「はたらきかた」のマッチング いなかマッチ
宗田節 生産量日本一!高知・土佐清水のだし文化をつなぐ人
●受入事業者
たけまさ商店・島谷真矢さん、島谷早苗さん
鰹節は日本の代表的な食材のひとつですが、「宗田節(ソウダブシ)」という言葉には馴染みがない方も多いのではないでしょうか?
宗田節とは、宗田鰹(ソウダガツオ)から製造される鰹節の種類のひとつです。
今回は、宗田節の生産量が日本一の高知県土佐清水市で、日本のだし文化を後世につなぐ一翼を担う人を募集します。
夫は海で、妻は節納屋で宗田節の製造を支えてきた中浜集落の人々
土佐清水市は四国の最南端に位置し、東京から最も距離が遠い場所だと言われています。その分、雄大な自然が残っており、黒潮本流が直接ぶつかる日本唯一の場所である「足摺岬」や日本で始めて海中公園として指定された「竜串海域公園」(足摺宇和海国立公園内)など、有名な観光スポットも数多くあります。
黒潮の影響で、多種多様な魚が集まるので、漁業も盛んです。特にゴマサバは「清水サバ」としてブランド化され、サバにしては珍しく刺し身でも食べることができます。
また、ソウダガツオを原料とする宗田節は土佐清水市が日本一の生産量となっており、日本のだし文化を支える重要な役割を担っています。
中でも今回ご紹介するたけまさ商店がある中浜集落は、昔から漁業が盛んな地域で、夫は漁に行き、妻は節納屋(宗田節を製造する納屋)で宗田節を作るのがよくある働き方だったそうです。
日米の架け橋として活躍したジョン万次郎(中浜万次郎)の生誕地でもあり、地元の方の誇りとなっています。
結婚して知った宗田節の魅力
この地で宗田節の製造、販売をしているのがたけまさ商店です。
たけまさ商店は、大正元年に創業。最初は鰹節の製造が主でしたが、この地で鰹節の原料となるカツオがとれなくなり、ソウダガツオを原料とする宗田節の製造に切り替えたそうです。
ソウダガツオは目と口の距離が近いことからメジカ(目近)という相性で親しまれ、旨味の強いだしをとることができる魚です。
現場を取り仕切っている島谷真矢さんと妻の早苗さんにお話を伺いました。
「高校を出てから東京に行って、大阪で夫と出会って結婚して、8年経ってから土佐清水に戻ってきました。3人兄弟の末っ子だったので、元々継ぐつもりはなかったのですが、夫がやりたいと言ってくれて。」
早苗さんは、家業が身近すぎて宗田節の魅力に気づいてなかったそうですが、真矢さんとの関わりの中でその魅力を発見したそうです。
「僕は以前、食品添加物の製造をしていて、“添加物でうまみを上げるのは簡単だけれど、自然食品でこれだけうまみをあげられるのはすごいな”と思ったんです。それに、調べれば調べるほど身体にいいものが数値としてでてきて、製法も昔ながらの職人の勘と技術がつまっていてかっこいいと思いました。」
宗田節はうまみ成分が豊富で、濃厚なだしが出るため、料理の際に醤油や味噌をたくさん使わなくてもしっかりとした味付けになります。またアミノ酸の仲間の成分の「タウリン」は鰹節の3倍、うなぎの40倍。カルシウムや鉄分も豊富に含まれています。
「大阪の家の玄関先で子どもがゲームをしているのを見ていて、”それだったらもっと自然のあるところでのびのびと育ってほしいなあ”と思いました。それに宗田節が好きだったので、“その魅力を1人でも多くの人に発信したい”と思って土佐清水に来ました。」
時間と経験を要する宗田節づくり
真矢さんが絶賛する宗田節はどのように作られているのでしょうか。その工程を見せてもらいました。
煮熟
まずは仕入れてきた魚をカゴに並べ、熱湯に浸け、40分から1時間ゆでます。
このときにゆでる順番も大切。タンクの下の方にある魚は傷みやすいので、先にゆでるなど、鮮度に気を遣いながら作業を行います。
並べるのは従業員、ゆで加減を確認するのは社長(真矢さんのお義父さん)の役割だそうです。
セイロ取り
次に魚が冷めないうちに頭と内臓を取り、片身に割って中骨を外します。
焙乾
次は宗田節づくりの要、焙乾です。魚を燻して水分を減少させるとともに、煙で香りづけをします。
その日の天候や風向きを考慮して、火の強さや煙の量を調節するなど、細心の注意を払っています。これは節納屋の個性が最も強くでる作業。この作業だけで1週間かかります。
天日干し
さらに水分を蒸発させるため、天気のいい日に半日ほど、太陽の日にあてます。これには殺菌効果もあります。
裸節(カビをつけない節)として販売する場合は、この後選別し、出荷しますが、枯節というカビをつけた節を作るためにはもうひと手間を要します。
カビ付け・熟成
裸節をカゴに並べ、高温多湿な室内で、機械を使ってカビ付けします。カビ付け→天日干し→冷暗所の保管という工程を数回繰り返すので、出荷までに半年以上かかります。
枯節でだしをとると澄んだ味付けになるそうで、高級品として扱われています。だしをとる際に、関東では枯節、関西では裸節を使う傾向があります。
こうして節づくりが終わったら、次は荷造りをします。節の状態で料理屋さんなどの業者にだすものもあれば、削ってふりかけなどにして、一般消費者に販売するものもあります。
お店と併設された削り節をつくる加工場
一般消費者向けの商品
自分のしたこと全てが宗田節に現れる
「この仕事をやってみて、全てにやりがいを感じています。自分がしたことが全て結果としてお節(削る前の状態の宗田節)に現れるので。」
「土佐清水には宗田節を作っている会社が13社あるのですが、みんなそれぞれ味が違います。地下水を使っているところもあれば、山水も使っているところもあるし、使う薪の種類とか炊く時間、燻す時間とかでも変わってきます。人それぞれの家の匂いが違うように焙乾する場所の香りも若干違うみたいです。」
車に他の会社の宗田節を載せて販売しに行くこともあるそうで、そうすると、その会社によって車の中の匂いも変わることがあるほどだそうです。
「宗田節を知らなかった方に説明して知ってもらって、売上につながるのは嬉しいですし、仕入れに関しては、入札に行って、50銭差で変えなかったこともあるくらい駆け引きが難しいです。」
市場では、1円よりも低い単位でセリをすることがあるそうで、よい魚を見分け、それを手に入れるのには技術がいるそうです。
古くからの技術を残しながら、新たな挑戦に挑む
「宗田節の製造技術も歴史が古くて、室町時代から続いています。最初は魚をゆでて天日で干していただけみたいなのですが、江戸時代になってから燻して、カビ付けしてという技術が確立して、それが土佐清水に広まって、今も続いているので、この技術はこの先も残していきたいと思っています。」
「ただ、ソウダガツオの漁獲量はすごい減っているし、天候にも左右されるので、他の魚のハネ品とかを使って、うちの焙乾技術で何か商品を作れないかと考えているところです。」
たけまさ商店では、古くからの伝統を守りつつ、新しい挑戦にも積極的です。
2021年3月には、「だしの郷」という店舗をオープンし、宗田節のお土産を販売するほか、宗田節を使った新メニュー開発も行い、土日限定で軽食や定食も提供しています。
「足摺岬に向かうバイパスができたときに、その道路沿いに店舗があれば、立ち寄ってもらえると思いました。そこに自社の商品だけではなく、他の会社の宗田節の商品も置いて、節屋(宗田節を作っているお店)である我々が直接宗田節を作る行程とか魅力とかを伝えたいと思って。」
たけまさ商店では、節納屋の見学やオリジナルのうま味醤油(宗田節を入れて作るだし醤油)づくり体験などにも取り組み、宗田節の伝統や魅力を人々に伝えて続けています。
宗田節づくりの一連の流れに関わっているからこそ、伝えられること
続いて、いなかパイプから派遣されて、現在たけまさ商店で働いている小宅(おやけ)さんにお話を伺いました。
「1日の流れはその日によって違うのですが、午前中、釜に魚を並べる作業(ゆでる前まで)をして、その後、干したり選別したりとか。あとは『うま味醤油』を作るための節を削る作業をすることもあります。その後、セイロ取りをずっとするという感じです。日によっては節をずっと削っているときもあります。あとは、宗田節を使って作った“だしバーガー”を屋台で販売しています。」
小宅さんは今まであった仕事のほかにも、宗田節を使った新メニュー”だしバーガー”を考案したり、Instagramを立ち上げたりと新しいことにも積極的に取り組んでいます。
「私は今までアイデアをだすのが苦手だと思っていたのですが、ここで働いてみて自信がつきましたし、お客さんに喜んでもらえると嬉しいです。宗田節の認知を広めている実感もあります。」
そんな小宅さんにたけまさ商店とはどんな会社なのかを聞いてみました。
「伝統を守ることと新たなチャレンジが共存している会社だと思います。伝統ある産業なので、今でもずっとそれを大切にしてらっしゃる一方で、新商品の開発とかもしていて、自分もその中にいることができて楽しいです。」
「逆に大変なのは、タンクに入っている魚をかごに入れて、それを持ち上げる作業です。でもそれを6,70代のおばちゃんたちが普通にやっていて、”若い者には負けられへんから”って言うんです。それを見て“すごいなあ“と思いますし、力仕事もそれはそれで楽しいです。運動にもなりますし。」
「一緒に働いている人たちはおばあちゃんくらいの年齢の人が多くて、みんな優しく受け入れてくれます。そうするとまた頑張ろうと思えるんです。」
土佐清水ならではの休日
「近所の方も優しくて、ごはんに連れて行ってくれたり、おかずをくれたりします。」
「休みの日は土佐清水の他の会社で働いているいなかパイプのスタッフと遊びに行くこともあります。大岐の浜に行って海を見たり、夜の足摺岬で星を見たり、楽しいことがたくさんありますね。」
いきいきと話す小宅さんからは、日々のひとつひとつの仕事に一生懸命取り組んでいるのが伝わってきました。
みんなと協力できて、仕事を楽しめる人は大歓迎
最後に早苗さんと真矢さんに今後どんな人に来てほしいかを聞いてみました。
「みんなと協力して働いてくれる人に来てもらいたいです。」と早苗さん。
「重い物を持つなどきつい仕事もありますが、そういう仕事を楽しんでもらえる人に来てほしいと思っています。あとは日本の食文化を支えているという使命感をもっていただけたらと思います。」と真矢さんはおっしゃっていました。
古くから続く伝統を守りながらも、新しい挑戦をし続けるたけまさ商店の今後が楽しみです。そんな未来を一緒に作りたい方はぜひご連絡ください。
たけまさ商店から車で8分ほどのところにいなかパイプの宿舎をご 用意しておりますので、住む場所の心配はいりません。たけまさ商店で働いてみたい方は、まずは29泊30日間のいなかインターンシップにご参加ください。