「そんなに大変なのー」って思う。
岡田:みな、無理してる感じはあるのでは。都会で大活躍して稼いでます、という人だと生活は楽だと思いますが。ギリギリです、という生き方をしている人も多い。
レオ:仕事は選ばなければ山のようにあるので、お金のために働くではなくなってきているな、と相談を受ける中で感じている。給料良いけどなんか違う、もっと働きやすい環境がほしいとか、暮らしを優先させたいとか、生き方を探している。自分に合う働き方や生き方を探す人が増えてるな、と感じます。だから仕事内容はどうでもよい、となってくるのかな。
岡田さん:それってどんな人なんですか?例えば大阪とか東京とか都市圏にいて、もう疲れたからという田舎へ行きたいという問い合わせ?
レオ:この前あったのは、専門的なことを留学までして学んできて関西圏で働いていて、キャリアアップのために東京に転職したけど、入った会社でいじめがあって、上司は上に対して成果をあげるために部下を使って圧力をかけてくる。同僚も上司に色々言われるのが嫌だからその人を生贄にして、陥れていくみたいな雰囲気がある。だから「意地悪されない社会にいきたい」という相談がありました。
夢を持って働いているはずなのに、夢がどうでもよくなって、意地悪されない世界へ行き、農業でもしようかな、と。「半農半X」というのを見て、WEBでも勉強してやってみようかなって。いやいや留学までして勉強してきたものがあるんだから、それ生かしましょうよ、と思いましたけど。田舎にはこういう仕事があって、あなたの能力はこうやって生かせますよ!ということを力説しました。
その人はドラマの世界の話だと思っていたいじめが自分自身に起こった。たまたま運が悪かったのか、世の中の会社はどこもそうなのか、もう常識がわからないと言ってました。そうやって夢も諦め田舎へ、という考えになったみたいです。東京で僕が出展したイベントに来ていて、僕が200枚ひたすら配ったチラシを受け取ってスタッフ募集説明会に来てくれました。
マーキー:そうですか…。
レオ:あとはベンチャーで頑張って働いているのに、もっと出来るでしょと言われて怖いって思ってきました、とか。今の状況をなんとかしたい、とか。自分は都会ではないのではと思い始め選択肢を探しにとか。いなかパイプは探さないとWEBでなかなか出てこないんですが(笑)、探しに探して見つけてくれて。WEBを熟読して良さげだなと思って四万十に来たという人たちもいます。
(⑤へつづく)
ゲストプロフィール
青木将幸さん( 青木将幸ファシリテーター事務所 ) http://www.aokiworks.net/
1976年生まれ。熊野出身。環境NGO・A SEED JAPANに関わる傍ら「それぞれの持ち味が発揮される組織づくり」に関心をよせる。95年よりNPO向けの組織運営トレーニングの開発とファシリテーションに関わる。企画会社ワークショップ・ミューで修行期を過ごした後、2003年に青木将幸ファシリテーター事務所を設立。以来、毎年100回ほどのペースで会議・ワークショップ・参加体験型研修の進行役をつとめている。2012年より拠点を東京から淡路島に移し、国生み伝説のある島から日本中に出かける日々を送っている。著書に「ファシリテーションを学校に!〜深い学びを促進する〜」 https://amzn.to/2Oj2vdQ などがある。
岡田拓也さん(株式会社ande代表)
1988年、兵庫県豊岡市生まれ。いなかと都会を行ったり来たりしながら、ビジョン起点での仕掛けづくりを行う。2015年より、全国各地のまちづくり事業に携わり、まちづくりと地方移住とに関するメディアを立ち上げ、運営。全国100人以上のキーパーソンにインタビューを行う。2017年に起業し、複数拠点(宮崎・東京・高知・大阪・山梨)で暮らし、働く。人文知の社会実装がテーマ。