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「はたらきかた」のマッチング いなかマッチ

高知が誇る名門酒蔵ではたらく蔵人さん

司牡丹酒造株式会社 杜氏 浅野徹さん

●受入事業者
司牡丹酒造株式会社 杜氏 浅野徹さん

 

 JR高知駅から西へ、特急で約30分。かつて城下町として栄えた佐川町には、幕藩時代の面影を感じさせる建物がそこかしこに残っています。その中でも、古くは江戸時代に建てられた酒蔵が並ぶのが上町(うえまち)エリア。ここに、司牡丹酒蔵株式会社があります。

 司牡丹の歴史の始まりは、400年ほど前、関ヶ原の合戦の頃(!)まで遡ります。関ヶ原の功績から、徳川家康より土佐二十四万国を賜ったのが山内一豊。その山内氏とともに入国した、山内家の主席家老・深尾和泉守重良が預かったのが、佐川(現在の佐川町)一万石でした。深尾氏はその際、酒造りをする”御酒屋”を伴って入国。

 以来、佐川町には伝統的な酒造りの手法が根付き、日本一の水質と名高い「仁淀川」水系の水や気候も相まって、酒造が盛んに。そして時は流れて大正7年。佐川地域の酒造家が集まり、興したのが現在の司牡丹なのです。全国には1,500を越す酒造メーカーがありますが、司牡丹は13番目に古いのだとか!

 現在は、その歴史に加え、品質の高さで全国的に知られる司牡丹。全国新酒鑑評会の最高位・金賞受賞回数が通算25回という日本トップクラスの成績を誇っています。さらに2015・2016年度は、受賞が難しいとされる純米酒において、2年連続の金賞受賞を果たしているのです。

 このような輝かしい受賞歴は、杜氏(とうじ/酒蔵の最高責任者)および蔵人(くらびと/酒蔵の醸造職人)の酒造りへの思いと細やかな品質管理体制に支えられています。今回は、司牡丹で2004年より杜氏を務める浅野さんより、司牡丹について、そして蔵人の求人についてお話を伺いました。

司牡丹酒造株式会社

酒は寒造り。10月~翌年3月まで、半年間のお仕事です

 「お酒を作る時期は、冬がいちばんいいんです。そのため、蔵人の就業期間は10月から3月まで。仕事の流れとしては、10月から機械や道具の準備を始めて、そこから順次、仕込みに入ります。絞りの工程が始まるのがだいたい11月くらい。そこからフル稼働となる感じですね。3月には仕込みは終わって、絞りは続いている状態。絞りながら、片付けをしていって、終了となります。

 冬に作るのを”寒造り”っていうんですけど、ずーっとそれにこだわってやってます。本来の日本酒づくりの姿に僕はしたいと思っていて。冬は、お酒づくりの条件がすべて揃ってるんですね。

 まず、お米。その年の新米を使ってお酒を作るのがもともとの形。お米がとれてからの時間が長くなると、どんどん古米になっていき、状態が変わってしまうんです。
 
 また、寒いと空中にいる微生物も少ないし、繁殖もしにくいですよね。日本酒っていうのは、味噌とかお醤油と同じで、”開放発酵”という形で作ります。今の食品工場はどんどん無菌状態にしようとしてますよね。あれは、無菌じゃないと、いろいろな微生物に汚染されやすいからです。

 対して、伝統的な開放発酵は、あらゆる菌がいる環境のなかで、自分たちが必要としている菌を有効に育てて、食品やお酒にしていこう、という考え方です。テレビとかでたまに伝統のあるお醤油屋さんとかが出てくると、微生物が蔵に住んでるから、あの、汚いって言ったら悪いですけど(笑)、真っ黒になったりカビが生えたような木の道具を大事に使っていたりするじゃないですか。それが開放発酵です。そのなかでも、清酒は割とキレイな方ですけどね」

司牡丹

  この半年間で、9000リットル入りのタンクに110本ほどの酒を仕込むというから驚きです!

〈麹(こうじ)作り〉や〈絞り〉をはじめ酒造りに携わる蔵人を募集します

 続いて、日本酒の製造工程を教えていただきました。

■米の洗い
 ↓
■浸水
 ↓
■蒸し
 ↓
■麹(こうじ)作り
 ↓
■酒母作り
 ↓
■醪(もろみ)作り
 ↓
■絞り
 ↓
■火入れ
 ↓
■貯蔵
 ↓
■瓶詰め

 

〈麹作り〉
 この工程では、蒸したお米を広げ、麹菌の種付けをして発酵を促します。重いお米を運ぶ際は、エアシューターを使うそうで、手で運ぶことは稀なのだとか。このシューターの操作や、発酵のための適切な温度管理をするのが主たる業務となります。温度管理は、トランシーバーを使って上下の階で連絡を取り合いながら行うそうですよ。麹菌が増えやすい温度を保つので、作業中の室内はなかなかの暑さになるのだそう。着替えは必須ですね!

会社内

〈絞り〉
 発酵が進み、いよいよ清酒ができたら、最後に酒と酒粕に分ける絞りの工程が行われます。以前は醪を酒袋に入れて手作業で行っていましたが、司牡丹では現在、大きな圧搾機が使われています。圧搾機には布で覆われたたくさんの板が入っており、ぎゅうっと圧力をかけると、醪がろ過され、布に酒粕が残ります。機械を操作して、酒粕を剥がしたり、とこの工程を請け負うのが絞りの担当者です。

 部署に関わらず、仕事は朝6:30スタート。7:15まで仕込みをしてから朝食をとり、8:00から仕事再開。お昼休憩をはさんで16:40には仕事が終わります。時間外勤務はほとんどないそうです。

 また半年間で酒の仕込みを順に行っていくので、時期によって忙しい他部署を手伝うこともあります。また、すべての部署にも共通するのが、徹底した掃除・洗浄です。

 

必要な資質は「清潔第一」と「蔵内親和」そして「酒愛」

 酒は発酵食品のひとつ。菌をコントロールすることが味の決め手になります。酒蔵というと、大きな木の樽が並び、その中の酒を木の板でかき混ぜる光景が浮かんできますが、現在の司牡丹ではほとんどの工程が機械化されていました。

 「作業はなるべく機械化しているけれど、作りは手づくりです。開放発酵という環境は、不要な菌が入る可能性も高い訳ですが、いちばん汚いのって…人間なんです(笑)。人間の手がたくさん触れるほど、雑菌が入る危険性が高くなる。だから蔵人には必ず作業前に手を洗ったり、作業着等に着替えたりしてもらいます。

 どうしても必要なところ以外では、なるべく人が触れないために、機械化を進めています。そうすることによって、今のお酒ってものすごくキレイになってるんです。もし雑菌が入って、”オフフレーバー”というお酒本来のもの以外の匂いが付くと、それだけですぐ分かるくらい。専門家がお酒をきくと、すぐに、そういう香りがするね、どこかが汚染されてるね、と分かってしまいます。ワインにも、ブショネというコルクに生えてしまうカビの匂いがありますが、日本酒でも麹カビ以外のカビの匂いは”オフフレーバー”となる。それはNGなんです。

 機械化が進んだことで、日本酒は昔と較べて品質がものすごく上がっています。オフフレーバーをなるべく付けないで、お酒が本来持っている、いい香りや味をそのまま残していくっていうことが重視されるようになってきているんです。

 それをするには、できるだけ清潔に、きれいな環境で作らないといけない。かといって無菌室で作ると、それはもうお酒じゃないんで。そこまでやっちゃうと逆に、今度はおもしろくないんですよ。ある程度は外の微生物が入ったりとか、目には見えない菌の”蔵グセ”っていうものがあるので。そこは活かしながらも、人間が持ち込む雑菌はナシにしたいねってことなんです」

 また、蔵には「蔵内親和」という言葉が掲げられていました。

酒造心得

 「”和醸良酒”とも言いますが、酒造りには”和”が大事ということです。杜氏と、あるいは蔵人同士で、コミュニケーションが取れること、チームワークが大切ですね」

 「あとはお酒に愛がある人、大歓迎です。これは手前味噌ですけど、日本酒の評価の基準である全国新酒鑑評会への入賞が、最近では常連になってきています。鑑評会には二種類のお酒を出していて、去年・今年と続けて二種類とも金賞を受賞しました。

 実はお酒って、アルコールを添加して作るものがほとんど。お米だけで作る純米酒で鑑評会に出してもなかなか通らないんです。鑑評会で金賞になるのは、ほとんどがアルコールを加えて軽くしたお酒。うちも出品した二種のうち、一方はアルコール酒で、もう一方が純米酒。

 今年の出品数は854点で、金賞を受賞したのは227点。そのなかでも、純米酒は全国で16社しか金賞をもらってないんです。さらに、2年連続純米酒で金賞を取っているところは司牡丹を含めて5社ほど。そうした評価から見て、司牡丹は客観的にも全国屈指の優良醸造家といえると思います(笑)。そういうお酒を作ってるんだ、って誇りを持ってやってもらえたらいいな、と思います。

 働いている蔵人たちのやりがいも、やはりそうした評価をいただけること、そして何より自分たちが飲んだときに美味しい、と感じること。そのあたりが励みになっていますね。やっぱりみんな、とにかくいい酒を作ろうって考えていますから」

司牡丹

 大学の醸造課を卒業以来、一貫して酒造に携わってきた浅野さん自身ももちろん、お酒愛に溢れる人。そんな浅野さんは、今後の司牡丹についてどんなヴィジョンを描いているのでしょうか?

 「理想的な酒。それを目指したい。高い評価をいただいてはいますが、自分ではまだまだだと思っています。理想的な酒というのは、漠然としていますが、美しい酒ということ。きれいな酒じゃなくて、美しい、ビューティフルな酒。例えがちょっと分かりにくいかもしれないですけど…富士山みたいな酒(笑)。

 富士山って、きれいというより、美しい。それはどこから来るかというと、僕は裾野だろうと思うんですね。きれいな裾野があること。お酒にもそういう風な、膨らみであるとか、余韻であるとか、それにもってきてビシっ! と決まる良さがある。漠然としていますが(笑)。

 それで、”美しい”の手前には”きれい”という段階がある。まずきれいな酒を作らないといけない。きれいというのは、オフフレーバーを付けないとか、そういう基本的なこと。イレギュラーなものが入ってると、絶対に美しい酒にはならない。きれいな酒ができて初めて、そのうえに美しい酒が来るんだろうと思っています。

 理想の酒を作るための挑戦は、ちょっとしたことなんです。麹をどう作るか、とか。毎年、麹にするお米も硬さや溶けやすさなど、ちょっとずつ変わります。その年のお米を最大限に活かすにはどうしたらいいかをまず考えます。違いが出るのは本当にね、ちょっとしたことなんです」

 「あのね、いい酒ができるんです、本当に(笑)。いい酒ができるので、やっぱりいい酒を作りたい。それがいちばんですね。佐川は環境がいいんですよね。西日本、特に高知は暖かいけれど、この辺りは結構寒い。そうした気候が合っているのと、仁淀川水系の水がやっぱり素晴らしい。とにかくいい酒を皆さんに飲んでもらうのが我々の仕事です。酒愛のある人は、ぜひ一緒にやりましょう」

司牡丹酒造株式会社 杜氏-浅野徹さん

住込み可。その場合、家賃・光熱費・食費はかかりません!

 司牡丹は寮完備のため、住込みでの勤務が可能です。この寮はありがたいことに食事付き。朝ごはんを作るのは当番制だそうです。そして、寮生活では家賃のほか、食費・光熱費までも会社が負担してくれるという太っ腹ぶり。さらに、さすが酒蔵、晩酌用のお酒も込みという神待遇です(量はほどほどで)!

寮

歴史もアウトドアもどんと来い、佐川町の過ごし方

 司牡丹の近くにはサンプラザという大型スーパーがあり、日常の買い物には不自由しません(なかには本屋さんも入っていますよ)。また冒頭に記したように城下町の面影を残す佐川町では、旧商家や寺院、資料館、坂本龍馬脱藩の道など幕末の歴史に触れられるスポットがたくさん。歴史好きの人には堪えられないことでしょう。アウトドア好きの人は、虚空蔵山や白水の滝、長谷渓谷、不動ガ岩屋洞窟遺跡などへどうぞ。

 食に関しては、うなぎの老舗「大正軒」や、古民家で絶品の手打ちうどんを味わえる「とがの藤家」、そして地元の牛乳・「地乳」が佐川町のイチオシ。休日は、高知市内までJRで約1時間10分、特急なら約30分。車でも1時間ほどなので、気軽に遊びに行けますよ。

 

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