「はたらきかた」のマッチング いなかマッチ
1400年続く集落のバトンを受け継ぐ自然卵養鶏家
●受入事業者
参鍋養鶏場 参鍋修一さん
受け継ぐ、という選択肢。歴史ある集落の一員として、新しいことにチャレンジしながら、自分の営みをつくりませんか?
自然の中で働いて暮らしたい人、養鶏に興味のある人、人のつながりを感じながら暮らしてみたい人にオススメです。
標高400m、山あいの小さな集落
四国のほぼ中央に位置する愛媛県四国中央市。まちの中心部から車で約15分。山をぐんぐん登っていったところ、標高400m付近に切山集落があります。
平家伝説の里として知られ、1400年の歴史があり、安徳天皇も身を隠したという言い伝えもあるなど数多くの遺跡や祠が点在し、今では観光資源となっています。
人口は、20数戸・50人ちょっとの人たちが暮らしている小さな集落です。
観光名所:国指定重要文化財 真鍋家住宅(出典:いよ観ネット)
観光名所:生き木の地蔵
そこで参鍋養鶏場を営んでいるのが参鍋修一さん。自然卵養鶏でつくるこだわりの卵。近隣の自然食品店や地元の有名菓子工房への配達、注文を受けた個人宅へ直接発送をするなど、安心で美味しい卵をつくっています。
訪れたのは7月上旬。日陰に入ると涼しい風が心地よく感じられます。真夏でも夜はほとんどクーラーをつけなくても寝られるそう。
自然卵養鶏の面白みは自家配合のエサにある
まずは鶏舎を案内していただきました。広い鶏舎の中にいるのは茶色のメス鷄670羽と一回り大きい白い雄鷄30羽。鶏舎は2ヶ所あり、合わせて約1300羽の鶏を飼っています。毎日約1200個の卵を産むそうです。
元々は修一さんのお父さんがブロイラー種養鶏をしていました。その養鶏の仕方は、様々な病気を防ぐ目的で多量の薬を使う「薬漬け養鶏」でした。参鍋さんはそのやり方に嫌気がさし、35歳の時に薬を使わない自然卵養鶏に切り替えました。
「収入減は覚悟の上でした。父も反対しませんでしたね。父も変えたいと思っていたのかもしれません」
と話してくれました。
自然卵養鶏の面白みは自家配合のエサにあるといいます。エサの配合が変われば卵の味が変わってきます。エネルギー源(トウモロコシ)・タンパク源(魚粉・煮干しいりこなど)・ビタミンミネラル(米ぬか・ふすまなど)など15,6種類を混ぜあわせてオリジナルのエサを作ります。
珍しいのは近くにあるチョコレート工場からもらったカカオのカスを入れているということ。以前は20品目を混ぜあわせて作っていたものの、年々、加齢とともに力仕事が辛くなってきています。
そこで今回、参鍋養鶏場をバトンタッチすることも見据えて、養鶏を一緒にやってくれる人を募集することになりました。
「養鶏が初めてという方には自分が30数年やってきたやり方をイチから教えるので大丈夫です。うちの卵を扱いたいと近くのデパートから話がありますが、ひとりではこれ以上鶏の数を増やせない。人が来てくれたら鶏を増やして、取引先を広げることもできると思います。私が手伝える間は一緒にやりますし、一通りできるようになったら、いつでも譲り渡す気持ちも持っています。そして、私はこれまでできなかった有機野菜づくりなど別のことをやりたいと思ってます。」
養鶏家の1日は卵の回収から
やったことがない人にはなかなか想像がつかない養鶏家の1日。1日の流れを聞いてみました。
「9時頃からエサをえりながら卵を回収します。エサ作りは3〜4日に1回。昼頃、回収した卵を持って自宅へ戻り、昼食をとった後、自宅横の作業場で出荷先に合わせて卵の仕分けや卵詰めを行います。夕方、卵をもう一度回収した後、宅急便に出したり、卵の配達へ行ったりします。」
いまは修一さんと奥様のふたりでこの作業を行っています。
現在は養鶏だけですが、本当は切山集落ブランドとして売り出す菊芋や無農薬野菜を育てたいと思っているそう。
「切山集落は高齢化が進み、田畑が荒れて寂しい状況です。この状況をなんとかしたい。集落で暮らす人を増やすためにも産業をつくっていきたいんです」
修一さんは切山集落の自治会長でもあり、集落全体のことを考え、いろいろな仕掛けをしています。
自分たちの地域を自分たちでなんとかする
次に案内してもらったのは、養鶏場に隣接する愛宕山にある桜公園。小高い山からは四国中央市全体が見渡せます。
「この眺めすごいでしょ。もうちょっと高いところに展望台を作って、もっと人が訪れるような切山の名所にしたいと考えています」
元々、木々に覆われていた桜公園がある場所は、上の世代の人が自分たちで山を切り開いたそう。切山集落には自分たちの地域を自分たちでなんとかする、という気風があるように感じました。
卵に惚れこみ、お店を出店
コーヒーでも飲みながら話しましょう、と連れていってもらったのが、2017年3月にできたばかりのコーヒー豆焙煎所、チョコレート・スイーツ工房「G.B.Cキリヤマベース」。
店主の高橋賢次さん自らコーヒー豆やカカオ豆の産地に足を運び、生産者から直接仕入れているこだわりのお店です。ここができて、切山集落に訪れてくるお客さんが一気に増えました。
このお店が切山にできたのはなんと、参鍋さんの「卵」がきっかけでした。このお店の一番人気商品が参鍋養鶏場の卵を使った「爆ドーナツ」。
「参鍋さんの卵に惚れ込みました。卵自体に力があるから余計なものを使わなくても焼き上がりがふんわりして、爆ドーナツを食べた人が『卵の味がする』と言ってくれるのが嬉しいですね」
と高橋さんは話してくれました。
元々、四国中央市の街中でお店を開いていた高橋さん。参鍋さんの卵が気に入り、定期的に切山集落へ訪れる中で、地域の人との交流が深まり、地域の後押しをうけてキリヤマベースをオープンすることになりました。
なんにもないから自分たちで作り出せる
高橋さんに切山集落の魅力について聞いてみました。
「なにもないところ。必要なものを自分たちで作り出していける。真っ白なキャンバスみたいでものすごく可能性を感じます。地域の方達が切山集落の10年後20年後の存続を懸念されている話を聞くと、元々歴史があるこの地域がなくなるのはもったいない、何かできたらという気持ちになりました。また、集落の人達の協力体制も凄まじいです。ここまで地域の人が後押ししてくれるところはなかなかないと思います。」
どんな人だったら切山集落でやっていけそうですか?
「ものづくりを好きな方だといいですね。自分が生み出したものが世に出ていくことにわくわくする人。大変なところも多いと思いますが、大変なことも楽しみながら進めていけるような気持ちがあるといいでしょうね」
高橋さんは、移住して来た人にとっては良き相談相手であり、一緒に事業を展開していく仲間になってくれる存在だと思います。
切山で何かやりたいという人をみんなで応援します
ちょうどこの土地の持ち主の弟さんの真鍋博さんが通りかかり、キリヤマベースのオープンカフェで、コーヒーと爆ドーナツをいただきながら、集落のこれからについてお話を聞きしました。
「僕は切山生まれ切山育ち、できたらずっと存続してほしい。修一さんが自治会長としてがんばってくれている今、協力してできる限りのことをやっていきたい。」
と真鍋さん。
「移住してくる人にはできたら、祭りや新年会など季節の行事に参加してもらいたいです。山なので閉鎖的だと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。ごはんを食べられるところがあったらいいねという話もあり飲食店したい人や陶芸やアートをする人もいい。切山で何かやりたいという人をみんなで応援します」
と修一さんは話してくれました。切山を離れた人も愛着を持っている人が多く、地域外で応援してくれる人も大勢いるそうです。
今すぐにでも住める空き家があります
移住するとき、気になるが住居ですが、いま切山集落には2軒、今すぐにでも住める空き家があるそうです。住むところの相談にも乗ってくれます。
自然に近い暮らしをしたいと思ってもなかなか自分でイチからはじめるのは大変だと思います。集落の人と力を合わせながら、自分の暮らしをつくるチャレンジをしませんか?
いなかマッチは、まずインターンシップから。参鍋養鶏場で修一さんと一緒に働いてみたい方は、まずは暮らしと仕事を1ヶ月間試せるインターンシッップがあります。気になった人はまずは気軽にお問い合わせください。
いなかマッチは、民間版の「地域おこし協力隊」のようなもの。株式会社いなかパイプに雇用される形で、「いなかビジネス事業者」のところで最長3年間お仕事ができます。
いなかマッチ終了後は、参鍋養鶏場で雇われ、修一さんと一緒に事業展開していく人になるもよし。独立するもよし。いなかパイプの所属のまま、様々な仕事を続けるもよし。という選択肢が3つあります。
いなかパイプは、働く人々が「好きなことをやりながら、イキイキと幸せに生きている」という状態を地域につくることを目指しています。そのために、いなかパイプが受け入れ事業者とのパイプになって話合いの場をつくったり、仕事がうまく進むようにファシリテート&マネジメントしてバックアップしていきます。また、各種研修会やメンタルサポートも行っていきます。