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町と住民を魅せる
さかわ観光協会
竹花綾さん
高知駅周辺の市街地から西へ車でおよそ一時間。大型店舗が点々と建つ国道沿いから、道に合わせて建物を整列させたような旧道へ入ると、路面が石敷きに変わり、白壁の建物が並び始める。歴史ある建物の中には、慶長5年創業という酒蔵もあるという。新しい建物も白壁で仕上げられ、意識的に整えられているのであろう街並みを眺めていると「なにか貴重なモノに出会えるのでは?」と興味が湧いてくる人は少なく無いはず。
そんな小路の中にある旧浜口家は、江戸中期から酒造をしていた一族の家屋らしい。玄関脇に置かれた「ご自由に見学ください」と書かれた黒板に安心しつつ敷居を跨げば、「こんにちは」と声をかけてくれるのは、さかわ観光協会の方々。 この建物で2013年10月から開店したばかりのカフェでは、観光客だけでなく近隣の方が利用することも多いようで、まさにご自由に立ち寄れる場。庭に植えられた山野草は、近隣のボランティアさんの手によって手入れをされているらしい。週末になると、町内のNPOが行う町並みガイドツアーに、大型バスで訪れたツアー客をガイドさんが引き連れているのを見かけるシーンも珍しくない。
そんな町並みの一角で近隣の商店やNPO、行政職員の間に立ち観光事業の中間支援組織として立ち上がった団体がさかわ観光協会、ここで働きはじめた竹花綾さんにお話しを伺いました。
場所の決め手がなく、鶴の一声で
-佐川町に暮らすようになったのはなぜですか?
一昨年、東京の美術大学を卒業して、卒業後も作品制作をしたい気持ちはあったのですが、美術と別のことをしながら制作につなげたいという気持ちもありました。どこか場所を決めて、何かやろうという気持ちになっていて、いなかの地域の人と交流しながら、制作に還元できるような仕事を見つけたいと思っていました。
地域の伝統的な技術に興味があって、伝統工芸が有名な金沢、岐阜あたりを考えていたんです。ただ、それ以上の決め手がなくて。大学4年で、今一緒に住んでいる彼に出会って、東京では畑を手伝ったりしていたのですが、彼が佐川の実家に戻ることを決めて、一緒に来ないかと言われました。じゃあ、そこにしよう、と。わりと気持ちはすぐに決まったんですが、親の説得をするために長野に一度戻りました。親も妥協してくれたんだと思います。完全に行っていいよとは、言ってもらっていませんが、押し切った形ですね。
-そうだったんですね、来てみていかがですか
来てみたら、落ち着いて暮らせるし、楽しくやっています。観光協会を通してデザインとかさせてもらったり、色んな人に出会えることで、自分に還元できる。仕事を持たずにどうなるかわからない状態で来たんですけど、今はやりたいことをできてるラッキーな自分。人との出逢いの中で仕事も見つけられたし、タイミングが良かったんですね。
勤めた場所で知り合いができるから
-来てからは、スムーズに仕事が決まったんですか
仕事を探すのはやっぱり大変でしたね。
最初はハローワークで見つけて、須崎市(※佐川町に隣接する市)の高校で進路関係の事務をやってました。けど、期間限定の仕事だったので退職してからはどうしよう、となっていたんです。ハローワークに行っても、仕事がないわけじゃないですけど、選ぶと無いんですよね。これは人とのつながりの中で見つけるしかないなと思っていたら、佐川町の役場で産休の方が出て「やりませんか」って。移住したときに、役場職員の方からのアドバイスで、佐川町の人材バンクに登録してたんですよ。もうちょっと自分で探してみようかと思ったんですが、とりあえず働きながら探すのがいいかなと思って決めたんです。
役場にいながら仕事を探すといってもなかなか見つからなかったですけど。ずっとここに居るつもりもないし、どうしようと思いながら働いていたら、新しく立ち上げる観光協会の話が出てきたんです。4月、観光協会が設立されたら、仮の事務所が役場の2階に置かれて。自分は観光なんてタイプじゃないなんて思いながらも、気になって。そのときまだ観光協会の職員は2人でしたが、とりあえず仲良くなっとこうと思って、しょっちゅう2階に行ってました。
-役場にいてよかったですね
良かった事は他にもあって、佐川町の事を知れましたね。地区や部落の名前も覚えられたし。地域の情報も集まってくるし、そこは思った通りで。良かったです。
役場を通じて、頼まれて看板を作ったりとか絵を描いたりもありました。慣れないことなので苦労しましたけど、少しは手応えがあって。地域の中で人や場所と関わりながらまた何か作りたいなと思っていたので、それが観光協会を受ける動機につながりました。
それと、仕事を探している時に、やっぱり、佐川町で働きたいなって。 高知市内まで出れば色々求人もあったりしたんですけど、佐川に住むので佐川のおもしろい人ともっと知り合いたいと思って。どこかに勤めるとその周りで関係が拡がっていくので。須崎市に勤めていた時は、須崎の人とはたくさん出会えたんですが、住んでいる佐川町での知り合いはなかなか増えなかったですねえ。働く場所って大事です。
みんなで一緒に作ってる現場
-今の職場環境はいかがですか?
職員は5人で、それぞれの事務的な仕事をやりながら、喫茶の準備、接客、掃除とか皆でやる部分もあって、それによってバランスが凄く保たれてると思うんですね。皆でやるところは、喫茶の準備とか上下関係なくやってます。コミュニケーションとりながら、「お皿用意して」とか言って。それがあるので、普段から意見を言ったり聞いたりしやすいと思います。
職員各自の役割が何となくあって、首から下げる名札を作ったときもちょっと意識して、それぞれのイメージカラーをつけたりとかもしましたよ。建物の環境もすごくいいですけど、仲間っていう雰囲気が楽しいかな。自分のペースでのびのびやれるところだなと思ってます。
-立ち上げたばかりの環境で苦労も多いと思いますが、
やっぱりなんでもやらないといけないので、結構バタバタするというか人手不足をたまに感じつつ、喫茶の注文が入ったら事務所に誰もいなくなっちゃうとか、そういうこともありながら。
でも、気づいたところをそれぞれがやって、支えあいながらやってる感じがしますけどね。
常に、コミニュケーションを大事にと気を付けています。逆に何かうまくいかないときは、大体、そこが原因ですね、多分。
基本的には浜口邸の建物の中にいることが多いです。たまに町内で紅葉するようなところを今どんな風かなって見に行ったりとか、イベントがあったら行ったりとかもありますね。今までは、フェイスブックを使っての情報発信が主でしたが、ホームページが12月にできあがったので、これからはそこでも発信していきます。
そういえば、卓上の花。私が生けてるんですけど、今までそんなに植物に興味もなくて、全くお花を生けたこともなくて。植物の町というのがあって、力を入れたいところなんですが、難しいです。これは裏とか、庭から採ってきてます。最近寒くなって、なくなってきて、牧野公園に上って集めたり。苦労して集めて、片手にブーケができるんですよ、野草の。ちょっと面白さを感じてますけどね。まだまだです。
でも、やったこと無いことも色々挑戦していけるので、そこは面白いですよ。
人の視点を通して地域を知れる仕事
-この仕事ならではの経験は何かありますか
植物もそうだし、歴史とか文化に対しても必然的に覚えていかないといけない、っていう仕事なので、ただ住んでいたら知らないこともどんどん知っていけるし、現場の住民の人の声を聞きながら、知っていけるっていうのがこの仕事ならではかな。
あとこの近くに住んでいる、くろがねの会(※町内にある観光関連のNPO団体)の皆さんが、ずっとこの地を見てきてる人だから、その人の思いを通じた歴史とか話を聴けるんです。ただ本とかを読んで知るよりも、もっと思いを含んだ何かを受け取って、それを取っ掛かりにして私も発信できるかなっていうのがあります。デザインするときには、お洒落さよりも、思いが伝わるかに重きを置きたいですね。
佐川町は、豊かさのバランスがとってもとれてる町だと思います。いなかだけど、不便に感じない、自然の豊かさと生活の豊かさ両方ある。あと、目立った観光施設は少ないんですけど、何気ない風景がほんとにすばらしい。
同じ景色でも、天気によって全然景色が違ったりするので、毎日通る道でも光とか時間によって、はっとしたり、うわ凄いって感動したりとかするので、ほんとに何気ない場所が観光資源になるんですよね。飽きないです。
―インターンシップでの仕事内容は?
題して「地域の魅力を、ワカモノ視点で発信!新設観光協会で、地域PRツール製作プロジェクト」。地域の方へのヒアリングを繰り返しながら、PRツール作りに取り組んでもらいたいと思っています。
まずは私たちの仕事を手伝ってもらいながら、観光協会の仕事や地域に慣れてもらって、地域で感じ取ったものをアウトプットとして何かまとめてもらいたいと思っています。チラシや販促物を作ってもらってもいいし、商品やイベントの企画でも何でも、得意な方法で。なので、私が教えるというよりは、一緒になって新しい発見をしていけたらいいな~と思います。こっちも新鮮な思いを聞きたいですもん、私も1年半住んでいてだんだん新鮮じゃなくなってくので。そういう刺激はかなり求めてます。