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次世代の農業チーム
株式会社岡林農園
野田岳さん(左)/岡林富士男社長(右)
愛媛から高知に流れる仁淀川の中流域にある越知町は、人口6000人あまりの小さな町。仁淀ブルーと言われる透明で美しい川が雄大に流れるそのほとりに岡林農園はある。「農園」といえども、農業作業だけをやっているわけではない。「のむジュレ」「ぶんたんゼリー」「ぶんたんドリンク」など、文旦(ぶんたん)を始めとする高知を代表する柑橘類を加工し、商品開発された商品を全国各地に販売するという6次産業化を実現している会社だ。
つまり、岡林農園でのインターンシップは、1次産業・2次産業・3次産業というすべての切り口から、その現場を経験することができる研修となる。
次世代を担う人たちの人財育成の場
岡林農園がある明治地域は、昔は400世帯あった地域だったが、今では200世帯になった。子どもの数も10人弱となり、3つあった小中学校も今年度で閉校となることが決まっている。暮らしている人々も60歳以上の方ばかりで、まさに少子高齢化が現在進行形の過疎地域だ。
こんな地域でなぜ農園をやっているのか?「地域に人がいなくなると、山が荒れてくる。最終的に枯渇し、便利のいいところが残る。ここでなぜこんなことを始めているかというと、ここが私の生きた場所なので、ここを拠点にして、生きた証をつくっていきたい。」と岡林社長は語る。
岡林農園は、個人の農家から株式会社に法人化させて5年が経つ。「おいしい、あんしん。岡林農園」を企業理念として、約150戸の農家と連携しながら約20haの農地でブンタン・ユズ、小夏など柑橘類の栽培を行い、清涼飲料水やお菓子など加工商品の製造・販売をし、その商品数は約60アイテムにもなっている。また、絞った果汁を、原料用として製造メーカーに卸したり、レストラン・居酒屋などへも販売しており、法人化して当初は約30社だった取引先が、今では600社以上にもなっているという。
「人を入れるための組織づくり」として法人化されたという岡林農園は、役員5人・社員8人の会社だが、役員以外の働いている人は、8割が20代(6人が20代で、最年少19歳1人、30代1人という構成!)という次世代を担う若者が中核となっている会社なのだ。
岡林社長は「今、特に力を入れているのは、次の世代を担っていく若い世代の教育・人財育成。生産する部分はもちろんのこと、営業力をあげていくことに力を入れている」という。会社を設立して、ゼロからのスタートで、5年しかたっていない。どうやって職員をフォローしているのかというと、外部からのコーディネーター・コンサルも入れ、勉強会・研修会に参加させながら、営業の部分などは、トレーナーをつけ支えているということだ。
? まさに、会社全体で、会社の成長とともに、地域産業の担い手である若者の人財育成を行っているということになる。
「原料をつくるところから製造・販売までできる経験者はなかなかいない。普通は、農業だけ、製造業だけ、販売業だけ、と縦割りなので、それらを横にしたようなすべてできる組織はない。なので、独自でつくっていっている。」と岡林社長は言い、組織づくりへのチャレンジが垣間見える。
農園だけど「農業」だけではない仕事
「岡林農園とあるので、農業だけをイメージして、農業だけに特化したように見えるが、ほんとはそうではないよ、と伝えておきたい。」と岡林社長が言うとおり、岡林農園での仕事は1次産業・2次産業・3次産業と、すべてを横断しての仕事となる。
一番イメージがしやすい農作業の部分については、「柑橘系の農産業は草刈するか、肥料をまくか、時期によって収穫できるか、とことぐらいで、畑作のように一杯はない」とのこと。このインターンシップでの狙いは、「農業自体のプロセスを学んでもらいたい」ということにある。「製造・販売などそれぞれわかれると農業じゃないように見えるけれど、生産するところから、流通販売するところまで、成果物の流れも含めて、その中にどんなものがあるのか、経営全部見てもらうことがいい勉強になる。」と岡林社長は考えている。
? そして、インターンシップでは、参加する人の希望をきくようにして、思いっきり農業したい、販売したい、商品開発したい、という希望によって、何に重きを置くのか、携わる仕事の比重を考えていくようにプログラムを考えていきたい。また、近所にしょうがをつくっている農家さんや、野菜を育てる農家さんもいるので、そういうところで手伝うことも希望によってはできる。
このように一見、やりたいことが何でもできるインターンシップのように見えるが、逆を言えば“自分は何がやりたいのか”ということをしっかり持って参加して欲しいという意図が込められている。
岡林社長は「何をやってもいい、可能性はなんでもある。学校で学ぶときに、よく“農業”など特化したものを学ぶが、すべてを学ばないと、特化したものは学べない。わからない。特化したところに攻め口を持たずに、広くやりながら、自分に合った特化したところを見つけ、深めていけるかだ。」と言い、「全体を見るということは、経営・マネジメントを見るということ。経営ができると、どこでも生きていける。そういう人が特化して独立していくことができる。農業だけじゃなくてもいい、販売業だけでもいい、パン屋さんになってもいい。そういう人が、将来的に増えてくると、自分たちが育てた人によって、自分たちの食材が、全国・世界へ行くようになる。そうするためには、そのこと自体を理解してもらうのが一番いい。」と考えている。
? つまり、岡林農園がやっている取り組み自体をしっかり理解して、独立した人になって、一緒に仕事ができる人財になってほしい。そういう次世代の担い手を増やしたい。そして、そういうカタチでこの地域を発信していきたい。そう願って、インターンシップの受入を行っている。
仕事も生活も会社全体で両面楽しめる人間関係
今年度入社したばかりの野田さんは、高知大農学部を卒業し、愛媛出身だが高知が好きになり、高知に残ったという。
「仕事でやってみたいと思っていることが、他にはないような発想を持ち、今までになかったものをつくりたいということと、大学で学んだことを活かしたいということ。生産の入り口から、製造の出口までそろっていて、全部の行程にある程度関わりたい。知識を活かしたいところもあるけれど、営業活動もやりたいんです。と言って入社し、今、営業の方もちょっとづつやらせてもらっているので、そういうところが魅力でした。」と野田さん。「大きな会社だと、農業だけ、営業だけ、となってしまうし、営業だけに特化したとしても、高知が好きで残っているのに、2,3年たったらどこぞの営業所に飛ばされるのもいややったので」と岡林農園に入社を決めた。高知のどこが好きですか?と聞くと「みんな楽しみながら生きようとしている。あまり重く考えない、みんなポジティブで、明るい性格がよかった。」と答えてくれた。
若い社員のみなさんは、仕事とは別に、音楽の話したり、野球見に行ったり、遊んだり、そういうつながりを持って仕事をしており、「仕事は基本的には、リスクも考えないといけない、暗い話もしないといけないけれど、そういう人間関係だと、ガチガチした関係になる。会社全体で両面楽しめるような、仕事をやって楽しめるような、両面でいい関係を持てたらなと思います。」と野田さんは社内での人間関係をつくっている。
そして、今後やってみたいことは?と聞くと「会社で音楽イベントをやってみたい。音楽イベントでは、これで500円とらんやろう!という商品を売ったりしているので、そういうドリンクを売って、そこで稼ぐ!みたいなことをやってみたい。(笑)」と、趣味と実益を兼ねた密かなる企みを持っているようだ。
こんな人間関係を社内でつくりながら、同世代同士がタッグを汲んで、6次産業にチャレンジしていく、そんな次世代の農業チームが岡林農園という会社なのだと思う。
岡林社長も「目指しているところは、岡林農園が大きくなるのではなく、ここで育った、農業やっている人や店をやっている人、バンドをやりながらドリンク売る人、そういう人たちが学びたいときには集まれる、そういう人間関係をつくって、クラスターのようになったら面白い。そういう方向がいいのではないか。それが社会構造につながっていく。」と考えている。
“やるき”と“本気”がある人に来て欲しい
研修生として、どんな人に来て欲しいか?と岡林社長に聞いてみた。
本気で仕事をしたい、とりに行きたい、やりたいことがある!という人に来て欲しい。やりたいことが見つからなくてもいいけれど、それを真剣にとりに行くことが大切。遊び半分、腰掛程度、観光程度だと、何をやってもものにならない。すべて“やる気”と“本気”がなければ、逆を言えば、“やる気”と“本気”があれば、なんでもできる。そして、しっかり目的・目標を持てる人。具体的な目的目標じゃなくてもいい、漠然としててもいい、そこを目指したいから来るという目的が明確にあれば構わない。
また、最近は、議論する人が少ないと感じる。人の話を聞きたいという人をいるが、その人のやっていることは、自分のやっていることではないので、自分に当てはめて同じことはできない。「話を聞く」のではなく、「話をする」というくらいの人がいい。「話をきいてよ」というぐらいの人が来ると面白い。
このように、岡林農園の考え方に共感し、積極的に仕事に取り組むことができる人であれば、充実した学びをこのインターンシップで得られるだろう。