いなかインターンシップ体験記〜佐々木さんの場合〜
2024/07/25
2024年6月に開催されたいなかインターンシップに参加していた佐々木さん。
インターンシップを終えて1週間ほどしてから、この1か月間をふり返り、その感想をとても正直に綴ってくれました。
インターンシップが気になっている方、参加を迷っている方、ぜひ読んでいただけたらと思います。
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いなかインターンシップへの参加を終えて
本来であれば話には「オチ」をつけたいのですが、帰ってきてから一週間が過ぎた今になっても推進する力が何も湧かず、体験記の提出期限もあるようなので、いなかパイプのインターンシップに参加して感じた、素直な思いを書きます。
参加前に私がひっそりと期待していたことは
「自分がこの先進む方向を見つけたい」
ということでした。
結論的にこの迷いは変わらず色濃く残っていて、ひと月を終えて間違いなく分かったことは、
「答えは簡単には見つからない」
ということでした。
「行動すれば答えが見つかる」と安易に考えていた私にとってこれは大きな気づきで、今では、一生かけても見つからないのかもしれない、とすら思うようになりました。大きな絶望でしたが、気づけたことは幸運だと思っています。
とても長く感じる一か月でした。子供の頃に感じた時間の感覚に似ていると思います。
慣れた生活から離れることへの不安や、一人旅の経験がないこと、なにより自分のテリトリーへの執着が強く、参加するまでには数年を要しました。もちろん参加しない選択肢もありましたが、これまでの流れを変えたい一心で参加を決めました。
一大決心をしたので、向かう道のりは鼻歌まじりになるほど高揚していました。
「いなかドア」や「つなぎたいプロジェクト」中は、これまでに見たことがない、体験したことがない“はじめて”の大洪水で、毎日毎秒感動し、肺活量が増したような、全身脱皮したような、すがすがしい気持ちで一日を終えていました。
一方ドミトリー546での時間は、ずっと忘れていた潔癖症を思い出し、非日常すぎる環境に適応するため、必死にやめた寝酒と煙草を復活させて紛らわせなければなりませんでした。常にざらざらとした紙で皮膚を撫でられているような、足元が浮いているような、完全には休まることのできない緊張感に浸されていました。
私は早起きが大変苦手なのですが、四万十の朝はいつも同じ、低い山々に霞がかかり、空気はひんやりと澄んでいて、清々しくとても気持ちがいいので早く起きて行動することはほとんど苦になりませんでした。
すぐに焼けるような太陽が出てきてうだるような暑さになるのですが、エアコンや電車で冷やされ続ける一日とくらべると、全身汗だくになりながら働いた疲れと、ぱんぱんに膨らんだ充足感で、一日の終わりはとても満足していました。
四万十で感じた充足感のほとんどは、地域の人たちとのふれあいからもらったものです。あのような手厚い繋がりは、経験したことがありませんでした。
私は都内で生まれ育ち、横浜と埼玉で暮らしましたが、そんな私にとって四万十での生活は、人のおおらかさと逞しさ、自然の巨大さ、食べ物のおいしさ、信号がないこと、交通や買い物の不便さなど、すべてが小説の中のできごとのように、驚きと新鮮さで満ちていました。自分の知っているどの社会とも違う、異世界でした。
この年齢になっても、いくらでも「未経験」を経験できることに驚き、この年齢になっても、思い切って挑戦することで自分自身の伸びしろや可能性を発見できることに驚きました。
たしかに答えは見つけられなかったのですが、これまでの生活を続けていたら決して経験できなかった尊いものや、気づけなかった可能性がたくさんありました。
長い一生の中で、このたったひと月でとてつもない収穫を得ることができました。
腹を決めて挑戦することの偉大さを知ることができました。
この滞在で一番お世話になった吉尾さん、本当にありがとうございました。
滞在二日目で
「生理的に難しいです、帰ります」
ときっぱり言い放った私を留めることができたのは、吉尾さんしかいなかったと思っています。
優しく大きく受け入れてくださった「おかみさん市」のおかみさんたち、こうして思い出すと涙が出てきてしまうのですが、今まで感じたことのない、満ち足りた時間をありがとうございました。
願わくはこれからも「おかみさん市」が存在し続けて、美味しさと栄養と幸せを提供し続けてほしいです。そしておかみさんたちのためにも、並ぶお弁当のためにも、店内とキッチンが今より涼しい環境に保たれますように。
夢のような一か月をありがとうございました。
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