「はたらきかた」のマッチング いなかマッチ
「ない人」コースで働く いなかマッチさん
株式会社いなかパイプ
佐々倉玲於
都会での暮らしに違和感があるけど、特別なスキルもないし、「いなか」に仕事あるかな… と思っている方は多いかもしれません。
自信ない、やりたいことがない、仕事ない、自分ない、スキルない、強くない… いなかパイプではそんな「ない人」、募集中です。
私も20代の頃はずっと「やりたいことがない」ことが悩みでした。いろんなことをやっているキラキラしている人を見ると嫉妬していました。やりたいことを見つけたくて、東京で働いたり徳島の山奥で働いたりと仕事と住むところを転々として、今は「ないものはしょうがない」というところで開き直っています。
あってもいいし、なくてもいい。都会でもいいし、いなかでもいい。ただ出来るなら、自分がのびのびと楽しく暮らせたらいい。いまモヤモヤと悩んでいる人の何かのきっかけになれば、選択肢のひとつとして、いなかパイプというところもあるよ、という紹介です。
「ない人」募集ってなんですか?
いなかパイプがはじめた「ない人」募集。そもそも「どうしてない人募集なの?」という素朴な疑問。代表のレオさんに「ない人」募集ってなんですか?と聞いてみました。
そこには「いなか」側の事情と、「とかい」でモヤモヤしている人との双方から見えてきたものから生まれました。
「いなか」には豊かな自然環境があり、生産物があり、1次産業から3次産業まで様々な仕事があります。でも・・・人がいない。
「とかい」では、このままの暮らし方や働き方でいいのだろうかと悩みながら、でもやりたいことやスキルがないから・・・とモヤモヤしている人がいます。
世の中の求人を見渡してみると、「こんなスキルがある人」「こんな経験がある人」というように「ある人」を求めているように思います。「あなたは何ができますか?」「これまで何をやってきましたか?」「この会社に入って何がやりたいですか?」と問われ、それに答えられないと雇ってもらえないことも。
四万十川のほとりに事務所を置き、いなか社会で暮らしているいなかパイプ。いなかの事業者は小規模ゆえに、相談すれば融通をきかせてくれたり、人に合わせた仕事をつくれたりする、ということが見えてきました。
田舎で働くということは田舎に住む、ということ。地域の人は「いれくれるだけでいい」「お祭りのみこしを担いでくれるだけで存在価値がある」と言ってくれます。
そこで、今の社会が「ある人」を求める社会ならば、いなかパイプはその真逆をいって、「ない人」を求める会社になればいいのではないかと思ったのでした。そして田舎社会も、「ある人」でなければ生きられない社会ではなく、「ない人」が活躍できる社会をつくっていきたい、という思いから「ない人募集」がはじまりました。
実際の働き方は?
いなかパイプでは「いなか版・働き方開発」を提案しています。「働き方改革」ではなく、その人その人に合った多様な「働き方」を開発しようという試みです。そこで、労働者派遣事業の許可をとってその仕組みを使っています。
そうすると、いなかパイプの社員のまま、
たとえば、春はお茶摘み、夏はカヌーガイド、秋は道の駅でレジ、冬は事務仕事、
たとえば、春・夏はいなかパイプコーディネーター(時々カヌーガイド)、秋冬は酒蔵で働く
という働き方ができるようになります。実際そうやって1年間、働いたスタッフもいます。(経験者の記事はこちら)
いなかパイプは高知県内だけではなく、日本各地のいなかともつながりがあります。いま試みようとしているのは、暮らす地域も選べるというもの。
たとえば、春は四万十、夏は沖縄、秋は別府、冬は三重。という風に。
そうして、いなかパイプ社員として1年間働き、気に入った場所や職場があればそこに就職したり、はたまたフリーランスとして独立や起業したり、もちろん、いなかパイプ社員として継続して働くこともできます。
働き先は現在も開拓中で、日本だけでなくゆくゆくは世界の田舎でも働けたら面白いなと思っています。
どうして働き方開発しようと思ったの?
こんなちょっと変わった「働き方開発」がどうやって生まれたのか、レオさんに聞いてみました。
「働く人のニーズが変わってきている。いろんなことやってみたいという声を聞くようになった。たとえば、レジ打ち募集の求人を出してもなかなか人は集まらない。でも、やりとりした上で週2日はレジ打ち、週2日は農業、週1日は事務、という働き方ならやってもいいよ、という人が3人いればレジ打ちの仕事はまわっていく。事業者側も嬉しいし、働く側も嬉しい。事業者さんには『求人出しても来ないー』と困っているなら、働き方や仕事の出し方を変えていきませんか?という提案をしています」
いきなり移住はちょっと・・・
いきなりの移住や転職は不安だし、ハードルが高いと思います。いなかパイプでは移り住む人にとっても受け入れる地域の人の双方にとって良い関係性になるようにサポートしていて、3つのステップがあります。
①3泊4日のおためし いなかドア
旅と暮らしのあいだ、のような4日間。あらかじめ決まったプランはなく、参加者といなかパイプスタッフで話し、聞きあって過ごし方をつくります。土地や人に出会い、暮らしを体感できます。
②29泊30日 いなかインターンシップ
お試しで宿舎に住みながら、地域事業者のもとで仕事をお手伝いします。様々な事業者の中から希望を聞いて、相談しながら1ヶ月の過ごし方を決めていきます。自分の生き方・働き方を確かめるとともに、地域に暮らす人々の出会いを通じて「つながり」「人間関係」をリアルに感じられます。
③いなかマッチ
いなかパイプスタッフとなって、やってみたいこと、好きなことを相談しながら自分にぴったりな働き方をつくっていきます。地域のあるいろんな仕事をチームでやります。
よく「なんでインターンシップは無給(むしろ参加費が必要)なの?」と聞かれます。いくつか理由があります。
インターンシップは参加者自身が生き方、働き方を確かめる期間でもあり、働く以外の時間(地域行事や行きたい場所へ行ってみる)もちゃんと確保してほしいから。そういったやりとりを受け入れ側と対等に健全に行いたいので、給料などは発生しないようにしています。
また、この仕組み自体が完全に民間運営のため、コーディネート費用をいただく形でいなかパイプがしっかり続いていくような仕組みにしています。
いなかパイプの野望
最後にレオさんのメールマガジンの文章を紹介します。
「新しい時代は、人間一人ひとりがもっともっと自らの幸せを求めて、大富豪だけでなく誰もが自分にあった生き方や働き方を求め、自由に移動し、好きな仕事をしていけるようになると思うのです。」
「どんな人でも日本の『いなか』で働ける、世界の『いなか』でも働ける、そして土地につながりを持っている人々が大事に思う『いなか』を受け継いでいるという社会を実現したいと企んでいます。」
こんな企みを持っているいなかパイプに興味を持っていただいた方、ぜひ気軽にお問い合わせください!